お気に入りの場所だったはずなのに
お気に入りだったお店に行かなくなった経験はあるだろうか。
家の近所に小さなハワイアンカフェがある。
サーフィン好きのマスターが経営している、おしゃれで雰囲気のある小さなカフェだ。
よく通る道に看板が出ていたので、気になって思わず入ったら、アタリ。
ご飯がとにかく美味しい。
私はお酒が飲めないのでランチの時間帯に行ったが、もう何を食べても美味しい。
お気に入りは「ポキランチ」
魚介の切り身を調味料で和えたものでハワイ流の海鮮丼みたいな料理。
色々な切り身が入っていて、和えてある調味料が妙に美味しい。
パンケーキも美味しい。
ふわっとしたスフレっぽいパンケーキでペロッと食べれてしまう。
一度だけこのお店の名物のボリュームたっぷり「フルーツパンケーキ」を注文したことがあるが、それは完食できなかった。
1枚1枚のパンケーキは軽い感じだが、チョコソースがたっぷりかかっていてボリュームを感じた。
「結構重いでしょ?」と笑ってたマスターを思い出す。
そんな重いパンケーキをメニューにいれるなよ…と思ったら、グループのお客さんがシェアして食べるにはちょうどいいらしい。
じゃあひとりで来た私が注文しようとした時にとめてよ!!とは思ったが、仕方ない。
どんなパンケーキでも完食できなかった事がなかったので、ここでの経験は貴重だった。
そんな訳で美味しい料理の虜になってしまった私は、このハワイアンカフェに通うことになった。
お客さんが少ない時はカウンターでマスターとお喋りをするようになった。
美味しいご飯を食べながらの雑談はとても楽しかった。
でも毎回会話の最後が「結婚は?」という話になる。
その時にどう答えれば良いのか分からなかった。
20代後半で今よりも若くて、やっぱり周りが結婚していって取り残された感覚があった私は素直に結婚の話題に乗ることができなかった。
結婚はしてみたいけど、相手がいないし…と歯切れが悪い答え方になってしまう。
別にマスターも悪気がある訳ではなく、純粋に心配してくれていたのだと思う。
行く度に話の着地点が結婚になるので、あまり結婚の事に触れて欲しくない私はお店に行きたくなくなって、最後は通うのをやめてしまった。
お店のおいしい料理はたまに食べたくなるが、喋りたくないという気持ちの方が大きくて、足が重い。
気にしなければ良い話だが、モヤっとした自分の気持ちに嘘はつけない。
はっきりと「その話は嫌なんです」と意思表示ができたら良かったが、あの頃の私には無理だったと思う。
ドラマや映画でよく見る「行きつけの店」みたいなものに憧れていたけど、お店の人と顔見知りになって仲良くなると、いざちょっと嫌だなぁと思う事があったら行けなくなるんだなと思った。
また何かきっかけがあれば行きたいが、もう2年以上は行っていないので、多分このまま行くことはないような気がする。
結婚についても、もう30歳を過ぎたので、あの頃よりは悩まなくなったが、やっぱり行きたくない気持ちが勝つ。
気分が乗らないという事は、今はその機会ではないとは思う。
また縁があれば行くはず。
あの店のポキランチはもう一度食べたい…。
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