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スフィンクスとアラステア


装丁の素晴らしい作品に、オスカー・ワイルドの『スフィンクス』がある。

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これは、オスカー・ワイルドの詩のスフィンクスの豪華本で、翻訳は日夏耿之介が担当している。
日夏耿之介といえば、『サロメ』だと思うが、彼の本の幾つかも、それはそれは豪華な装丁のものが多くて、手にしたい物が多い。

その中でも特に美しいのが、アラステア装画の『スフィンクス』である。
このアラステアという画家は、ネットでググればその異常な生涯を識ることが出来るが、まるで貴公子めいた風貌で、謎に包まれたことが多い画家である。
私はアラステアの画集を買って(通常版と豪華版がある。豪華版はとても高価だ)、そこに掲載されている老年の彼の姿を見て驚いた。若い頃は妖しげな奇術師のようだが、老年はそれに拍車がかかり、吸血鬼めいている。
谷崎潤一郎は自身の生活を芸術化することによって、文学においても芸術を産み出そうとしたが、アラステアもその眷属のようだ。
アラステアのパトロンを買って出た夫妻のエピソードが面白くて、彼らは汎ゆる性の放蕩に耽り、飼い犬の名前はクリトリスだったという。

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日夏耿之介は『サロメ』を延々と訳し続けていて、何度も何度も朱を入れていたことを、弟子の井村君江が著作『日夏耿之介の世界』で記していた。そうして、有名所のビアズレーではなく、『サロメ』に真に相応しいアラステアの絵を見つけたことを喜んでいたというエピソードもあった。

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『スフィンクス』はクリーム色の表紙で、一枚一枚、絵は緻密に印刷されていて、彼の絵、そして日夏の訳したオスカー・ワイルドの呪文も楽しめる。

アラステアの画集や『スフィンクス』はサバト館から刊行されている。
サバトは悪魔の儀式、魔女の集会のことである。

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