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『正義論の名著』(中山元)

こんにちは。島袋です。

私の趣味の一つが読書なのですが、せっかく本を読んだら、自分なりに内容を整理するために読書記録を残していこうと思い、読書録シリーズを始めることにしました。

ちなみに、私がこれまでに読んだ本の記録は、こちらから見ることができます。

さて、今回紹介する本は『正義論の名著』(中山元、ちくま文庫)です。以前、『正義とは何か』(神島裕子、中公新書)や『社会契約論』(重田 園江、ちくま文庫)を読み、社会のあり方について興味を持ったので、この本を手に取りました。

この本は古代ギリシャ時代から現代に至るまでの正義を論じた書を筆者が要約して紹介した一冊です。

第一章ではプラトンやアリストテレスなどの書を紹介して公共善と正義について論じております。「社会全体の利益となることが正義」という考え方と理解しました。

第二章では公共善としての正義からロックやルソー達によって展開された社会契約論へと話が移ります。原始的な自然状態から出発した人ですが、自然状態を維持するのが困難であるため、社会を形成する必要があり、その際に結ばれるのが社会契約であるという考え方です。社会契約の考えによって「国家」に対して正当性が与えられます。

そして三章では、スミスやベンサム達によって展開された市場経済の中での正義が紹介されます。人は自己の利益を求めて活動することで市場経済が導入されます。市場経済では分業制の重要性が強調されますが、これは「パン屋があなたにパンを売るのはあなたを憐れんでのことではなく、自分の利益のためである」という例にも見られるように、各人が自己の利益のために自分のできることを行うことで、結果として社会自体がより良いものとなっていくというものです。アダム・スミスは「神の見えざる手」で有名な『国富論』によって市場経済を議論していますが、『道徳的感情論』によって、市場経済のプレイヤーである人々の内面について考察しています。

第四章では、現代政治哲学に大きな影響を与えたロールズの『正義論』や、それに対する反応を紹介しています。私は特にロールズの正義論に興味を持って、正義や社会契約についての本を読み始めました。ロールズの『正義論』では「無知のベール」を仮定した思考実験により、2つの原理を提唱しています。第一原理は、「原則的に各人は平等な自由が与えられるべきだ」というもので、 第二原理は、「社会的、経済的な不平等が許されるべき場合」について述べています。ロールズの『正義論』は現代政治哲学の中でも特に福祉に関連した話と大きな影響を与えたものとなっています。

「社会」というのは経済活動だけではなく、それを支える政治、法律、政治や法律の土台となる政治哲学、法哲学によって成り立っており、政治哲学や法哲学の理由付けとして「正義」を考えないといけない。そう考えると、社会とはなんて複雑なものなんだと感じました。

また、「正義」とは「何が絶対的に正しいのか」ではなく、時代によって、また人によって異なるものではありますが、目指すところとしては「より良い社会を実現するために」というのは共通しているものだという印象を受けました。

「正義」について考える一冊としておすすめです。


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