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UEFA EURO 2024 グループB クロアチアvsイタリア 〜欲しがりすぎですかね〜
スターティングメンバー
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クロアチアは最終ラインは初戦・スペイン戦の構成に戻して、前線はアルバニア戦の後半に投入された、マリオ・パサリッチとスチッチをスタートから起用し、クラマリッチをセンターFWとしてきました。
イタリアは初戦のスペイン戦だけ見たのですが、スペイン戦ではボール保持が1-3-2-5で非保持が1-4-4-2(左WBのディマルコがWBからSBへ、左シャドーのペッレグリーニが左シャドーから左SHへ)。この試合はダルミアンを右CBとする非保持は5バックの1-5-3-2。ボール保持はそのまま形を大きくは変えず1-3-1-4-2でスタートしました。
レギュレーション的には6*4=24チーム参加で16チームが勝ち抜けということで、2戦で勝ち点1のクロアチアは勝ち点3を積んで2位に滑り込みたい、引き分けではグループ3位での通過が怪しいところが。勝ち点3のイタリアは(裏のカードがスペインvアルバニアということもあり)勝ち点1で勝ち抜けがほぼ決まるという状況でした。
試合展開
イタリアの5バック採用理由
イタリアがクロアチアにボールを持たせる展開からスタート(25分時点では保持率63:37と出ていました)。配置は↓こんな感じになります。
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ここまで2戦を見てクロアチアの特徴というか、弱点と言ってしまって差し支えないと思いますが、純正なウインガーがいない(スタメンだけでなくおそらくサブもそう)ので前線の選手が最初から中央に固まった状態でプレーが始まる。
かつてのザックジャパンの本田・香川・岡崎…が並んだ状態と似たような現象になっていて、密集している選手間でパスが成功してうまくコンビネーションが発動すると、先日のアルバニア戦の1点目のように崩せることもあるのですけど、まず最初に縦パスを受ける、ポストプレーというか潰れ役になれる選手(本田、ペトコビッチ、ブディミル…)が必要で、またクロアチアは長友や内田のような大外でリスクをとって攻撃参加するタイプのSBを置いていないとするなら、ザックジャパン以上に中央密集度は高いかもしれません。
ですのでイタリアとしては、大外はある程度捨て気味でいいので中央にボールが入らないようにするか、中央に入った時にしっかりボールホルダーにアタックできるようにしたい。イタリアの対応はこの両方を意識していたと思いますけど、どちらかというなら後者…ボールが入った時にボールホルダーへのマーキングを徹底するために、CBを1人増やして5バックとして、チャレンジしやすくした(ついでにマッチアップ的にもミスマッチが減る)のが大きいと思います。
そして前半最初の10分間に2度(左右両サイドで1度ずつ)あったのですが、クロアチアの中央での試みをイタリアがストップすると、(長友内田ほどはリスクを取らないとしても)クロアチアのSBの背後もしくは横にはSBだけではケアできないスペースが生じている状態。ここにイタリアはウイングバックがスプリントしてサイドからチャンスを作っており、最初に相手ゴールに迫ったのはイタリアでした。
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ここは、クロアチアはブロゾビッチが下がらないと最終ラインが常時2枚みたいな状態でアンバランスなのもあるし、インサイドハーフもウイングも中央で(かつ足元でボールを受けて)プレーするのが得意な選手が揃っているというのもあって、クロアチアのSBはバランスの取り方が非常に難しい役割だと思うのですが、イタリアはそこを把握していて構造的に突いてくるのは流石といったところでしょうか。
加速する展開で出口を見つけられるか
20分前後くらいから互いにpressingにより積極的になって、ボールを保持できる時間やスペースが減り、ややスピードアップ。
イタリアのハイプレスは↓の配置で行われ、GKリバコビッチとしては、受け手のスペースを考えればSB、リスク回避なら前線の1v1の3人に蹴るか…といった厳しい選択でしたが、どこに蹴ってもイタリアのマンマークでの対応が強烈で、クロアチアとしては出口に苦労します。
また我々よく”build-upの出口”と言いますけど、こうしたマンツーマンでかつ守備側の選手に穴がない状態だと、受け手がクリーンにボールをコントロールできるかというよりも焦点はむしろ、受け手が潰されるのは前提でセカンドボールをどうマネジメントするか、という点になるでしょう。
この点でもクロアチアの方がややクリーンすぎるというか、受け手が1人で解決できないと、セカンドボールを泥臭く拾ったり、すぐに切り替えてカウンタープレスを仕掛けるみたいな要素に欠けていて、イタリアの方がここでの切り替えというかセカンドボールを拾って相手のプレーを途切れさせる能力も上だな、と感じます。
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26分にイタリアはCKからバストーニがフリーでヘッド。至近距離でしたがリバコビッチがビッグセーブでクロアチアを救います。
突破口を探る
ただイタリアも常にpressingを仕掛けていけるわけでもないし、オープンな展開にしたいわけでもないので状況をみてリトリートに切り替える。そうするとクロアチアは30分ころくらいから少しずつボールの動かし方を変えていきます。
それまではイタリアのブロックの脇というか、外側でしかボールを動かせていなかったので、イタリアの中央のDFに対して勝負することが殆どできていなかったのですが、
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30分前後からはクラマリッチがイタリアのDFとMFの間に顔を出して(パサリッチとのポジション変更)、中央からの縦パスだったり、グヴァルディオルからの横パスだったりを中継してイタリアの中央でボールタッチできるようになると、それまで中央を閉じて外誘導で守れていたイタリアに対し徐々にゴール前でのプレーが増えていきます。
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「ちょっとオープン」の価値
後半頭からクロアチアはマリオ・パサリッチ→ブディミルで、クラマリッチがウイングに。イタリアはペッレグリーニ→フラッテージで、バレッラが左に回ります。
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後半頭のクロアチアは、イタリアのFWとMFの間を斜めに侵入を図っていたと思います。この際、イタリア的にはボールを運ぶ能力的にコバチッチが一番厄介な選手なのか、フラッテージはコバチッチに常に近い距離を維持して簡単に前を向けないようにしていましたが、モドリッチはもっと外側からスタートするのもあって、バレッラはここはある程度ボールを持たせてもOK、としていました。
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50分すぎにクロアチアはハイプレス成功でボール回収。イタリアがブロックを整える前にブロゾビッチのオーバーラップからのクロスで、最後はフラッテージのハンドを誘ってPK。
モドリッチの右下へのシュートは、ドンナルンマのスーパーセーブが炸裂しますが、続くプレーでまだイタリアが整う前にスチッチの(おそらくこの試合初めての)右からの仕掛け→流行りの?インスイングクロス。これもブディミルのボレーをドンナルンマが止めますが、モドリッチが押し込んで先制に成功します。
クロアチアがこのウイングのカットインからのインスイングクロスというパターンをどう評価しているか、スチッチはイタリア相手にこのプレーをしないのかできないのかはわからないのですけど、PKの前後という特殊なシチュエーションでもあって、この試合初めてこうしたプレーを繰り出せるくらいのオープンさになったのは大きかったと思います。
サラブレッド登場
スコアが動いてイタリアは57分にディマルコ→キエーザ。ダルミアンを左に移して、ディロレンツォをCB右に。普通に考えたらディロレンツォが後方支援しつつキエーザの仕掛けで打開して、左はダルミアンがバランスを取る。先制点のスチッチのアシストのところのディマルコの対応が気になった、とかなのかもしれません。スチッチは前半の早い時間にもカットインから枠内シュートでゴールを脅かしおり、そこも意識はしたのでしょうか。
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クロアチアもその辺はさすがにわかっていて、ダルミアンは放置でキエーザvグバルディオルのマッチアップが一気に焦点になります。
グバルディオル1枚だと制限はかけてもクロスには持ち込めてしまうキエーザ。クロスを手前でカットできればいいのですけど、大外に流れると放置していたダルミアンが一気に脅威になるのが66分の決定機でした。
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着々と圧力を強めるイタリア
ダルミアンのビッグチャンスを見て、70分にクロアチアはスチッチ→ペリシッチでクラマリッチを右に。ペリシッチはキエーザのカットイン警戒で、クラマリッチは大外に下がってダルミアンが突っ込むスペースをケアします。
イタリアは75分にラスパドーリ→スカマッカで"9番"が並ぶ構成に。クロアチアは2CBでスカマッカとレテギをマンツーマンっぽく対応し、右のハーフスペースないしはSB-CB間のチャネルに入ってくるフラッテージはブロゾビッチが見ますが、最終ラインがそれぞれマーク対象の選手がはっきりしたことで、ここもマンツーマンっぽ対応を迫られます(あまり動かない選手へマンツーマンは割と楽というかズレたりはしにくいけど、チャネルに走る選手を掴まえるのは大変そうという意味で)。
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時間を使い始めるクロアチアは80分にモドリッチ→マイェル(そのまま右インサイドハーフへ)。イタリアは83分にダルミアン→ザッカーニ、ジョルジーニョ→ファジョーリでカードを使い切ります。
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オープンにならないとは言ってない
時間を使い始めたクロアチア、とは書きましたけど、構図的には最終ラインはマンツーマン、前線守備も捨てない、交代策は前の選手を入れる、で、結果論だけどあんまりゲームを寝かせる感じにはなっていなかったクロアチア。ラスト10分もどちらかというと、チャンスがあれば前に飛び出して2点目を取りに行くというスタンスでした。
かといって撤退時もめちゃくちゃ強度があるというか、スペースを消して守れるという感じでもなくて、85分にはファジョーリの縦パス→スカマッカのポストプレーで中央を割られて最後はキエーザのクロスで決定機でした。
最後のカードはクラマリッチ→ユラノビッチで、一応右ウイングにSBの選手を入れたという感じなんでしょうけど実際は左のペリシッチともども最終ラインに下がって6バックに。1-6-3-1か1-6-2-2みたいな感じで中央がスカスカになって、なんというか極端だな…と思って見ていましたが、8分の長いATはイタリアも次第に放り込むしかなくなります。逃げ切りかな…というところでAT7分を回って、CBカラフィオーリのconducciónから目立った仕事がなかったザッカーニへ。簡単ではない中で最高のシュートでしたが、ユラノビッチのポジショニングというか役割はそれでいいのかは気になるところでした。
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— AB (@british_yakan) June 25, 2024
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— AB (@british_yakan) June 25, 2024
雑感
一応クロアチアはまだGS突破の可能性が残っているようですが、3試合+親善試合ポルトガル戦の総括としては、まず「べつに試合巧者でもなんでもない…」(ATの失点関係なく)。
ボールをクリーンに運べる、ブロックを作って守れる、プレッシングで前進を阻害できる…といった部分が整っていると、ゴールは水物としてもベースは安定すると思うんですけど、正直なところクロアチアはこれらがそこまで備わっているわけでもないし、CBが運べない時に頼るのがモドリッチ(もう今はバロンドーラーではないし”モドリッチ縛り”の弊害を感じるようになっている)というのも厳しいところかな、と思いました。
あとは繰り返しですが、今大会を見ていて思うのはヨーロッパのトップチームだと、CBやGKのボールを運んだり配球したり、バックパスを処理したりする能力がコモディティ化、というには厳しいほど高次元で求められていますが、加えてウイングとインサイドハーフの高次元でのコモディティ化みたいなのも顕著になっている。
ウイング(ワイドFW)の2人引きつけるドリブル、カットインからの空いたら小さいモーションでのインスイングクロス、ファー詰め、プレスバック
— AB (@british_yakan) June 20, 2024
インサイドハーフのチャネルラン繰り返し、前空いたら枠内にミドルシュート、build-upにおけるアンカーとのタスク
チェンジによる1列目突破
この辺は標準装備
人口500万人くらいの国にそこまで期待するのもおかしいと思うのですけど、クロアチアの場合はタレントがちょっと偏っていて、どうしてもUEFAのスタンダードというか流行りのサッカーに寄せるよりも、タレントを活かしていく、ややクラシカルな戦い方になるのは仕方ないでしょうか。
逆にイタリアは、やはりキエーザがキーマンで(ザッカーニはどんな感じなのか注目したいです)、オープンにせずゲームをコントロールしつつ相手のDFを崩すには、彼のようなタレントの必要性は強く感じます。そこがエムバペのフランスは、やはりちょっとUEFAの流行りで考えるとイレギュラー、異質というか、あえてオープンにして撃ち合う展開の方が得意なのでしょう。イングランドはイングランドです。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。