守備力で頂点を掴み,守備力で失墜したLAL【備忘録】
2019-20年,世界的なパンデミックを迎えたNBAはプレーオフを「バブル」形式で実施。これは後のコロナ禍におけるスポーツ等におけるモデルケースとなりました。
そのバブルにおいて頂点に立ったのは言うまでも無くLeBron JamesとAnthony Davis率いるロサンゼルス・レイカーズ。1stラウンドのトレイルブレイザーズからファイナルのヒートまで,スイープは無かったにせよ他を寄せ付けない安定感があったことは誰も否定できないでしょう。
そのLALを下支えしたのはやはりリーグ屈指のディフェンス力。BradlyやKCPにCaruso,Greenといった名手のガードに加えてKuzuma・LeBronというサイズのある選手にも対応できるオールラウンダー,ゴール下にはAD・Howard&Mcgeeという似ているようでタイプの異なるリムプロテクターの存在。ディフェンシブIQでいえばRondoのことも忘れてはならないでしょう。
INDなどで指揮を執ったVogelの手腕も見逃せないでしょう。もともとビッグネームなマネージャーを望んでいた選手・フロントとは対象に,実績が華やかとは言えないVogel登用にため息したファンもいたでしょう。しかしVogelの守備力を土台としたシステム・戦術はロスターにフィット。とくにディフェンス力にリソースを割けなくなっていたLeBronの負担を減らしたことで,出力あるディフェンスを披露させることができました。
話は優勝後の夏に。連覇を目論むLALはチームを一新。スリーの確実性に欠けたGreenをOKCとのトレードでSchröderにチェンジ。
Rondo,Bradlyとの再契約を行わず,MILからFAとなっていたMatthewsを確保。
また,鮮烈なカムバックを果たしたHowardではなく,前年6th-man賞を受賞したHarrellに置き換え。
同じくリムプロテクターのMcgeeともリサインせずにGasolを獲得。
「ベンチからの得点源」「Caruso台頭によるRondoの置き場」といった観点からすれば,なかなかに評価できる動きと見れます。
ただ,Greenはプレーオフでの3PT不振の中でも堅実なディフェンスを見せていましたし,バブル不参加のBradlyもまだまだ素晴らしいディフェンダー。
SchröderとHarrellはどちらもベンチからの得点供給に実績はあれど,防御力には乏しい印象。また,年齢を重ねてプレイメイクと3PTを得意としながらもリムプロテクションは期待できないGasolの加入は前年の守備力からの転換を意味しました。
それであってもKCPとのリサインに成功するなど3&Dを軽視していた訳では決してなく,同年オフにADとの長期契約を結んだことによるペイロールの変容に耐えうるロスター変更と捉えられます。
また,2020-21年シーズンではADやLeBronがケガに苦しんだことが最大の要因であって,ディフェンス力低下によるものではないかと考えます。(実際ディフェンシブレートもリーグ最高)
やはり問題は,Sunsに1回戦負けを果たした21年の夏にあるでしょうか。恐らく後世に語り継がれるであろう最悪のトレードが敢行されました。
WSHに在籍し,自身4度目の平均トリプルダブルを記録したWestbrookと引き換えに,Kuzuma-KCP-Harrellを放出。これにより優秀なペリメーターディフェンダー&スリーポイントシューターを2人も失ったレイカーズ。
当然ながらCarusoの引き止めが望まれるなか,THTとのリサインを優先したことによってCHIへ流失。言わずものがな,これもRuss獲得によるペイロール増大によってもたらされた不健全な状況でありました。
スーパーチーム(?)に釣られてHoward・Rondo・Arizaの再LAL入やLeBronの盟友・Carmeloらベテランを確保。実力ある若手であったMonkとNunnの加入は年齢バランスを良化。3PT職人であるElinngton獲得も,限られた手段の中では誉められた動きであったと感じます。
しかし,Kuzuma-KCP-Carusoという20歳代のディフェンダーを失った代償はプレシーズンから重くのしかかり5連敗。シーズンが始まっても動きの悪いベテランが足を引っ張りディフェンスから流れを作り出せず。しかもそれを棚に上げてMonkやReavesに怒鳴る始末。特にドラフト外で加入し,増えすぎたベテランを支えるために奮起していたReavesに感謝こそあれど,よくそんな態度を取れるなと感じる場面も。
肝心のLeBronとADはケガに苦しんだものの,BIG3のWestbrookは負傷離脱とは無縁のシーズンを過ごして多くの試合に出場。持ち前のエナジーとハッスルには多くのLaker Nationが歓喜しました。
というのは大嘘で,かつてのリムアタックは精度を欠き,入りもしないエルボーからのミッドレンジを狂ったように打ち続け,CarmeloやElingtonというシューターをよそに自ら3ポイントを乱発。ディフェンスでは規律とシステムを無視し,クラッチライムでシュートの上手いガードをフリーにするボーンヘッドを度々披露。期待されたプレイメイクも及第点には至らず,パスミスからのターンオーバーは日常茶飯事で,リム付近での存在感低下によってディフェンスの警戒も弱かったためにキックアウトも思うようにできていなかった印象です。ひとつ可哀想だなと思うのは,スピードとトランジションを武器にしたWestbrookに対して,ベテランの多いLALのロスターはミスマッチにも程があるということ。KCPはこういったオフェンスを得意にしていた印象ですね。
こんなロスター作りをしていてはディフェンス力が地に落ちるのも当たり前な話で,リーグ21位のDRtgを記録。若手をフル起用していた3-4月くらいが一番メリハリがあった印象です。
当然周りのディフェンスが下がっている中ではLeBronのディフェンス出力が上がるはずもありませんでしたし,ADの長期離脱&Russの得点力低下によって,LALのオフェンスセットをひとりで受け持っていた印象です。37歳ながら平均30得点は歴史上最も高い数値であるのにもかかわらず,「LeBronはディフェンスがー」と言ってる奴,正気か???
また,良くも悪くもベテランスターが集ったためにメディア,敵チームからも恰好の的となってしまったことも否めません。MEMなどの若手中心のチームの腕試しとして存分に利用されていましたよね。しかもベテランが集ったせいでリードを許すとベンチは盛り下がり,ハードワークも見られませんでした。
今オフもADやRuss,はたまたLeBronのトレードの噂も出ています。ベストはRussが来季のプレイヤーオプションを破棄してFAになることでしょうが,そんなことは起こらないでしょうね。GOATことLeBronのキャリアが数年無駄になったと思うと涙が止まりません。これで今季Curryが4個目のリングを手に入れようものなら発狂しますね。
やはりLALのミスは3&D選手をことごとく放出し,ディフェンスに参加できないベテランを何人も獲得したことが第一でしょうか。また,そういった失敗はGasolが機能しなかったことからも読み取る必要がありましたよね。レイアップと3ポイント全盛の時代において,ペリメーターを守れない選手と走れない選手,すなわちベテランがロスターに与える作用の大きさがよく分かったシーズンでした。
そもそもペイロールの大きさが契約の肥大に追いついていない現状,中堅~ベテランのBIG3形成は失態と言わざるを得ません。DynamicDuoと堅実なロールプレイヤー主体で優勝しているチームが,スターを取りそろえる。こういった奇行に走ってしまう例が10年ほど前にありましたよね。レイカーズっていうんですけど。