お家の近くが金閣寺
家の近くに金閣寺がある。あの三島由紀夫の『金閣寺』である。
京都に住むということは、寺社仏閣に極めて近づくということでもあり、同時に、それらの有り難みが一切なくなるということである。
思い立ったら『金閣寺』、なのであるから、あんなもの、なにがいいんやろ、という世界である。
第一、金閣寺は燃えてしまっているから、今のはオリジナルではない。
子供の頃から金閣寺が近いと、そのように、無頓着になってしまう。
京都は文人に縁が多い場所が多数ある。
だから、えー、あの場所に谷崎が!?あそこで川端があれを!!?的な場所が山盛りである。だから、有り難みが一切ない。
遠方にあってこそ、エルサレムなのである。
私はエルサレム旧市街を旅するのが人生の目標の一つであるが、恐らく『金閣寺』をそのように捉えている人(外人とか)もいるかもしれぬ。
ポール・シュレイダーは三島由紀夫の美への追求を、彼の作品と彼を通して緒形拳主演の異常な映画として制作した。『ミシマ・ライフ・イン・フォーチャプターズ』である。
この映画は日本人デザイナーの石岡瑛子が関わっている。
ポール・シュレイダーといえば、『タクシードライバー』である。トラヴィス・ビックルことロバート・デ・ニーロである。
「街のダニ共、全員死刑に処す」とはこれは映画が違ったが(『狼の死刑宣告』ね、基本、そのような精神でおじいちゃんになっても、まだ『魂のゆくえ』で、その心意気を忘れない、デンジャー野郎であるが、どうやらその琴線に三島先生の変態性が引っかかり、妙ちくりんな映画を撮ったわけである。
この映画は日本では観ることは叶わぬので、海外版のソフトを手に入れるしかないのである。割れる金閣寺など、美しいインパクトのある美術が目白押しで、緒形拳が一生懸命楯の会での特訓シーンを演じていたり、若き佐藤浩市が『金閣寺』の柏木役とかで出ている。
皆、『金閣寺』が大好きである。然し、観念的な『金閣寺』が支持されて、丹念な取材を元にした水上勉の『金閣炎上』は消えていきそうなのはどういうことか。
水上勉といえば、『五番町夕霧楼』があるが、あれは『金閣寺』を南東に下がったところが舞台だが、水上勉はこことか、『雁の寺』とか、京都を縦横無尽に駆けていたようだ。
京都は、掘れば掘るほどDEEPである。然し、そのDEEPな部分は住めば住むほど霞んでしまう。
モン・サン・ミッシェルは島内のホテルに泊まると中世の夜にタイムスリップするようだと言われるが、恐らく、そこで寝起きする人には、ただの日常である。
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