聖学院高等学校Global Innovation ClassのSTEAM 教育インタビュー_03
生徒自らが課題を発見して学びを深めていく「探究学習」は、 学校での学びにおいても重視されています。生徒主体の探究型教育を展開している聖学院中学校・高等学校(東京都北区)では、 Science(科学)・ Technology(技術)•Engineering(工学・ものづくり)・Art(芸術・リベラルアーツ) •Mathematics(数学)の学問領域を横断的に学ぶ「STEAM教育」を実践中です。同校で2021年度より高校課程に開設された「Global Innovation Class」のSTEAM教育について、担当されている3名の先生に伺いました。
教育レポートの01と02はこちらからご覧ください。
教師自身もワクワクしながら生徒とともに試行錯誤を楽しむ
ーーSTEAM教育では、題材や技法に関して 新しい視点が求められることも多いかと思い ます。先生方はどのようにして知識や視点の アップデー トをしているのでしょうか?
山本:僕の場合はSTEAM教育に関する論文や本はよく読みますし、専門家の方が手がけるイベントや美術館に足を運ぶなど、圧倒的な量のインプットをすることを心がけています。その中から自分が良いと思ったものを取り入れたり、「これとこれをつなげてみたら面白いのでは」と考えたりすることが多くて、これはもう趣味に近いかもしれないですね(笑)。高1の2学期の「光の対話型鑑賞」の授業では、「ILLUMME(イリュ ーム)」というパナソニックが開発中のloT照明の試作機をお借りしているのですが、これもさまざまな方面にアンテナを張る中でいただいた御縁です。自分が興味を持ったものがあれば、こちらから先方にアプローチしてみるといったフットワークの軽さも大切だと思います。
佐藤:学校外のマインドやモチベーションが同じような方々と一緒に授業を作っていくことも、大切にしていることの一つです。私たち自身がやりたいと思うことを既に実現されている方々の力を借りることで、教師としては新たなアイデアが得られますし、生徒たちが体験できることの幅も広がります。よくお見かけするのが、授業内容やワークショップ、イベントをまるごと外部の方にお任せするパターンです。生徒の状況、状態に合わせて変えていくためにはディスカッションが必要です。労力はかかりますが(笑)。
—主体性を引き出すために、生徒とのコミュニケーションで心がけていることはありますか?
伊藤:生徒たちが何を使ってどんな表現をしたいのかということに関しては、グループ単位で教師が相談に乗るようにしています。授業中だけでは時間が足りなくて、放課後に話し込むこともありますね。でも、僕たち教師の 側から「こうするといいよ」ということは言いません 。学びの主役はあくまでも生徒。生徒たちが「こうしたい」と言ってきたときに「それならこんな選択肢があるよ」と提示するのが教師の役割だと思っています。
山本:主体性を尊重するからといって、全てを生徒任せにしてよいわけではありません。授業を通じて生徒たちに到達してほしい姿がどのようなものかということは、教師として明確にしておく必要があると思います。そのビジョンを持ったうえで、学びの過程に関しては生徒と教員はフラットな関係でいられるのが理想です。前例がないことでも、「こういうことをやりたい」という希望があれば遠慮なく言ってほしいということは、生徒たちに伝えていますね。
ーーSTEAM教育に携わる全国の先生方へのメッセージをお願いします。
伊藤:STEAM教育は正解のない学びなので、教師だからといって全てを知っておく必要はありません 。わからないことは「どうすればいいんだろうね」と生徒と一緒に考え、試行錯誤を一緒に楽しめばいいんです。これからSTEAM教育に取り組もうという先生方は、ハードルを高く設定しすぎずに、自分自身が感動した発見や体験を生徒に伝え、そのワクワクを追体験してもらえばいいと考えてみてはいかがでしょうか。教師自身が好きなこと、これまでに感動したことの全てが学びの素材になり得る。STEAM教育はそんな可能性を秘めているものだと思います。