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夏は読書に限る


『よるのふくらみ』

恋愛小説を読むのは初めてだった。

夏休み二日目、コロナ渦と雨の影響でどこも行けず、怠惰な時間をひたすらツイッターしながら過ごしていた僕は、お腹が空いたので最近ハマっているやよい軒に向かう事にした。(700円前後の味噌汁つき定食でしかもご飯がお替り出来るとか本当に日本の食堂コスパ良すぎる)

幸い、雨はかなり弱まっていた。

やよい軒で適当な定食をサクッと食べ終えた僕は、このまま家に帰ってもまた同じ渦にハマるだけだな・・・と思ったので、近くのブックオフで気晴らし用の本を探す事にした。

実は前からTwitterで見かけて気になっていた作家さんがいたので、その方の作品を懸命に探したのだが、全く見つからず。どうやらこの時は読むタイミングじゃなかったらしい。

とりあえずなんでもいいから、タイトルや雰囲気で気になったやつを買ってみるか。と思い、しばらく日本人作家コーナーを見ていると、一つのタイトルに引き寄せられた。

『よるのふくらみ』


なんで引き寄せられたかは、多分、最近流行りの“夜”になんか付け加える系のタイトルだったからだろう笑

すごく単純ですね笑

そしてタイトルの次は作家名を確認する。【窪美澄】さんだそう。
正直聞いたことはなかった。そもそも読んでるジャンルが違うから当然か。

この時点で既に読むことは確定していたのだが、「君に決めた!!」状態になった理由が実はもう一つある。

なんと解説が僕の大好きなアーティスト、尾崎世界観氏だったのだ。
これはもう君に決めるしかない。
またすごい単純なのは分かっているが笑

そそくさと購入を済ませ、さっきまで怠惰な時間を過ごしていた自室に帰る。
着くやいなや、早速至福の読書タイムを開始した。夏休みなので特に時間も気にせず本に没頭出来るこの時間は、正に至福のひとときなのだ。


別に極端に避けていたワケではないけれど、恋愛小説というとやはりアオハル系が多いのかな?と勝手に決めつけていたので、この作品を読んで決めつけていたこの概念が覆された。

全然アオハルじゃない笑。

人間の欲、感情、根底にあるものを実にストレートに描いている作品だった。

ここからは少し内容にも触れるけど、まず設定が恐ろしくエロい。

この物語はどこにでもあるような新婚夫婦のみひろと圭佑の順風満帆な結婚生活の描写、ではなくみひろの圭佑に対する一つの不満への心理的描写からスタートする。これがかなり生々しく、リアルで一気に作品に吸い寄せられます。

この圭佑は仕事もでき、スタイルも良く、自分だけでなく周りへの気配りも出来る、正に理想の旦那なのだが、みひろは一つだけ満足していなかった。

そう、セックスだ。

夫婦生活も慣れると自然とそういうものはなくなる、なんてどこぞの中年サラリーマンが街角インタビューで答えていたりするが、まさしくその慣れってやつだろうと最初はみひろも思っていたそうだ。

ところがどうも違う。こちらがどう仕掛けても、一向に相手からのベストアンサーはもらえないし、こちらの欲情した気持ちが一方通行に通り過ぎるだけ。

そして段々その鬱憤が仕事にも影響しだし……

そんなみひろの気持ちに気付いたかのように、ひょいと現われたのが、幼馴染みの裕太。


この裕太がなんと圭佑の弟なのである。

そうなのです。もうお分かりかと思いますが、この3人で堪らん三角関係が構築されちゃうのです。

もう本当堪らないです。ただ決してめちゃめちゃ卑猥ではないんです。勿論物語は3人それぞれの視点で展開されて行くのですが、それぞれの純粋な想い、甘酸っぱくて切ない過去が交錯していきます。
特に裕太のキャラクターが僕は好きでした。こういう奴いるよな〜なんて思いながら。なんか憎めないんだよなぁああいうキャラ笑


特に世代が近ければ近いほどこの作品に没入すると思います。

結婚を機に少しずつすれ違う夫婦。ただぼんやりと地元で粗相なく過ごしてる青年。いつの間にか結婚、そして親になる準備をしている同級生。

誰もが歳を重ねるにつれて通る過程です。

この作品ではこの3人の成長過程、変わりゆく周りの人々や環境を背景に、それぞれのその時その瞬間の生々しい感情を僕たち読者にぶつけてきます。

この本を読むと、学生時代うまくいかなかったり、想いを寄せていたまま結局何も出来なかったあの人の事を思い出すかもしれません☺️

初めての恋愛小説、とても面白かったです。この夏に読んでおいて良かったです。


皆さんも是非読んでみてください。
それではまた!あでゅー♪


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