〜スポットバイト体験記 その2 深掘り編
スポット就業者の多くが40〜50代。様々な人たち
スポット(単発・日雇い)の現場が若い人ばかりだったらどうしよう、と思っていた。体力ではとてもかなわないからだ。とんでもなかった。ほとんどが40歳〜50歳代の人ばかり。レギュラー(長期バイト)なら20〜30代はかなりいるが。会社員ながら低賃金ゆえに休日にスポットで入っている、という人も多数いた。
そして僕のような個人事業主はザラにいる。
推定50代でネットビジネスやってる人、法人で清掃関係の仕事をしてる人、そんな人たちと数多く出会ってきた。コロナで事業がダメになった人が大半だ。
若い頃オーナーシェフとなり、3,000万円の負債を抱えながら離婚したうえで10数年で借金返済したという40代後半の男性もいた。
本業の仕事がない時にスポットを多く入れ、本業の仕事が入った際にはスポットを減らす。ダブルワークにうってつけだ。僕もその一人だ。
本業一本の頃、経営者仲間から「本業しながら副業(バイト)するのは週2回が限界」という話を聞かされていた。まさにその通りだ。
本業ゼロの場合、スポットは週4回が限界といえる。週2〜4回の場合、一日は完全休養の日を設けないといけない。気力・体力が元に戻らず、何もできないからだ。
F社以外にスポットに強い派遣会社が多数ある。同じ現場でも5〜6社の派遣からスポットが来てるケースが多い。
一番メジャーといえるのが、登録しているF社とT社(橋本環奈のTVCMでおなじみ)。「どこから来ました?」「T社から来てます」「T社ってどんな感じ?」という具合で会話が進む。
現場で知り合った人たちとは、頻繁に情報交換を行っていた。
「あそこの現場、どう?」「いやあ、最悪ですよ」「あそこの現場、雰囲気いいですよ」とか。とにかく現場ではスポット仲間を作り、情報収集が大事。こちらから何枚も名刺を渡したけど、一度も連絡ないですけどね(苦笑)。
一番評判が悪い現場が僕がデビューした宝塚の食品工場。パワハラお局様がスポットを頻繁に罵ってるとか。同じ話を何人もの人たちから聞かされた。F社のスポット連中の間で有名らしい。実際にスポットたちが逆ギレし、喧嘩しながら仕事が続行したとか。僕が配置されたのは楽な場所というのは、後になって気づいた。
あそこの現場はアウト、あそこはいい、という会話ばかりで盛り上がっていたが、仕事探しには大いに役立った。
バイト探し中毒に陥る
スポットは本業優先のために緩急自在なところが利点だが、デメリットもある。生活費をかけて中毒になり、他のことを考える余裕もなくなる。
単発探しなので、毎晩F社のサイトとずっとにらめっこし、毎日ポチッと応募する。
勤務先が決まれば基本的にキャンセルはできない。
3時間勤務のスポットが決まり、現場の仕事を終えサイトを見ると、別件のフルタイム仕事に変更されていた。「この日は予定が入ってるので、キャンセルさせてください」と連絡するも、F社担当者は「この日、別の現場も応募してましたよね? こんな事すると、他の現場も紹介しづらくなるので注意してください」とのこと。これって事前に変更しますってこちらに連絡すべきだと思うが。
あとサイトでは募集時において仕事内容・勤務地・会社名は具体的に記されていない。これは事前に現場の評判などを知られないようにするためだと考えられる。
要注意だ。
あと勤務地まで車でどれだけ時間がかかるのかもポイント。
ヤフーカーナビで何分かかるかシミュレーション。朝方は渋滞するので、アプリで表示された到着予定時間よりも10分以上早く現地へ着くのが賢明だ。
尼崎・西宮方面は慢性的に渋滞するので、いつも焦る。現場は基本的に車通勤不可なので、近隣コインパーキングがあるか調べる。たいがい一日500円程度だ。パーキングが満車ということもあるので、二番手・三番手のパーキングも調べないといけない。そこで予約制パーキングというのを知った。ネットで支払い、場所が確保されるので、安心だ。
これまで自宅から50〜60分かかるパーキングがほとんどだ。
まあ、車通勤だとプレッシャーがかかる。やはり自転車で行ける近くの現場がベターだ。
昼食事情はどうか?
初めの頃は事前にコンビニがあるか下調べし、昼休憩時に買い出し速攻で食べてしまう。そのうち朝一番でコンビニで買い、その後は前日にスーパーで弁当購入という流れになっていた。
勤務地近隣にはファミレスなどはまずない。たまにセンター内に社員食堂があったりする。値段も400円台とお手頃価格なので、そこを利用するのが一番楽だ。
スポット仲間の昼食を見ると、79円ほどの菓子パン・100円程度のカップラーメン・150円前後のおにぎりセットのパターンが多い。おそらく400円程度の食事だ。周りにいるスポットの人を見渡すと、そんな感じの人が多い。
僕としてはここまで低価格の昼食は良くない、と感じた。せめて食事を楽しめるものにしたいものだ。
一年間のスポット現場の流れ
1月下旬〜2月
宝塚コンビニ食品・伊丹パン工場・JR尼崎・川西(単)ほか
2月終わりから3月
西宮浜(メイン)、西宮の山奥、尼崎海沿い、イオン伊丹の催事場設営(単)
4月〜6月
茨木の電子部品の物流センター(メイン)、彩都、吹田岸部パン製造大手、摂津、六甲アイランド、茨木の食品工場、箕面山奥の冷凍倉庫、西淀川区、鳴尾浜
7月
宝塚の某スーパー物流センター(今も勤務中)、六甲アイランド、伊丹の新物流センター(メイン)
8月〜10月
伊丹の新物流センター(メイン)、伊丹の精米関係 などなど‥‥。記憶してる現場は以上になる
11月から現在まで
宝塚の某スーパー物流センター
〜通勤範囲は阪神地区、北大阪、神戸市東灘区、大阪市西淀川区。
全て物流センター(大手メーカーが物流センターを間借りし、物流委託会社が運営している)か食品工場だ。
※(単)はその時だけの就業者募集、(メイン)は僕が当時週2〜3回通っていた現場
いろんな現場、さまざまな人々
希望職種として選んだ現場のほとんどが物流センターか食品工場だ。
物流委託会社の現場には立場順だと、社員(現場監督と事務処理)、契約社員、パート、レギュラー(ベテランらしきバイトリーダーがいたりする)、そしてスポット。社員が目立つ作業服を着ている。あえて言うならばスポットが一番低いポジションで気楽な位置にいる。
2月から4月かけて何度か行った西宮の山奥(名塩のさらに向こう)の物流団地にある現場は上品だった。イケメンの社員を含め、ピリピリ感はあるが雰囲気は中々いい。時給も1,200円、交通費500円で駐車場付き。しかもパワハラ対策なるチラシが貼ってたりしていて、労働環境向上に努める前向きさを感じた。
4月〜7月初めにかけてメインで通った現場が茨木の電子部品の物流センター。ここも上品な雰囲気で、社員の現場責任者・若い担当者ともに気の良さそうな人だった。いつもニコニコな若い担当者は、僕がいた会社でアルバイト経験があるという。
T社から来た尼崎在住で推定40代男性とも仲良くしていた。ちょっとオタクな雰囲気だった。寝たきりの母を介護しながら自営で地方の食材買付の仕事をしていたが、母他界により困窮化が始まり、T社に登録し働いているという。置かれた立場が近いので親近感が持てた。ただこの現場は面倒なスポット労働者が一人おり、たまに同じ日に勤務することが不快だった。その男は他のスポットたちからはかなり評判が悪かった。
ほぼピンハネの現場もあった。彩都の現場だ。様子見ではいい雰囲気のように見えたが、徐々に体力的に疲弊し、あらが見え始めた。時給1,250円で8時間勤務なのに所得税が2,000円近く天引きされていた。この会社は北大阪一帯の物流現場を委託されてるケースが多い。西淀川区の現場も同じ会社で同じくピンハネ状態だった。
確か時給1,050円で実質時給800円程度の現場だった。ここも二度と行くまい。
最悪ともいえる現場が尼崎海沿いの巨大物流センターだ。
現場は違うが、以前述べた元ヤン社員がいる現場と同じ会社だ。
ガラ悪そうな現場責任者、元ヤン風の女性社員、上品さの欠片もない現場だ。
しかも極めつけが。現場のアウトロー風バイトリーダーがスポットの若い男性を「お前何しとんじゃ!ボケ!殺すぞ!」と怒鳴りながら蹴りを入れていた!
しかも一日2度目撃した。
こんな現場、今もあるなんて!!
僕が若い頃だった90年代、会社で何度も見た風景である。
会社であちこちにいるガラッパチの係長や課長が「どアホウ、ボケ、殺すぞ」と吠えながら蹴り入れるのが日常だった。パワハラ・セクハラは当たり前の光景だった。
だが今では許されない。ありえない現場としかいいようがない。
吹田の大手パン工場では1時間ほどの説明会も勤務時間内で休憩所ではパン食べ放題。しかもいちごのヘタを切る作業でバンザイ三唱な現場だった。
箕面の物流センターでは零下35度の現場で死にそうになった。実際発熱して早退することになった。
六甲アイランドまで足を伸ばした。化粧品の梱包ラインがメイン作業で、その他パレット積みされた段ボール箱のラップ巻き仕事はキツかったが、仲間と話しながらの勤務はまあ良かった。おそらく僕と同年代だが、若い頃からスポット一筋というスポットプロ的な男性もいた。
ベトナム人が多数いる茨木の食品工場。時給1,300円の割には楽な現場もあったが、製造ライン作業ではヒーヒー叫ぶ間もないシンドい現場だった。
そうこうしてるうちに地元伊丹、JR伊丹近辺に物流センターができた。
ここは天国のような現場だった。
①現場は新しくて綺麗 ②仕事内容はシンプルで体力負担の仕事は一部 ③レギュラーを含め、バイト仲間とワイワイしながら働ける ④何しろ自転車で20分
ここではF社スポット以外に別の派遣会社からなるレギュラー混成の現場だ。
同い年・独身未婚・同じ播州出身の元会社員や、アパレル起業家の人もいた。
消耗激しい猛暑の時期にここで勤務できたことは最高に良かった。しばらく週5日も勤務できたのは幸運としかいいようがない。
しかし長続きしないのが世の常。10月いっぱいでスポット募集を打ち切り、レギュラーで一本化するとのこと。ここは10月末でおさらばした。
2024年1月現在、通ってる現場は宝塚の某スーパーの物流センターだ。先述した西宮の山奥と同じ会社。現場はお世辞にも綺麗とはいえず、調理済の大きなパン箱を仕分けして洗浄ラインに運び、処理済の箱を所定の場所で運ぶという作業だ。箱には汁が残っており、清潔感はない。でも気の良さそうな契約社員(?パートナーと呼ばれている)の若い男性がおり、おそらく良い現場に違いない。
ということで現在もここでスポット勤務している。
自分がどの位置に立っているか確認できた。
困窮化しているのは自分だけではない。ダブルワークは当たり前なのだ。
全然普通なので恥じることはない、と実感した。
とにかくスポットはあくまでも食いつなぐためのもの。本業あってのバイトだ。しかし色んな場面と人に遭遇し、人として少しは成長したのかもしれないし、本業への意欲を高めるきっかけになったのかもしれない。
現在もスポットで働いているが、貴重な体験をしたのは感謝しかないですね。
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