聖学院高等学校のSTEAM教育実践レポート:色と光の三原色混色実験
BSSの2023年度カタログ巻頭ページにて、聖学院高等学校(東京・北区)で2021年度より高校課程に開設された「Global Innovation Class」でのSTEAM教育について、担当の先生方3名から伺ったお話を掲載しました。
記事の反響を受け、2023年度の聖学院高等学校のSTEAM教育の授業実践をレポートしていきます。
聖学院高等学校のSTEAM教育についての巻頭ぺージの記事はこちら▼
聖学院高等学校のSTEAM教育では、理論と感性の両面を大切にした想像力の育成をコンセプトに、理科、美術、情報が横断的に授業を行っています。
デザイン領域(美術)で、1学期の最初に色や光の三原色などの色彩学を学び、その後理科と情報で様々なワークを通して自分の感性を掘り起こしながら、平面から立体のデザインへと進んでいきます。
三原色混色実験?
色と光の三原色の混色実験には、レーザー、プリズム各種、デコデコLEDライトを使います。このデコデコLEDライト、実は美術出版エデュケーショナルの商品。混色の授業は何度か見学したことがありますが、STEAM教育の中での混色の授業ってどんなものなんだろう。デコデコLEDに生徒の皆さんを探究させる力があるのか!?とドキドキ…。
そもそも光の混色って?
色彩検定やカラーシステム(PCCS)を開発している色のプロフェッショナル、日本色研事業株式会社のコーポレートサイトにはこう記されています。
実験で使用するデコデコLEDライトは、七色(白、赤、青、緑、黄、ピンク、水色)に光るLEDライトです。
拡散する強い光で、ランプシェードに使用しても明るく照らせるため、根強い人気の商品ですが、一般的な教材用のLEDライトと変わった点があります。それは、モードスイッチが搭載され、使用するシーンにあわせて照明の機能を変えられること。
① 色がゆっくり変わる ② 1秒ごとに色が変わる ③ 好きな色で固定できる、の3つのモードがあり、今回の実験ではモードを変えながら自由に光の混色実験をしてもらい、最終的に③ 好きな色で固定できる、のモードで青・赤・緑に固定した光の色で混色してもらいます。
図工美術の授業では、照明器具として使用されるデコデコLEDライト。
光の混色のための教材として使用されるのは、おそらく初めてです。
去年までは、美術科の伊藤先生自作のライトで混色実験をしていたというこの授業。生徒が手持ちできて扱いやすいメリットがある反面、光が当たる面積が小さく、少しわかりにくかったとのこと。
1回目の授業で、既に絵の具で混色実験をしていた生徒たち。
「2回目の今日は、色材と光の混色を、アクリル絵の具、デコデコLEDライトやプリズムなどを使い、自分たちで試行錯誤しながら色々と発見してもらう授業になります。」
と、山本先生。
さあ、いよいよ授業が始まります。
手を動かし、色と光を探究する
授業が始まり、伊藤先生から加法混色や減法混色についての説明を聞いたあとは、早速実験開始。一人で、近くの席のクラスメイトと、次々と実験していく生徒たち。すぐに、声が上がり始めます。
スマートフォンで色の変化を記録に残したり、アイデアを出し合ってプリズムを置く位置を調整したり、光の屈折の中に光の混色の色を見つけたり。発見の声や悩む声がそこかしこから聞こえます。
偶然、色材の混色をする友人の描いた絵にLEDをあてたことで、絵の具の発色が違うことに気づいたグループも。
そんな生徒の気づきを、山本先生がクラス全体に紹介し、
「なんで光の色によって発色が違うんだと思う?」
「何色の光が、どの絵の具の色の発色を良くさせてるのかな?」
と、新たな疑問を生徒に投げかけていきます。
「スマートフォンで検索したらすぐ答えが見つかると思うけど、この気づきを自分なりに考えてみて。その後で検索して答え合わせしてみて」
気付いたことや疑問に思ったことを、一度自分の頭で考えてみること。
手のひらの中にありとあらゆる情報にアクセスできる端末を持ち、すぐに情報を手に入れられる環境にいる私たち。ともすれば思考を放棄することがたやすい時代に生きているけれど、大人にこそ大切なことだなとハッとしました。
気づけば、周りのクラスメイトと発見を共有する生徒の姿が教室のあちらこちらに。
ペットボトルに絵の具を入れ、上下にデコデコLEDライトを載せてボトルの中で光の混色をする生徒。青・赤・緑に固定した光をプリズムにあてて混色をする生徒。さまざまな混色方法を試行錯誤しながら探究し熱中する生徒の姿に、気持ちを揺り動かされた時間でした。
今回は美術でのSTEAMの授業でした。生徒の感覚や直感を大切にし、感じたまま、思いついたことをやる!という生徒の活動をサポートしていた伊藤先生と山本先生。この活動から、調査・分析、情報や理科での説明を加えることで、次の学びへと広がっていきます。
次のレポートでは、今回の授業が情報や理科でどうつながっていくのかをお伝えします。
お楽しみに!