異世界転生は17歳までの特権
元々、ゲームのRPG、即ちロールプレイングゲームというのは、役割を演じる遊戯、というわけで、フォーマットそのものが、異世界転生ものなわけである。
そこには、主人公としての人格があるもの/ないもの/または、オンラインであれば、自身がその世界の一員になって、冒険をするわけだから、よりその異世界を堪能できるだろう。
昔から、誰しもが異世界に憧れてきたのである。それは、物語が語り継がれることからも明らかである。
死なずして、転生をすることなく、スイッチひとつでその世界に入り込めるわけだが、『ファイナルファンタジー10』は、異世界転生ものであるRPGの中でも更に異世界転生をやってのけている。正確には、異世界転移である。
『FF10』は国内250万本くらい売れている、ダブルミリオンソフトである。
発売は2001年7月19日。当初は、2001年春に発売予定だったが、少し延期した。
国民的RPGなので、ほとんどの人はあらすじを識っていると思われるが、簡単に説明すると、主人公はティーダという17歳の少年である。
彼は、ブリッツボールという架空スポーツの花形選手で、大都市ザナルカンドで、試合をしている最中、突如巨大な生物が現れて、街は大破壊に襲われる。
そこに現れた父ジェクトの友人であるアーロンというおっさんに導かれるまま、識らない世界に飛ばされる。冒頭から、プレイヤー同様、混乱の幕開けである。
ティーダは、よくわからない滅びた遺跡に飛ばされて、怪物と戦い、また遭難、そして、人が住む島にたどり着く。
島では彼に良くしてくれる人々がいて、召喚士と呼ばれる、魔物を呼び出し戦う巫女がいる。巫女は同い年の少女で、美少女である。
彼女はシン、と呼ばれる災厄を倒すため、究極召喚を習得にいき、シンを滅するのだと言い、今はまさにその旅に出る直前で、ティーダは彼女を守るガードとして、仲間たちと旅立つという筋書きである。
シンは、世界を滅ぼす悪魔のような存在であり、製作者は台風のような災害だと言っている。
主人公は何も識らず、行く先々でその世界の文化、シンという災厄、また、少女の決意を知りながら、旅をしていくわけだが、まさに異世界へと行くわけだ。ティーダは何も識らないし、それはプレイヤーと同じ視点である。完全なる異世界冒険ファンタジーである。
もう20年以上前のソフトなので、完全にネタバレになるが、本作では4回ほど、メガトン級の真実が明らかにされるシナリオ構成で、まずは序盤、再会したアーロンに、ティーダは驚愕の事実を告げられる。
「そうだ。シンはジェクト(お前の親父)だ。」
実はティーダは父親ジェクトと仲違いしており、すごく気まずい関係なのだが、シン=ジェクトという事実を知り、彼を追いかける形で旅を進めていくことになる。
これは、父殺しの旅である。
そして、次にだんだんと恋仲になりそうな予感で胸キュンのヒロインのユウナにまつわる、メガトン級の事実を仲間から聞かされる。
「ユンナん、シンを倒したら死んじゃうんだよ!(松本まりかの声)」
どうやら、究極召喚を使用し、シンを倒すと、シンを滅ぼすことが出来るが、代償として、召喚士は死んでしまうらしい……。
これを聞いて、泣いちゃうティーダだが、なんとか誰も死なせずに、シンを倒す道を模索し始める。
これは、死出の旅である。
あと2つ、衝撃の展開(まぁ、そうなるわな、という展開でもあるが)が待ち構えており、怒涛の展開が続く。
まさに、厨二病のオンパレードといっても差し支えはないのだが、然し、今作はその青さに熱すぎるほどに誠実で、一番年上のおっさん(アーロン)が、意外や一番厨二病を拗らせているという天然キャラ(冷静に考えれば、なんちゅう格好しているんだ。全方位で厨二的であり、神々しさすら感じる)。
そして、そのアーロンの10年越しの友ジェクトとの約束、ティーダとジェクトの親子愛など、泣かせる要素がてんこ盛りで、まさに完璧といえるほどにエンターテイメントをしているのである。
元々、初期段階では『セブンティーン』という17歳で死んでしまう病気が蔓延した世界の物語を描く予定だったそうだが、何れにせよ、17歳、とういうのは、大人と子供の端境であり、主人公として冒険に出られる、最後の年齢なのである。
だからこそ、この作品は異世界転移のフォーマットに則っており、かつ、異世界転生の物語として相応しいのである。
何故ならば、拗らせた少年主人公の相場は、14歳〜17歳、思春の頃と相場が決まっているからである。