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エッセイ

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#ほろ酔い文学

キングサーモン

 午前中に都電荒川線に乗った。 都電はお年寄りの乗車率が多いので普段は席が空いていても座らずに、次もしくはその次に乗ってくるであろうお年寄りのために空けておく。  その日は徹夜明けで疲れていて、席もガラガラだったので座っていた。  そもそもなぜ都電がお年寄りの乗車率が高いかというと庚申塚という駅があるからで(たぶん)、その駅は巣鴨の地蔵通り商店街と直結している。巣鴨は言わずと知れたおばぁちゃんの原宿で、地蔵通り商店街と言えばとげぬき地蔵があるお寺の前を通る商店街だ。  おばぁ

哀れな牛丼のお話

※お食事中の方には大変申し訳ございません。  とある日の深夜、帰宅しようと道を歩いていると、向かいから明らかに千鳥足の酔っ払いが歩いてくる。大学生かもう少し上くらいだろうか。強烈に酔っ払って帰る時と言うのは記憶もテンションも自分のする行動もよく分からなくなってしまうもので、通りすがったコンビニで普段は買わない高めのスイーツを買ってしまったり、お腹いっぱいなのに食べたい気分になってしまって無駄にラーメン食べてみたり。かく言う僕もそういう経験があって、朝目が覚めたらおそらく帰り

命の値段

 タイトルほどシリアスな内容ではありません。  都電荒川線には「お話ししてはいけない人(変な人)」の出没率が非常に高い。と思う。  帰りに、都電のホームで電車を待っていた時のこと。 僕の前には小柄なおっさんが一人。お世辞にもキレイとは言えないが、かといってホームレスほど酷くもない。  おっさんはおそらく日本語であろうが、とても常人にはそれが日本語と判断できないような言葉を発し、日頃から特殊な訓練を受けてその手の言語のリスニング能力の卓越した僕だからこそそれが日本語である

中華屋のおっさん

 深夜、よく行く安い中華屋(チェーン店)に入ったときのこと。 まあそのお店は美味くも不味くもないが、その駅前でその時間にやってる安い店というだけの理由でよく行く。    店に入ると僕の他に2人客がいて、一人はサラリーマン風の普通のおじさん。もう一人は一目でそれとわかるあまりお話してはいけない小汚いおっさん。  僕が注文をすると同時くらいにおっさんに餃子定食が運ばれてきて、なんとなくおっさんを眺める僕。おっさんは貧乏ゆすりか寒さかわからないが小刻みに震えながら、その店のすべて