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最高で最悪。Colde【Don’t ever say love me (Feat. RM of BTS)】


オープニング。この開いた右手。いいですね…!自分の内側を開くために集中しているのを感じます。

ドアが軋んで、閉まる音。閉まって、しまった。行ってしまった。終わってしまった。スカート。男子のスカートも大分見慣れましたね。最近わたしがYouTubeでたまに見る男性がヨウジヤマモト好きっぽくて、よくスカート履いてるんですけど、これもヨウジヤマモトですか?メンズのスカート作ってるのは別にヨウジヤマモトだけではないか…。

ひえぇぇえ…!ここでColdeさんのイヤカフを見るまで、自分が先月イヤカフを──生まれて初めてのイヤカフを──購入したことを、すっかり忘れて!た!買ってすぐは毎日うきうきで付けてたのに…。後から入ったカルチャーはなかなか自分に根付かんな。

気になるのは眉尻だなあ。目の下の線はメイクなんだろか。味わい深いな。

おお…お水がぐるぐるしておる…!相対する空席はRMくんのための椅子だろうか…期待!

おっ…
お゛おんっ…?!!

このRMくんの出だしの英語のラップ…なんだか以前に増してレベル上がってない…?

おお〜…RMくんはスカートじゃなかった〜…。男子2人の曲で男子2人ともスカートで失恋の曲を歌ったら、なんだか良く分からないことになってしまうか…。でも裾がぽわんとなっています。おしゃれのデザイン入ってます。

そして…泉が大きくなっているような気が…。大きくなってますね、明らかに。

ここで、RMくんの歌詞を見てみよう。

愛って苛烈だね
沈黙がすべて、いつか誰かによってぶち壊されるのを
君はとっくにご存知だった
僕らは終わりかけてた
どこをとっても操縦士がいなかった
夢で惑い、街で迷い、
あらんかぎりの同情を乞う君
あるだけ全部持って行きなよ


Love is a violence
You did know that somebody someday is
Gonna break all of the silence
We losin' the balance
Lost all the pilots
Lost in a dream, lost in a city
You beggin' for all the pity
그냥 가져

…くっ…くはっ…!!!
い、息してますか…みなさんっ……!!!!

「くにゃん、かじょ」までの声のトーンも完璧だし、コーラスで入っている呟きのような「いじぇ、か(もう行けよ)」すら、「おお〜RMくんはリアルでこういう言い方しそうだ…!」と、鳥肌立もんだすな!

お、怒ってるぅう…!!

…と。そういうわけで。

Colde【Don’t ever say love me (Feat. RM of BTS)】の、MVが公開されました。そもそもColdeさんについて、わたくし全然知識はないんですが、このアルバムが出た段階ではアルバム通して聴きました。良かったです。ダントツでこのフューチャリングが重たかった気がします。MV見て益々、暗い!重い!あるカップルの終焉、その別れたてほやほやの、恋人同士で向かい合う最後の扉が、閉まる、瞬間のお話ですね。

よくこの瞬間を歌に出来ますね!!マゾか!!

続けます!!

きれいな表情。声のコントロールも最高。歌詞は…相変わらず吹っ飛んでます。いくつ、あなたいくつなの…いったいいくつ失恋したって…??

僕を打ちのめして、君は永遠に幸福でいてくれ
もう行けよ
もう行って


날 망치고 너는 또 영영 행복하렴
이제 가줘
이제 가줘

「僕を打ちのめして、君は永遠に幸福でいてくれ」…この見事なRM節、RMくんの一流の皮肉〜〜!しかも鼻で笑ってる、「フフン」付き!!

言いそう、本当に言いそうな気がします…!リアリティを聞き手にこんなに持たせるなんて…

さすが、一流の表現者です。

さあ 憂鬱な場所へおいで
嘘になってしまった全てのケミストリー
もっと低く
隣にいると死にたくなる
もっと低く
俺は一体どうやって過ごしていたっけ
本音を言うよ
今も愛してるとか言うな、おい


그냥 come to the low side (Low side)
거짓말이 된 모든 chemistry
To the low side (Low side)
Wanna fuckin’ die when you next to me
To the low side (Low side)
벌써 I can't remember how it used to be
Honesty is the policy
Don't you say you lovin' me, hey, hey

ここは普通に読み解けば、「彼女の隣にいると死にたくなる」って意味だと思うんですが、最初に持ったイメージは別のものでした。別れた彼女にそこまで言うかな?どうかな?という気もするし。言うか?な?

この、秒でずんずん心を閉してく青年。彼女と付き合う前は、きっと彼は、low side、このインナースペース、低い場所にずっといたのでは。そしてそこには常時、ブラックムーンRMくんが住んでいるのでは…?そのブラックRMの隣にいると死にたくなるのではないか。それがわたしが最初に持ったイメージでした。そこで起こる感情を飼い慣らすのも、かつての彼には慣れたものだった。

しかし光に満ちた時間を経たRMくんには、その場所でかつてどうやって過ごしていたか、今、思い出せずにいる。幸福なケミストリーを過ごしたこととのギャップ。

それでもRMくんは、彼女との間に起きたキラキラした化学反応の残骸を引き連れて、下層へ潜ると言う。

愛ある世界の暴力に、光の下にいたRMくんを壊され、愛ある世界に失望している。正直引き止めても欲しくない。

このぐるぐるの下層が「low side」なんでしょうか…この下に潜って行っちゃうのかしら…こわい!!

ラストのコーラス、RMくんの悲痛な叫びもすごく胸を打ちますし、Coldeさんのオブリも美しいです。ストリングスが悲痛さをますます昂らせますね。もう、振られた男の嘆き、最高潮、うず潮もさながら洗濯機、ぐんぐん回っております……!上部は魚の群れでしょうか…水の流れに翻弄され、取るに足りない、ちっぽけな嘆きのメタファーですか…?

と、最悪の瞬間を、最高にエモーショナルに、美麗な男子2人が歌い上げてくれました。ありがとう!!!思い出すよ、あの扉の閉まる音。忘れないよ、あの部屋、あの扉の内側の色。思い出したよ、閉まった直後、自分の頭が、行き場を無くした自分の言葉で満杯になった瞬間を……!

RMくん程の言葉の術者は、別れ話をする彼女の言葉の中に、自分が悪者にならないための自己弁護があるのを瞬時に見抜くだろう。彼を労るに見せかけた自己欺瞞を浴びせられて、余計に深く傷つくだろう。結論は出ているくせに。それでもなお目の前に立ち続けるなら、その無自覚の暴力を、自身に自覚できるように、捌いて、寄り分け、暴いて、自分が傷ついているのと同じ分量だけ相手にも傷ついて欲しいと思うかもしれない。

誰よりも近しい人だから、誰よりも心を開いて近づいた。そして他の誰とも比較にならない深さで傷ついた。誰よりも大切だった人に、自分が味わってるのと同じくらい深く傷ついて欲しい。それは出来る。するのか?自分が最も愛した、幸福でいることを願った人に?

それをしないための、0か100か。存在自体無かったことにする勢い。復縁はあり得ませんね!復縁はロマンチックじゃありませんからね!この方…RMくんという方、前から思ってましたけどやはりロマンチックな男子ですね〜!きゃっきゃっ。

韓国ドラマを見た印象では、別れ話で「仕方がなかった、自分は悪くない」という弁解をするパターンは一定数ある気がします。コップのお水かけて終わりという、両者の中のこんがらがった見解を瞬間で解決させる、見事な手法です。

そうじゃねえだろ、と。そういうことじゃない。だけど相手がこの「型」を取るなら、両者はすでに対等じゃない。じゃあ全てを飲み込んで、彼は下層に潜るしかない。何も言わずに。何も言わなくて良い場所まで。つまり両者は、初めから対等じゃ無かったんだ。彼は一時の幻想、日の光の下で、二人は対等にいるという幻想を見ていた。幻想に傷つけられたプライド。誇り高い地下層の番人。

いろいろひっくるめて、RMくんらしい、強さとプライドと、弱さと、弱さの中にある強さを、作品の短い時間に堪能させて頂きました。

最近。パクチー悩んでまして。

「アート」とは何か。考えちゃってて。なかなか考えがまとまらなくて。そしてwikiで調べたら(←笑)、「アートとは何か」で学問一個あるくらいだから、答えが出なくてもしょうがねえのか…と、思いつつ。それでも今のところまででゲットした感覚があって、「創作」とは、自分の中の異質のものと異質のものの、非言語コミュニケーション、その成果物なのかな…と。アートは、創作の方向を、意図した効果を狙って、ある程度コントロールが効いている状態、つまり他者という異物と自分の非言語コミュニケーションなのか、な。と。

そういう風に捉えるようになってからというもの、見るもの聴くもの、全然これまでと違った印象で受け取ってるんですよね。ぜんぜん批評的な気持ちにならないの。今回のColdeさんの楽曲がどうか、もう、わたしは全然そういう観点で聴いてなくて、「彼らが統合したものは、どのくらいの解像度で作品に反映されているのかな」を、楽曲、歌詞、ビジュアル、映像、など、から総合的に感じ取ってる。そういう、まるっとした、ばくっとした、エネルギーの総体。そういう、ギフト。空気と光ケーブルを媒介して届く、わたしが受け取った、同じ人類からのギフト。そういう感じ。

今回、この楽曲では、Coldeさんが敷物を広げ、RMくんが地下層に続く道をライトアップして見せてくれました。地下層、low sideと、光の下にいるRMくんとを繋げたパスが、この曲のバースだと思う。

low side、そこに長居すればするほど、生への希求が薄れていく。肉体の実感が希薄になっていく。少ない酸素で生き続けるベタ(闘魚)みたいに、自分の吐いた酸素を吸ってかろうじて生きてる。知ってる知ってる、その場所を、わたしも知ってるよ。どうあっても満たされることのない欠落。生涯付き合い続ける喪失感。ホロスコープにはブラックムーン(あるいはリリス)というポイントがあるらしい。彼のlow sideはブラックムーンなのか、それをわたしは判断できないのだけれど、ほとんどの場合自覚されない、誰もが持ってる世界。彼は、この楽曲を通して、世界中の聴く人たちのブラックムーン、low sideと、細く細く回路を繋げた。そして一見ネガティブでしかないこの場所に、彼は彼女をこれ以上傷つけなくて済むために引き下がり、自分の傷が癒えるのを待つために引き下がり、自己のセーフティゾーンとしての機能を与えた。

このルート。それは実は、光の側、light sideにいる自分と繋げるパスなんだよ。役割を与えて、異質のものと異質のものが連結される。

RMくんのlow sideが求めているものは何だろうか。

「自分のことを完璧に理解してくれる人間はいない」

それとも、もっと別の、何か?

もしも、彼が「他者は、僕を完璧に理解することが出来ないからこそ、完璧だ」と認識するに至ったとしたら、

これが、そう、あれですね。彼が年齢が上がって、
ここからさらに、未知の自分と出会わせてくれる人と出会ってですね、

閉まった直後にドアを、
バーンと開けて、
部屋から去ろうとする彼女を、
上Tシャツ、下トランクスみたいな格好で、
サンダルも右左違ってて、
「全部!直すから!お願い!悪いとこ全部言って!」
みたいな感じで、
泣いて、駄々こねて、
追いすがったら、
そんくらいなり振り構わない、
プライドよりずっと大切な人がいたら、
いつかそういう感情を体得したら、
彼は、また全然違う味わいの楽曲を作るような気がします。

見たいな…。
かっこいいな…。
楽しみだな…。
かっこいいな…。

そうは、ならん、か…?


そいでは、またねん!




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