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なぜ人は『なぜ?』と思うのか


ちょっと古い話になるが、白亜紀が夜明けを迎えていた頃、地球上に始めて花が咲き、その彩りと香り、そして美しさそのものが始めて世界に広がった。

それは植物が陸上に進出してから、3億年も経った後だった。

なぜ花が出現するまでにそれほどまで時間がかかったのだろう。

天気の良い休日、僕は部屋で、恋人に贈る花を選んでいた。

恋人は一人だけど、できるだけたくさんの花を贈りたかった。

これは僕の考えだけど、花が咲くまでに3億年もかかったのは、きっとこの星がまだ恋を知らなかったからじゃないだろうか。

「ねぇ、どんな花がいいと思う?」

カタログを見ながら僕はウチの猫にアドバイスを求めた。

ウチの猫は日当たりのいい場所にいて、あくびをしてからもう一度あくびをした。

「花の何がいいの?」

ウチの猫は猫らしくそう答えた。

一説によれば、人が花に惹かれるのは、人間が生まれつき持っている「バイオ•スフィア(生命愛)」からくるんだとか。へー。

僕はもっと単純なんじゃないかと思う。

誰かを好きになる⇨心に綺麗な花が咲く⇨だからそれをその人に贈る

そんなんじゃだめかな?

ウチの猫は、その手の議論は嫌いみたいで、嘘寝を始めた。

僕が体をさすって起こすと、甘噛みされた。

「哲学者アルフレッド•ノース•ホワイトの言葉を知ってるか?」

ウチの猫がそう言った。君が知ってるんだからとても偉大な人なんだろう。ウチの猫はキバにゃんなのでアルフレッドと言う時、キバがすごく可愛い。

「その人はよく知らないよ」

「彼はこう言った、『常に単純性を追求し、そして、たえずそれを疑うべし』と」

最後にあくびを加えた。

猫はいつも単純な飼い主を疑っているのだろうか。なんか不安だ。

「恋人に花を贈りたいだけなんだけど……僕は」

「なら聞くけど、なんで猫は猫なんだ?」

「……」

ウチの猫はこんな天気の良い日に機嫌が悪くなるタイプじゃなかったんだけど……、どうしたんだろう。最近、ゴハンを変えたのが気に入らなかったのだろうか。例えば国際動物命名規約さえも疑いそうな勢いだ。

ウチの猫はそっと僕のスマホをとり、恋人に電話をかけた。

「ごめん、今日、デート行けなくなった」

僕は恋人にそう告げた。なぜかと聞かれた。

どうか僕の単純性を追求し、絶えず疑って欲しいとは言えなかった。

「特段の配慮を求める」ウチの猫は僕の目を見た。

なぜ人は、“なぜか”を知ろうとするのか?

その目は僕にそう語りかけてた。

社会がどんなに多様化したとしても、おそらく猫は猫だ。

そして少なくとも僕は

猫の疑問にだけ答えて生きてる。



                      終

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