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マンガと、貧乏と、映画と、蒸発。

つげ義春の『マンガと貧乏』を読了。

充実のインタビュー集。まぁ、これまでのインタビューを、まとめている本だが、価格帯の割にはお得感がある。と、いうか、つげ義春の本は、基本的にお得感がある。なぜかわからないが……。

その中で、『貧困旅行記』、あれは5万部売れている、という文章があって、え!と驚く。5万部。50000部、である。50000人が購入している(まぁ、刷数だが)わけで、これは自著の中でもかなり売れていて、なんでだろう〜♪なんでだろう〜♪、と言っていた(こんなテンションではないが)。


50000部、と、いえば、1冊600円、印税を仮に10%と単純に計算すると、60円✕50000部、で、あるから、300万円である!300万円!(まぁ実際には737円なので違うが)。
300万円、と、いうと、先日映画館で鑑賞した『本心』で、母親のバーチャルフィギュア、VFを作成するのにかかったのが300万円である。
そして、幕之内一歩がフィリピン王者のマルコムゲドーと闘った際、これも勝ったほうがファイトマネー総取りの300万円だった。

私には、300万円、という金額はあまりにも眩い。然し、けれども、『貧困旅行記』のような素晴らしい本を書いても300万円、とは哀しいことである。而も、それで自著の中では売れている方だというのだ。よく、小説家を夢見る人は、いきなり売れて100万部突破!そして、印税で豪邸に住む、の、ような夢、を見るわけであるが、チャンチャラ可笑しく、そのような奇蹟は、まぁ、宝くじの一等に当たるがごとくであり、300万円でも、素晴らしいほどに素晴らしい、大金である。

で、やはり、つげ義春、色々、考えながら、描いている、然し、やはり、一番いいのは蒸発にまつわる話、蒸発、というのは、まぁ、人間が行方をくらますことだが、この蒸発体験の強烈な精神的プレッシャー、というのは、実際に体験しないとわからないものかもしれない。

蒸発は、凄まじい葛藤と苦しみを伴うのだと、つげ義春は語っている。確かに、今まで生きてきた人生を捨てる、関係性を築いてきた人々に何も言わずに姿を消す、そしてもう、一生会わない、と、いうのは、考えるだけでも相当にタフでなければ不可能であろう。

それから、やはり、水木しげるの話、水木先生の女の子はつげ義春が結構描いているとか、『ねじ式』の成立過程、『紅い花』の話、など、以前読んだような気もするが、改めて、文学的であることに感動する。

『紅い花』は、作者の言うように、生理の話だし、生理の話を、そうは一言も書かずに、危うい、儚い物語として描く、美しい掌編として描くのは、誠に見事だし、生理、というか、女性に成る話のその叙情性、というのならば、樋口一葉の『たけくらべ』の、あの、消えゆくような少年少女の美しさなどは、日本文学の最高傑作、五指に入るのではないか。

と、なぜか一葉様の話になったが、まぁ、とにかく、『紅い花』は素晴らしい。『紅い花』、と書くと、ちあきなおみの、『紅い花』。いつもその曲が脳裏を流れて、『GONIN』での死にゆく根津甚八の顔が浮かぶのよ。

根津甚八……。五社英雄映画、『GONIN』、『天使のたまご』……。
そんな、映画のことを想起していると、映画、と、いえば、もうすぐ、つげ映画、『雨の中の欲情』が公開される。


これはもう、観なければならない、わけであるが、然し、こんな映画が、結構な数のスクリーンでかかる、これは嬉しいが、最近、私が邦画を観にくと、毎回5人〜10人くらいであり、今作もそんな感じの匂いがする、匂いがするが成田凌も森田剛も出ているし、多分、宇多丸氏や町山氏も取り上げるだろう、と思うし、まぁ、然し、映画評論家、の評論などを読んでいるのは、実はマイノリティなので、自分が、よく読んだり聴いていると、それがマジョリティのものだと錯覚してしまうが、実際には、周囲に、そんなに同士などはいないもので、やはり、残念ながら、恐らくは、この映画も、映画館では5人くらいで観ることになりそうだ、なりそうだが、然し、そうは言いつつも、人の少ない映画館が好きな私、興行側や制作側には申し訳ないのだけれども、なるべくならば、映画館貸し切り状態が嬉しいの。

今年は、結構、観たい映画がある。まずは、『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』で、私は、『グラディエーター』、つーか、リドリー・スコットが大好きなので、これはもう、観る、以外の選択肢はないが、人が多いだろう、CMも多い。


それから、他に気になるのは、やはり、『ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い』。

私、こう見えて、『ロード・オブ・ザ・リング』がめちゃくちゃに好きなので、これはもう、画風が、ん?という感じではあるのだが、然し、観ざるを得ない。とはいえ、実は、アマプラの『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』はシーズンⅠの途中で辞めているので、どの口がほざいてるんじゃい!って感じではあるのだけれども、まぁ、年末年始、あの師走の空気、その中で観るには、いい感じの映画、のような気がするの。

で、その師走、同日に、文豪映画、が公開するのね。

でもね、監督は堤幸彦。私、苦手なのね。でもね、山の上ホテル、しかも、のん、ということで、これはもう観るしかないって感じだが、原作は柚木麻子さん。私はこの人の『BUTTER』が全然肌に合わなくて、つまりは、合わない人の原作を合わない映画監督が映画化するっていうこの奇蹟的なコラボは、コペルニクス的転回を見せるのではないか、と、そんなことを思ったりするが、まぁ、普通にそんなことはないわな。

で、一番観たいのは『狂熱のふたり〜豪華本「マルメロ草紙」はこうして生まれた〜』。


橋本治の『マルメロ草紙』の豪華本の制作過程を追ったドキュメンタリー映画で、うーん、本好き、特装本、豪華本などに眼がない私としては、これはもう、何が何でも観たい!のだが、まぁ、全国順次公開、なので、京都に来るのは春かね。東京はね、やっぱり恵まれてるよ。許せないよ、東京は。
東京はね、1000万人を超える人が住んでいる、美しき都ではあるけれどもね、文化の発信地ではあるけれどもね、でもね、恵まれ過ぎだよ。本当に。

私がこの映画を識ったのは、noteで橋本治さんの話をずっとしている方の記事を読んだからなのだが、私はこの方はすごいなぁ、と思っていて、noteの中でもトクベツに意識している人の一人で、何か一つに捧げる人は文章が美しいね。

勝手に記事を引用させていただくが、お許しください。






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