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親を人として嫌うコツ


20代の頃、両親と絶縁をしました。
絶縁の旨を告げる手紙を当人たちと、身近な人たち宛にバンバン送り、分籍して住民票閲覧制限をかけ、職場へ報告し、相続放棄を念書にして第三者機関に預け、連絡網を作り、近所の警察や大家さんにも話をつけて報復に備える、など全部やりました。大変胸がすきまして、気持ちよかったです。

私もアダルトチルドレンです。しかし、自助会に通ったり調べたりするうち、アダルトチルドレンでよく聞く「親を愛したいのに愛せない」の葛藤のフェーズをすっ飛ばしていることに気付きました。
なぜなら、私はかなり小さい頃から、父と母が人として嫌いだったからです。

恐らく最も大きな原因は、家庭以外の環境が幸運で、自分の感情を守れたということがあります。劣悪な家庭なのを察してくれる友達家族が周りにいたこと、学校の先生が事情を聞かずただ寄り添ってくれたこと、近所に図書館があって物語に何度も救われたこと、絵を教えてくれる先生がいたこと、家には味方の猫がいたこと。家で心身をボコボコにされても、反抗をやめないでいられるくらいの肯定と愛情を、家族じゃない他の人間たち、人間じゃないものからもらえていたんです。ありがたい。時を経て彼らの優しさが分かります。必ずしも肉親からの愛情を受けなくても、人間は生きていけます。世間はすぐ何でも結論を幼少期の肉親の愛に求めますけども、フロイト盲信しすぎだと思います。

●親を人として嫌っていた子供時代

私は暴力酒乱反社会人格の父親を怖く思ってはいましたが、根本的に父親を「かわいそうな奴」と思って嫌っていました。父は尖った自営業で、世間のサラリーマンたちとは話が合わず、子分か師匠みたいな人間関係しか作れず、女子供相手は虐め抜く、レイシスト暴力アル中の女狂いでした。手のつけようなし。

ルッキズム差別主義者の母親のことも「性格が悪過ぎ」と思って嫌っていました。父の機嫌と、自分の見た目が全て。異性の弟には甘く、同性の私には本当に冷淡、褒めてくれたことも、助けてくれたこともない。個人的な話をしてくれたこともない。愛されていないな、と寂しかったのですが、この人、自分のことを話してくれないんじゃなくて、自分なりの考えとか意見とか持ったことがそもそも無いんだ、と気づいてからは、めちゃくちゃ軽蔑してました。

親が嫌いであることがずっとはっきりしているのは、珍しいパターンみたいです。自助会で正直に言ったら、「親子関係の葛藤が片付いているんなら、あなたは今一体何が辛いんです?」って言われて、殴り倒してやろうかと思いましたが、思い留まりました。

●家族仲は夫婦仲

私が親を人として嫌っていたのは、夫婦愛をはじめとする家族愛の幻想に全然没入してこなかったからなんじゃないかと思います。これは私がアセクシャルで、男女関係にいつも一歩引いてることも関係していると思います。

家族とは男女関係をベースにした幻想なので、家族仲が悪いってことは、夫婦仲が悪いってことです。
機能不全家庭というのは、子供が男女関係に巻き込まれてる家庭だ、というのが本当のところだと思います。


うちは、親のスイッチが入ると、私か弟が引き摺り出され、バカとかブスとかお前が全部悪いとか意味不明の難癖をつけられて説教され続ける、殴られるというパターンが多かったのですが、適当にクライマックスを作らないと朝までコースになるので、私はよく彼らを煽って本ギレさせていました。喧嘩は売った側が有利という原則をここで学びました。煽るのは勿論、彼らの夫婦仲です。
「あれ、あんたの女でしょ?あんな女だって気づかなかったの?どう責任取るの?」
「あんたの選んだ男はあれなの?あれを選んだ自分の人生の運の悪さどう思う?」
とか言うとめちゃくちゃ発狂してました。図星だったんでしょう。家族とは、男女の対幻想ベースでつくる共同幻想です。
男女が嘘偽りなく心の底から仲良しであれなんてことはない。でも、「仲良し」の演技の必要性が理解できないレベルの男女は、親になるな。子供を作るな。迷惑だ。

●あなたの「親」は「親」である前に

「家族仲が悪い」という言葉はずるい。家族の根本は夫婦関係なのに、子供を仲介者や共犯者の役割に仕立て上げて問題から逃げている。
私は子供の頃からこの欺瞞に対して、言葉にできなくともめちゃくちゃ腹を立ててました。

しかし、自助会のアダルトチルドレン仲間たちは、「自分がもっと良い子だったら家族仲は良くなってたかも…って自分を責めてしまう」ということを言います。どこに責任があるんですか?どうして第三者、しかも無知な子供が、夫婦関係を仲立ちしなきゃいけないんですか?
男女の性愛ロマンスが理解できないのは、欺瞞をぶち抜く視点にもなります。以下、アセクシャルのなんの幻想もない言い換えです。

親とは、あなたという人間の扶養義務を負う一組の夫婦である。
お父さんはあなたのお父さんであるが、同時にあなたのお母さんの夫である。
お母さんはあなたのお母さんであるが、同時にあなたのお父さんの妻である。

このあけすけな言い方で、だいぶ親を嫌う罪悪感が減るかと思います。
あなたを殴り、あなたを虐め、あなたを無視するお父さんとお母さんは、お父さんとお母さんである前に、ろくでもない男と、ろくでもない女です。嫌って良いんです。

●世界が切り替わった日

世界が切り替わった日のことを、よく覚えています。13歳の時でした。前の日の晩、父親に蹴られまくって、腕と肩に青あざができて、悔しくて痛くて辛くて、夜通し大泣きしていたんですが、次の日は目を冷やしてから、ニコニコ笑って「参ったー!転んじゃったー」と明るく登校しました。
すると、教室で女友達が数人グループで輪になっていたんです。ひとりがしくしく泣いてて、みんなで慰めていました。泣いてる子は、「前髪切りすぎちゃった、変だよ、もうやだ、死にたい」って言ってました。
その時私は「大丈夫、変じゃないよ、一週間の辛抱だよ」と笑って、みんなと一緒に彼女を慰めたんです。

あの時の感情。もう傷ついたとか、辛いとかじゃなかった。
感じたのは、全身総毛立つような危機感です。
世界が切り替わった決定的瞬間でした。
「そうか。この世界と私の世界は階層が違うんだ。それを前提にして生きないと、マジで殺される」
と、現実を悟った瞬間でした。

それからはひたすら、階層のズレに傷つくことへの忍耐と、その辛さひとつひとつの対処、現実生活を続けるためのストレスと怒りの制御、退行したがる自分との決死の戦いの日々でした。退行すなわち死ですから、殺されたくない!生きる!の一心でした。「普通の階層」の人たちには決して悟られないように。理解して!と甘えて泣きつかないように。必死過ぎて記憶が全く無い期間とかありますが、アダルトチルドレンあるあるだよね♡疲れの桁が違うんだもんね♡

最近ようやく刀を少し下げられたかなあと思います。ようやく本陣をとって、撤退戦にうつれました。私は最期に絶対に自分を誇って死ねるよう、全力で生きると、死んだ愛猫に誓っています。退行したら猫に怒られてしまう。

アダルトチルドレン自助会でしか過去のことや家庭のことは言わなかったんですが、「じゃあ何が辛いんですか?」とか「結婚して自分の子供を持たないとアダルトチルドレンは救われません(別記事)」とか言われるんだから、ほんと笑っちゃいますね。悲劇や生きづらさにも定型があると思ってるんですかね、日本人ってどんだけ「定型」が好きなんだ、もう定型教だよ。

まあこうして過去を思い切り突き放して見据えられるくらいには進んでこられたんだ、お疲れ様、と思います。

あと自助会は私個人が、通っていたところと相性悪かっただけです。誤解生んですみません。
自助会行って良かったことの方が多いです。それもいつか書きます。

過去記事を読み直すと、なんか自分にも他人にも忖度してたと思いました。伝えたい相手は、階層の違う世界を必死で生きている人という、そもそもnoteを始めた理由を思い出しました。
これまで読んできた記事ひとつひとつにそれぞれ救われています。
ありがとうございます。


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