あの失敗があったから~短い選手時代からスタッフになって気が付いたこと~
「あの失敗があったから」
募集テーマを目にしてしばらく「失敗」に頭を巡らせていた。思い当たるものがなかったから、ではない。むしろ“失敗”と呼べるものはいくつもいくつもあった。ただ、良くも悪くも取るに足らないもの、特にnoteに書くほど何か進展があっただろうかと思うと我ながら疑問符が浮かぶものも多く、なぜかネタ探しに悩んだ。
ふと思い出した、あの日のこと。
いつもスポーツのことばかりnoteに書いてきたため、たまには仕事のことでも書こうと考えていたのに、結局こうして筆を執ることにしたのは、フットサルでの出来事だった。
10年前、私は選手として今の都道府県リーグに所属していた。
女子フットサルというのは男子のそれと少し事情が違って、サッカー経験者が溢れるほどにいるわけではない。今でこそ「なでしこジャパン」として盛り上がりも見せる女子サッカーだが、20年も時を遡れば、今以上にボールを蹴っている女性というのはレアだった。ゆえに、私が選手を志した時も、サッカー経験者は全体から言えばごく僅か。強いて言うならフットサルでも上位のリーグに行くことで、「経験者」の集まる環境があった。
詳しくは割愛するが、私は微妙な立ち位置だった。小さいころからサッカーが大好きでボールも蹴っていたし、高校時代は部活になれない同好会に引退まで所属していたものの、「競技」として極めた経験は無かった。社会人になってフットサルのスクールに通ったことがそれでも社会人リーグを志したきっかけだが、今思えば「微妙な立ち位置」どころか「競技を極めた経験がない」ことを忘れて完全に背伸びをしたリーグに登録した。
2010年12月のことだった。
なでしこリーグに知り合いがいて当然の世界
いざ加入したチームは、主力の多くがJリーグクラブの女子カテゴリ出身だった。それにサッカー経験者でなくても、別の競技で目立った成績を収めていたり、地頭が良かったり。
正直なところ、私には何もなかった。リフティングが初心者よりできる、そう、「初心者よりできる」に過ぎなかった。
少しずつそんな現実に気が付きながら、そうは言えうまい人と日々練習ができること、地域でも上位のリーグに参戦できること。仕事も多忙を極める中だったが、充実した日々を送っていた。けれども結果は一切ついてこず、仕方なく数分出場させてもらえるか、ベンチで座って終わるかのまま、登録初年度にはチーム自体が降格をした。
それでも練習は休まなかった。
とにかく悔しかった。練習は出られない・結果を残せない日々が続けば続くほど、ますます休めなくなった。誰かにそう言われたからではない、自分でそう思っていた。ピッチで作った負債はピッチで返すしかないと、100パーセント信じ込んで、120パーセントで練習場に向かい続けた。
それが、失敗だった。
短く終わった選手生命、そして今。
それから間もなくして、出張を含む仕事と練習の行き来に心身がバテてしまい、音もなくフェードアウトした。幸いにも手を差し伸べてくれたフットサル仲間によってスタッフとしてのリスタートを切るものの、そこから数年かけても「選手として何もできなかった自分」にひたすら悔しさを覚えていた。
言ってしまえばその悔しさは今もゼロではない。ただ、スタッフになってでも競技に残ることを決めて貫いてきたからこそ、気が付いたことがあった。それは「練習に全部参加すればいい」というわけ“ではない”ことだ。
もちろん練習に参加すれば意思疎通が図れる。もちろんそこでプレーを見てもらえれば起用のチャンスが増えるかもしれない。質問にも答えてくれるかもしれない。
ただ、「参加すること」はそれだけでは意味をなさない。ゼロとは言わないが、違うアプローチで前進することや、後退を防ぐことー例えばチームを辞めないで済むことーだってできたかもしれない。
「100パーセントの選手は勝てない」
実はこう考えられるようになったのも、スタッフとして練習に参加していたある日の、当時の監督の言葉がある。普段は「選手に言っているだけだし」と右から左に抜けることも少なくなかったが、この言葉だけはあまりに突き刺さり、練習後に監督にメールで真意を聞いたことまでしっかり覚えている。その時に、しっかりかみ砕いた返信を送ってくれたことも。
私は選手のときに100パーセントでやっていた。結果がどうにせよ、それには自信がある。そして、その自信はポジティブなものだと思っていた。ただ、100パーセントを選ぶ人は、いざ競った時に勝てないとその時に説かれ、仕事も含めた全ての合点が初めていった。
今も器用に生きているとは全く言えないが、何かの時に立ち戻る言葉が、こうして手に入った。そして今、あの時から10シーズン目を同じ都道府県リーグで迎えることができている。もう少しだけ、力そこそこに粘りたい。
Photo by.佐藤木綿子