【NYY】ごめんね Austin Wells😭
ヤンキースはコロナ禍である2020年ドラフトにおいて,アリゾナ大学の捕手Austin Wells(オースティン・ウェルズ)を1位指名。その時点で平均以下の守備能力や故障歴から,「将来は一塁手へコンバートか」と評価されていた記憶。
実際,私も加入後のWellsを一塁手・左翼手候補と捉えていましたし,2021年の守備指標などからも「捕手(笑)プロスペクト」と小馬鹿にしておりました。
2022年春にMLB PipelineのプロスペクトランキングにてTop100入りした際にも「Wellsは捕手として計算できない時点でTop100入りはないでしょw😓」とヤンキースラジオにて断言していました。
では2022年シーズンを終えたWellsへの評価はいかほどか。
私はWellsに頭を垂れ,心からお詫びをしなくてはなりません。
まずはWellsの経歴をおおまかに振り返ります。ラスベガス出身のWellsは高校時代から名の知れた打撃型捕手であり,ネバダ州で最高クラスの選手として君臨。実際にヤンキースも2018年ドラフトにおいて35位指名を行っています。結果的にアリゾナ大への進学を決めていたために入団はしませんでしたが,当時よりヤンキースがWellsを熱くスカウティングしていたことが分かります。
2019年はNCAAの強豪Pac-12カンファレンスで56試合 BA.353 5HR OPS1.014という打棒を披露しますが,同年夏のCape Codリーグに参加すると木製バットにもかかわらず全参加選手中6位となる7HR&OPS.915を記録し大きく評価をあげることとなります。(当時19歳であり,相手投手よりも年下であったこともポイント)
このように卓越した打撃成績はアマチュア時代から評価を受けていましたが,一方で高校時代から肘の怪我などに悩まされており,依然として『捕手Austin Wells』の評価は高いとはいえず,20歳で迎えたドラフトにおいても1巡目後半~2巡目前半といった評価。それも一塁手や左翼手へのコンバートを前提としたものでありました。
冒頭のようにヤンキースはWellsを1位指名したわけですが,当時ColeをFAで獲得したことによって2巡目指名権および5巡目指名権を失っていたため,「貴重なピックで将来の一塁専を獲るなんて・・。」という評価もあった記憶です。(あと,Seiglerを2年前にドラフト1位指名したことで「何人捕手を獲るんだ」なんて声もあったか)
ご存知のとおり,2020年はマイナーリーグがシャットアウトされていたために8月からMiLBの教育リーグに参加することもできず,翌2021年にLow-AのTampa Tarponsでデビューを飾ります。
ここでは65試合に出場し,9HR OPS.877 BB%=17.1と高水準の成績を残しHigh-Aに昇格。階級が上がっても7HR OPS.849 BB%=15.7という安定の数字で評価を上げます。個人的には同じく2020年に入団したElijah DanhamやTrevor Hauverと共に躍動していたのが印象的で,裏を返せばAnthony VolpeやEverson Pereiraといった強打者に囲まれていたお陰で実力以上のスタッツを残せていたのではという穿った考えを持っていました。(あとHigh-AでのBABIP.393は不安しかなかったのもある。)
気になる捕手能力ですが,こちらはプロ入り後も大苦戦を強いられることとなり,70試合 585.2イニングの出場で盗塁阻止率.125(112盗企-14盗阻)&16捕逸という愉快なスタッツを残します。この時点でWellsが捕手として生き残る未来予想図を描けた人が何人いるのでしょうか。俺は悪くないな。
愉快なスタッツ関連で言えば,当初低評価であった走塁能力に反して16盗塁(成功率100%)を記録していたために,左翼手コンバートにも光明が見えていましたよね。
秋に行われた打高のArizona Fall Leagueに出場しますが,ここでも捕手出場を頑なに続けながらもBA.344 2HR OPS1.034で同期Dunhamと最強クリーンナップを形成し,チームをプレーオフ決勝まで導きました。(この時にNYY3人目の野手として参加したAndres ChaparroもMAX EV117mphというモンスターVelocityを残して強烈な印象を残しています。)
このAFLでの躍進は一部媒体で評価を大きく上げることとなり,翌年3月に更新されたMLB Pipelineのプロスペクトランキングで全体96位に滑り込みます。この時点でWellsを非捕手と見なしていた助手ちゃんは鼻で笑っていましたよまったく。やっぱり俺は悪くない。
ただ,同時期には彼の捕手守備能力に対するアプローチがちょくちょく取り上げられるようになっており,ミニキャンプで熱心に守備練習に臨んだことが伺えます。(特にフレーミング)
記事を見る限り,自分に対する捕手能力不足の声がWellsへ届いているようであり,汚名返上へ相当やる気があったように思えます。
迎えた2022年,5月に負傷離脱はあったもののHigh-Aでは28試合でBA.323 6HR OPS1.004というハイパフォーマンスを残してDouble-Aに昇格。その後も安定したアプローチで55試合 BA.261 12HR OPS.839 BB%=11.7を記録。シーズン通算で20HRに到達するなど,ドラフト時点で期待されたGame Powerも遺憾なく発揮した印象です。
ちなみに,ビルドアップによってスピードが下がったのにも関わらず今季も成功率10割で16盗塁を記録。なんなんやそれは。
そして課題の守備でもフレーミングを中心に非常に上達し,盗塁阻止率は10%以上も上昇し,捕逸もシーズン4個まで減少させました。実際にBaseball Prospectusの統計でもFraming RunsやBlocking Runsで大きく改善が見られていますよね。
そして2022年のWellsを語る上で欠かすことが出来ないのはたっぷりと蓄えた口ひげ(mustache)でしょうか。元々大学時代から髭を生やしていましたが,NYY入団後は全剃り。しかし昨年末ごろから口ひげを生やし始めると良い意味で時代錯誤なスタイルがウケることになります。
CortesやTrivino,Weissertに(DFAになったけど)Luetgeが口ひげを生やしたことでヤンキースファンには馴染み深くなっていることもあり,ETAに沿って来季MLBデビューを果たせば相当人気が出そう。
総括して,高校時代から持たれ続けてきた”捕手Austin Wells”に対する疑念はここ1年でかなり薄まってきており,肘の怪我が再発しない限りは長らくキャッチャーとしてプレーできるのではないでしょうか。恐らくこの春までに更新される各媒体のランキングにおいてもTop100入りとなるかと思います。
一方,逆張りの私が少し懸念しているのはドミニカ代表の穴ことGary Sanchezのように体重増加から衰えが来ないか?という点。Sanchezは怪我や体重増によってスプリントが大幅に悪化。結果としてキャリア中盤からxwOBAの低下を招き,現にwOBAも低下の一途を辿ることとなりました。もちろん捕手というポジションの特性上,ある程度のウェイトは必要になるので仕方ない部分もありますが。
ただ現状では期待しかないので,来季にはデビューを果たし,MLB定着を果たしてほしいですよね。現在23歳という年齢を考えてもHigashioka退団後の正捕手起用がシームレスに行えるとGreatだと思います。
最後にAustin Wellsさん,大変申し訳ありませんでした。
(しっかしAntonio Gomezは何をしてんのかね。ゲームばっかしてるから視力が落ちるんだろうよ。40人ロスター外のマイナー選手にうつつを抜かす時間など無いぞ。)
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