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顧客との対話を促進する場づくり
はじめに
本連載では、B2Bマーケティングにおける価値伝達と共創の実践について解説しています。第4回となる今回は、具体的な価値共有の「場」をいかに設計し、運営していくか、実践的な視点からお話ししていきたいと思います。
1. 従来型イベントの落とし穴
毎年1回、製品の新バージョンに合わせて開催される新製品発表会。ベータテストでのユーザーフィードバックを反映した新機能の紹介は、既存のヘビーユーザーにとって待望の情報でした。しかし、ライトユーザーや見込み客にとって、機能強化の説明だけでは、その製品が自社の業務や成長にどう貢献するのかという本質的な価値が見えづらい状況でした。
2. 革新的アプローチの3つの柱
A. 既存のユーザーコミュニティとの協創
各地域で活発な活動を展開していたユーザーコミュニティは、製品に関する情報交換や相互支援など、自律的な活動を続けていました。私たちベンダーは、場所や情報の提供など、できる範囲での支援を行っていましたが、あくまでもユーザー主導の活動として発展していました。
そんな中で、年次イベントをユーザーコミュニティとの共催という形で開催することを提案しました。これにより、ベンダーにはユーザー視点を取り入れたイベント作りが可能になり、一方でユーザーコミュニティは活動成果を広く共有する場を得られるというWin-Winの関係が生まれました。この結果、イベントの価値が大きく高まったのです。
B. イノベーターたちとの対話
特に注力したのが、登壇者の選定です。従来の機能活用事例や業務改善事例ではなく、製品を活用して革新的な製品開発に挑戦している企業のリーダーたちを招きました。
例えば、ある回では独創的な家電製品で注目を集めるベンチャー企業の経営者に基調講演を依頼しました。従来の常識を覆す製品開発において、3D CADをどのように活用し、どのようなビジョンを描いて製品化を実現したのか、その情熱的な語りは多くの設計者の心に強く響きました。
また、小型ロケットの開発に挑戦するベンチャー企業の創業者を招いた回では、「不可能を可能にする」ための開発プロセスと、そこでの3D CADの可能性について、NHKの「プロフェッショナル」にも取り上げられたような圧倒的な説得力で語っていただきました。
これらの講演は、単なる製品活用事例の紹介ではありませんでした。むしろ、製造業のエンジニアたちが持つ「創造する喜び」や「革新への情熱」に火をつける場として機能しました。
C. 地域発の草の根活動との共鳴
各地域のユーザーコミュニティは、それぞれ特色ある活動を展開していました。例えば、ある地域では月例の勉強会を継続的に開催し、また別の地域では製品を導入したが活用の仕方に悩んでいる若手のための研修プログラムを自主的に運営するなど、コミュニティの必要性に応じた活動が根付いていました。
年次イベントは、こうした草の根活動の成果が一堂に会する場としても機能しました。各地域のユーザーコミュニティが自分たちの活動を報告し、他地域の仲間たちと交流することで、新たなアイデアが生まれ、それが各地域での活動に還元されていきました。このような好循環が生まれたのです。
重要なのは、これらの活動があくまでもユーザー主導で展開されていた点です。私たちベンダーは、必要に応じて場所や情報を提供するなどの支援を行いましたが、活動の方向性はユーザーコミュニティ自身が決定していました。
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3. 成功のための具体的なアクションプラン
これらの経験から、イベントを通じた価値共有を成功させるための具体的なポイントが見えてきました:
基本姿勢の確立
ユーザーコミュニティの自主性を最大限尊重
支援者としての適切な距離感の維持
長期的な関係構築の重視
プログラムづくりのポイント
創造性と革新性にフォーカスした登壇者選定
製品機能の説明に留まらないビジョンの共有
各地域の活動成果を活かした内容構成
運営面での工夫
ユーザーコミュニティとの密接なコミュニケーション
地域特性への配慮
参加者同士の交流機会の最大化
おわりに
年次イベントの改革は、私たちにとって大きな学びとなりました。特に重要だったのは以下の三つの気づきです。
第一に、強いコミュニティは自律的に育つということです。ベンダーにできるのは、その成長を支援することだけです。
第二に、製品の価値は、それを使って何を実現するかというビジョンによって輝きを増すということです。イノベーターたちの情熱的な語りは、そのことを如実に示していました。
第三に、地域に根ざした活動こそが、コミュニティの持続的な発展を支えるということです。この認識は、その後の様々な活動の指針となっていきました。
次回は、このようなコミュニティを基盤とした、より深い顧客との関係構築について解説します。
連載目次
第4回:顧客との真の対話を生む場づくり術(本記事)
第5回:共創的な関係構築のために(次回)