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茶華道をしている中の人の気持ち、言葉にしてみた
無言で所作をしてても中の人は考えてる
経験のない方は知らないかもしれませんが、お点前や生け花をしている時、無言だからといって、それをしている人が何も思っていないわけではありません。むしろとても強い思いを込めてしています。茶道も華道も、ただの飲み物を作るため、花が綺麗で好きだからとやっているわけではないからです。一生懸命、お客様の心と体の平穏を祈る、まさに日本のおもてなしの心でしているからです。
華道とは自然から生き方を学べるようにするおもてなし
まず華道。例えば池坊の生花と呼ばれるいけぼな、床の間に飾って茶道でお正客様をおもてなしするのに適したお花です。床の間の窓から入った光が、最も葉の裏表のコントラストを美しく浮かび上がらせ、しかもお正客様の座る位置から一番美しく見える形を計算し尽くして選びます。そして禅の悟りの境地である円相の中に全体が収まるよう長さや幅を整えます。自然から生き方を学びお客様を元気にできるようにと、光に向かって生き生きと伸びる勢いを葉の裏表、枝先、水際で精一杯、表現しようとします。お茶事においては、お抹茶を飲む時に床の間に飾れるのは花だけです。主客はその花だけを見つめてお茶事を進めるのです。人の過去、現在、未来を暗示するよう、前ほど未来になるように順に生き生きと花を入れ、未来には蕾と伸びゆく緑の葉を飾ります。こんな感じでほんの数本の花材の中に、お客様の心と体の健康への祈りを一生懸命込め生けます。その優しい心で生けることで自分の心も穏やかになっていくのが、生けてる時の心です。
茶道とはお客様の幸せを祈るおもてなしの心の集大成
お茶会の準備のため、お花だけでもここまで心を込めるわけで、他の準備にもこれと同等以上におもてなしの心を尽くすのが茶道です。例えば茶道の所作の中に帛紗捌きという、絹の布で丁寧に拭いて茶道具を清める所作があります。これは東西南北の神様、仏様を布を折りながら祈り集めて清め、大切なお客様がこのお茶を美味しく飲み、末長く幸せになりますようにと強い祈りを込めて所作をしています。
日本の、おもてなし、ってちょっとした親切だけじゃないと思う
かつて、東京オリンピックの招致で、おもてなし、という言葉を世界中に強くアピールしたことがありました。でも今回例に挙げたような茶華道にも伝わる日本の伝統的なおもてなしの心を、自分の言葉で具体例で説明できる人は少ないかもしれない、と少し不安に感じるところもあります。インバウンド需要や日本文化への関心も高まっていることから、時々、茶華道文化の中の人として30年以上関わってきた立場から日本らしさとは何かについても書いていけたらと思っています。ちなみに私にとって旅は日本らしさ、その魅力探しの旅でもあります。茶華道で感じたこともちょっと強引ですが、私の旅日記の一部に加えていきたいと思います。