「その人のため」のシンプルな考え方
こんばんは。学生からよくお菓子をもらう日本語教師knkです。彼ら、私を友達と勘違いしてるんやろか。
最近、学生に何かを説明する時、私も含め「語り過ぎ」の先生が多いなと最近感じています。
私は、その時いつも反省するとともにある1人の女の子を思い出します。名前はアンディ。
今日はその子のことを思い出そうと思います。
彼女との出会いはメキシコ。
メキシコでは私は講師でしたが、ホームステイをしていました。そこの生徒のご家庭にお世話になるシステムでした。
私は大学でスペイン語を専攻こそしていたものの、ネイティブについていけるような高いレベルではなく、基本的な会話ができる程度でした。
アンディはそのお世話になっていた家族の末娘で、当時19歳。彼氏がいて、大学に進学するかどうかを迷っていると言った普通の女の子でした。当時大学を卒業して一年くらいだった私には妹のような年齢差でした。
日本語学校に生徒として通っていたお姉ちゃんは大学生でほとんどいないし、ご両親も共働きで留守がちだったので、私は家にいるときはアンディと過ごすことが多かったです。
日本語を勉強しているお姉ちゃんとは違い、アンディは日本語は全く話せません。私のスペイン語も初級を終えた程度。でも、アンディとの会話はなぜかよく分かりました。
パパママともスペイン語で会話をしましたが、お互い途中で困ってしまい、最初はお姉ちゃんを呼んだこともありました。
人が多く出入りする家だったので、いろいろな人が来て、私にメキシコの文化や話をしてくれるのは分かったのですが、返事はできないし、途中でちんぷんかん。英語を使ってくれる人もいましたが、私は英語が得意じゃないし、向こうもスペイン語訛りでさらに「?」。スペイン語でいいからゆっくり話してと頼むとスピードはゆっくりなんだけど、知らない言葉の羅列でまたちんぷんかんぷん。すると隣で聞いていたアンディが説明してくれる。それがまたよくわかる。
みんなとっても不思議そうでした。私は自分の不勉強さが原因だから勉強しなきゃとだけ思っていました。
でも、見かねてあるおじさんが聞きました
「なぜ同じことを言ってるだけなのに、アンディの言葉はknkに伝わるの?」
すると、アンディの答えはとっても簡単。
「knkにとってスペイン語は外国語よ?長く話したらわからないじゃない。基本的な短い言葉で端的に言わないと」
実はアンディ、双子のお姉ちゃんもいて、そのお姉ちゃんはドイツで勉強中でした。彼女はその双子のお姉ちゃんに会いにドイツに行った際、少しドイツ語を勉強したけれどそれじゃ足りなくて苦労したとか。そのときにもっと短く話してくれたらいいのに、と思っていたそう。
「自分が体験したことをknkにやっているだけよ」
と、何食わぬ顔で彼女は言ってのけたましたが、周りにいる大人たちは
「あ!」
という顔。
教えてあげよう、見せてあげよう、話しかけてあげようと思っていろいろ説明するのも親切ですが、長すぎると聞き手は混乱して意味がないことをアンディは経験として知っていた。
それだけでした。
その他にも自分が海外で困ったことをもとに私を助けてくれたアンディ。年は下だったけど、すごくいろいろなことを学びました。
ちょっとした目線の変え方でコミュニケーションの幅はぐーんと広がる。
仕事で外国語でのコミュニケーションを教えているはずなのに、ある一言でそれの一番肝のところに気付かされた瞬間でした。恥ずかしかった。
普通の女の子が何も言われなくてもそれに気付いて実践できるのは真に相手のことを考えているから。やさしいなぁ。
アンディの言葉を受けて、その後周りの大人たちの私に対する話し方が簡潔で短くなりました。すると私もわかるので会話に入っていける。おかげでスペイン語も上達しました。お互いに良い気づきをもらいました。
とってもシンプルで、でもそれはとても難しくて、とても優しいアンディのコミュニケーション。これは今も私の基本となっています。