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自宅でのコーヒードリップ。お店で淹れるプロと何が違うのか。

皆さんはこんな問題に直面したことはないでしょうか。

お店で飲んだ美味しいコーヒーを自宅で楽しみたいからお店で少し高い豆を買って持ち帰ったのに、自宅ではその味を再現できない。

「お店で飲んで美味しかった豆を買ってきたのにどうしても同じ味にならないんです!」

私はそういった声を何度か聞いてきました。

この問題は私としてはすごく大きな問題だと考えています。

確かにコーヒーは知れば知るほど奥が深いし、抽出方法も様々で、とても簡単と言えるものではない。
それに、お店では業務用の高いグラインダーを使い挽いた粉の粒度を揃えているし、様々な成分を濾過する高い浄水器などを通した水を使ってるし、豊富な経験と知識のあるバリスタが淹れているわけなので、全く同じとまでは中々いかないかもしれない。

それでも、コーヒーをお店だけの特別なものにするのはとても勿体無いし、毎日の日常にもう少し寄りそうものであって欲しい。
「オレの淹れるコーヒーは世界一美味いぜ!」と自信を持って言えるバリスタさんが読んでくれているのであれば是非、自宅でも同じように再現できるやり方を少しでもお客様に伝えていって欲しい!

自宅で楽しむコーヒーも一定のポイントさえ抑えれば限りなくお店の味に近付ける事は可能です。

順を追ってみていきましょう。


問題1:水質の違い

淹れ方などの違いはよく挙げられますが、私はこの水の違いこそがコーヒーの味に大きな差を生むことを体験しました。

私は普段自宅で淹れているコーヒーは水道水から浄水器を通した水を使用しています。
コーヒーを始めて間もない頃、九州の大分県にある実家に帰省した時、そこでもいつも通りにコーヒーを淹れたのですがその味の違いに驚きました。

挽き目、湯温、ドリッパー、フィルター、レシピに至るまで全て同じ条件で淹れたにも関わらず、味わいに大きな違いがでたのです。

そこで私はいつも淹れている東京の水と実家の水道水とで、硬度の違いを調べました。
その当時の数値ですが次のような違いがありました。

▪️東京の自宅
硬度:35     ph値:7.0

▪️大分県の実家
硬度:72    ph値:7.4

コーヒーは、使用するお湯の水質によってコーヒーの成分が抽出加減が大きく変わってきます。

使用する水が変わればコーヒーの味にも大きな違いが生まれる。
この事を念頭に置いておきましょう。

ちなみにお店で抽出されるコーヒーの水は業務用の高性能のフィルターを通して比較的均一に保たれています。自宅で再現するのは難易度が高すぎる。

お店で使う水に限りなく近づける為には、私は一旦ミネラルウォーターを使う事をお勧めします。

おすすめはサントリーの天然水です。
採水地の違いで硬度が変わるのでその点だけ気をつけて。阿蘇以外で固定して選んでください。(阿蘇は硬度が高すぎる)

とはいえずっと水を買い続けるのも、、という方は少し良い浄水器をとりつけるなどして試してみてください。


問題2:グラインダーによる粒度の違い


これは、挽き目が細かいとか荒いとかの問題ではなく、「粒度が揃ってないことによる味のばらつき」の問題。

粉を細かく挽くとコーヒーの成分は多く出る。
粉を粗く挽くとコーヒーの成分は少なく出る。

このイメージはなんとなく出来ると思います。

この挽き目自体はどの様な味わいにしたいか、またはどの様な抽出方法で淹れるかによって変えるもので、そんなに難しく考える必要はありません。

ただ、どれくらい粒の大きさが揃っているかという粒度の均一性は意外にも味に大きな変化を生んでしまいます。

コーヒーショップのグラインダーは何十万円もする高価なグラインダーです。
とても家庭用で使える金額ではありません。

この問題を解決する方法は一つ。

お店で挽いてもらいましょう。w
(お店がもし安価な家庭用グラインダーを使っていたらその限りではない)

ただ大きなデメリットをお伝えしておくと、コーヒーは粉にするとフレーバーも味も落ちていくスピードが格段に上がってしまいます。
ですので数日以内に飲み切る量を買って挽いてもらう。
そして保存は必ず冷凍庫で保存して下さい。
冷凍庫保存は粉の酸化を極限まで抑えてくれます。

ちょっと待ってくれ、解決策になっていないと思った方!
安心してください!笑
家庭用グラインダーでも高性能のものもあります!
少しだけ値段は張りますが、自宅で使うおすすめグラインダーをご紹介します。

おすすめ家庭用電動グラインダー

Varia VS3

香港を拠点とするVariaのグラインダー。
デザインもシンプルに作られていて、置いててもかなりかっこいいのがこの商品。
価格は現時点で54000円ほど。
比較的コーヒーの粒度もそろっているし、音も静か。
エスプレッソ用の挽き目にも対応している優れものです。
挽き目も無段階に調整できるし、他のグラインダーと比較して機械内部に微粉や粉が残りくい作りになっており(これが相当重要)、かなりおすすめです。
デメリットはいわゆる「シングルドーズ」と呼ばれるコーヒー1杯ずつの豆を引く為のグラインダーだということ。
連続して何度も使用できますが、一回の容量は20-25g程度です。
水出しコーヒーで大量の豆を挽きたい時や、お友達が来たときに3-4杯一気に挽きたい!という時だけ少し手間になるかもしれないので注意!


Kalita ネクストG

こちらは私も自宅で長年愛用しているグラインダーです。
価格は50000円ほど。
コーヒー豆の粒度の均一性が高いのはもちろん、長く使うのには訳があります。
それは、、、

本当に手入れが楽。

これ、本当に重要なんです。
毎日コーヒーを淹れるのでその度に掃除したり、粉が詰まったり、チャフや微粉がまわりに飛び散ったり。。。そんなことは避けたい訳です。
なのにそんなグラインダーが山ほどあります。
というか基本的には細かいチャフや微粉がプラスチックの容器に静電気でくっつくのものが殆どです。本当にやっかいです。。。

だけどこのネクストGはマジで微粉が飛び散らない!
静電気除去装置がついており、挽かれた粉はまっすぐに下に落ちていきます。

一つ目に紹介したVariaも比較的手入れは楽。なので家庭で使うことを考慮してこの2台は特におすすめ。
Kalita ネクストGのデメリットをお伝えするとエスプレッソ用の極細挽きはできないことと若干音が大きい。。。


問題3:粉とお湯の比率の違い

粉とお湯の割合を大体で決めてしまっていませんか?
いつも豆を買っているお店がある方は、ここに関しては聞いてしまいましょう!
「粉とお湯の比率はどれくらいですか?」と。
私がコーヒーをお店で飲むときにも比率を伺ったりしますが、大体粉の14倍〜16倍のレンジに収まっているお店が多い印象です。

ここは味に大きく影響する変数の一つですので一度ご自分のいつも飲む豆で基本の比率を決めてしまいましょう。
例えば粉の量を15g、15倍の225gのお湯を基本レシピにしたら、そこから
味わいを弱くしたい=16倍の240gのお湯で淹れてみる。
味わいを強くしたい=14倍の210gお湯で淹れてみる、など。

ここで最も大切なのは、毎日のコーヒーの味がブレないことです。
自分の基本レシピをきめるつもりでこの数字はよほどのことがない限り変えないようにしましょう。逆に味わいを大きく変えたい時はここを調整します。
自分の比率は1:15、とか1:16というふうに覚えておきましょう。

正確な粉の量を測る為にコーヒー屋さんがお店で使っているスケールは0.1g単位でコーヒーを測っています。また抽出開始からの時間が大きく味に作用する為、注ぎ初めからタイマーを使用しています。
安価なものもあるので、ご紹介します。

なんか、こんなに商品を貼り付けているとよくブログなどで見るアフェリエイトをやっている人みたいですが、ただおすすめの商品のAmazonのURLを貼り付けているだけですので安心してください。笑


問題4:お湯の温度の違い

ここまで大きな3つの問題について解決したら、次はお湯の温度です。
自分の淹れたコーヒーがお店との味がかけ離れているのであれば4つ目にやることはコーヒを淹れる湯温を変えてみること。
これも、お店の味に近づけたいのであれば直接聞いてみましょう!

ここはからは実際の抽出のお話になってくるので深掘りするととんでもない情報量になってしまいます。
抽出の超絶マニアックなお話は別の記事にして出来たらここにリンクを貼っておきますのでご興味がある方のみ覗いてみてください。

焙煎から抽出全般に言えることなのですが、この抽出温度も正解はありません。
80℃で淹れてますというお店もありましたし、沸騰したお湯で淹れてますという方もいらっしゃいました。
ですが現在のスペシャルティコーヒーシーンでは90℃付近で淹れてるお店が多いように思うので、ここではまず湯温を90℃にしてみましょう。

私の経験上、湯温90℃付近で淹れたほうが良いのは知ってはいるけど、実際に忠実に実践している人は少ないといった印象です。
沸騰して少しだけ待った温度。。だいたい90℃くらいになっただろう。。
と、そのお湯で抽出している人が殆ど。
それもそのはずです。
90℃の湯温を測る術がない方が殆どだと思うから!笑

ですがここは「そうだよね、仕方ないよね、大体の温度でいきましょ」では済まされません!!笑

お店の味に近づけたいと思うのであれば、温度は測って淹れましょう!

±1℃で抽出成分の差は結構変わります。
ちなみに前述した豆の量にも同じことがいえます。コーヒー豆1g違いで抽出したコーヒーをブラインドで飲み比べたらその差は歴然です。
温度計を使用するか、湯温を設定して沸かせるケトルを用意するか。
毎日のことなら、ケトルがおすすめです。



問題5:抽出レシピの違い

ここも、突き詰めると沼のような世界です。笑
ですのでここでも基準となる基本のレシピを決めていきましょう。
繰り返しになりますが、これもお店の人に聞けてそのまま再現できる内容かと思います。聞ける方は是非聞いてみてください。
おそらく、使う豆やその豆の焙煎度などによって多少レシピは変えていると思いますが、バリスタの方々は情熱をもってやっている方が殆ど。
きっと分かり易く丁寧に教えてくれるはずです。

ここでは参考までに、私がおこなっている抽出のレシピを決めるまでのフローをご紹介します。
大まかな流れとしては、
①カッピングによってコーヒー豆の持つテイストを理解する。
コーヒー10gに対して100℃の熱湯160g(1:16)を注ぎ味わいをみます。その豆の持つネガティブな部分も全部出す為に熱湯を使います。ここで、コーヒーのテイストをなんとなく数値化します。
5つの代表的なテイストは
酸味
甘味
苦味
香り
質感
です。

②どの様な味を出したいのかを設定する。
①で行ったカッピングでそれぞれのどの様な味わいにしたいかを設定します。
どのテイストを削るか、というイメージの方が正しいかもしれません。

というのも、生豆の時点でその味のポテンシャルはほぼ決まっており、焙煎によってそれを発達させます。焙煎された時点でその豆から出るテイストは限られていて、ドリップによって基本的にそのテイストを増やすことは出来ないからです。
ただ、苦味と酸味を抑えたら香りがより引き立ったということはあります。
これは香りのテイストが増えたわけではなく、苦味と酸味を抑えることによって香りを感じやすくなったということだと考えています。

③何通りかレシピを組んで淹れてみる
あとは実際にレシピを組んで淹れてみます。
蒸らしの湯量はこのくらい、攪拌するかしないか、勢いよく注ぐのか静かに注ぐのか、何回に分けてお湯を投入するか、何分で淹れ切るか。。。などなど。

また、これは余談ですが「酸味と香り」と「苦味と甘味」はセットに近いものがあり相対的です。甘味を出したければ酸味と香りを犠牲にする、といったイメージ。
ですが、私は甘味は出したいけれど苦味は出したくないので、焙煎の時点でできる限り苦味を出さないよう心がけています。

上記のを読んでいただいたらわかる通り、このレシピが正解というものは実は存在しません。
美味しいコーヒーの淹れ方というのは、あくまでも自分がどの様な美味しさを形成するかに尽きます。

そうは言ってもここでの目的はお店の味を自宅でも再現すること。
もちろん私もコーヒー豆を買っていただいたお客様に自宅で美味しく淹れていただきたいので基本のレシピを考えています!再現性を考えてできるだけシンプルにしています。参考までにお伝えします。

ドリップ基本のレシピ

  • 抽出器具:HARIO V60

  • ペーパー:CAFECアバカコーヒーフィルター 白

  • コーヒーとお湯の割合(1:16):粉15g、お湯240g

  • 湯温:90℃

  1. 0:00-0:30 30g(計りの目盛合計)注ぎ30秒待つ

  2. 0:30-1:10 120gまで注ぎ40秒待つ

  3. 1:10-1:50  190gまで注ぎ40秒待つ

  4. 1:50-2:30 240gまで注ぎ落ち切りを待つ(上限は2:30)

(太字はお湯を注ぎ始める時間)

合計で240gのお湯を4回に分けて2:00ほどで注ぎ切ります。
ドリップをしている時は、計り(スケール)の合計グラム数と時間のみ気にかけていれば大丈夫。
抽出に入る前にペーパーにお湯をかけて湯通ししておきます。これによって紙特有の臭いを取り除きます。下に落ち切ったお湯は忘れずに捨てて、スケールのメモリもリセットして、さぁ抽出スタート!
お湯を注ぎ始めると同時にタイマーをスタートさせます。

1回目のお湯は勢いよく粉全体にお湯が行き渡るように。
2回目のお湯も比較的勢いをつけて。
3回目のお湯から少し勢いを弱めて、くぼみができた粉を平に均すようなイメージで注ぎます。
4回目のお湯は静かに中心に落とすように注ぎます。

お湯の落ち切りの時間の上限は2:30あたりを目安にしてみてください。
そのあたりから雑味が出始めることがよくあります。

使っているフィルターにはこだわりがあって、このフィルターが紙の味が比較的少ないように感じるのでずっと愛用しています。

計りとスマホ、またはコーヒー専用スケールを使い、時間を測って毎回同じ時間で注げるようにしてみましょう。


まとめ

1.コーヒを淹れる水を固定しよう。ミネラルウォーターがおすすめ。または浄水器を設置する。

2.挽き目の粒度の均一性。お店で挽いてもらう、もしくは電動グラインダーを購入しよう。

3.粉とお湯の割合を考える。お店に聞いてそれと同じ割合で。分からなければ自分の美味しいと思う割合を探してみて!1:15や1:16が比較的多い。

4.お湯の温度を90℃に。±1℃でも大きく変わることを意識しよう。

5.基本の抽出のレシピを持とう。いつも同じ味を出せるように!


さいごに

いかがだったでしょうか。
以上コーヒーの味に大きく影響する5つの違いを説明しましたが、ポイントは変数を少なくするということ。
いつも水が違ったり、いつも温度が違ったり、いつも挽き目が違ったり、淹れ方の時間が変わったりしていては、どれが正解でどれが間違っていたのかが分からず、いつまで経ってもその迷路から抜け出せなくなってしまいます。
プロはこの変数を少なくし、毎回豆が変わってもすぐに自分の表現したい味わいが出せる様にしています。


まずは自分の基本のレシピを決めてみる。
まずはそこを目指してみてください。

そして「もっと甘くしたい」、「もっと苦味を抑えたい」などのイメージを固めて、レシピを変えていく。
そんな風にしていくとドリップの楽しさはもっと広がります。
近いうちに、そのドリップを更に深掘りした記事も書いてみようと思います。

皆さんのコーヒーライフがより楽しくなりますように!


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清末圭史/BROTHERS COFFEE
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