「忘却の街」――捨てられた人形たちの記憶と再生を描く、感動のストップモーション・ファンタジー

忘却の街 ~人形たちの物語~

あらすじ(ネタバレあり)

捨てられた人形が最後に行き着く場所がある――「忘却の街」と呼ばれる巨大なごみ集積所だ。この街に流れ着いた人形たちは、すべての記憶を失う呪いを受ける。持ち主に捨てられた悲しみや怒りはもちろん、かつて一緒に遊んだ温かい記憶さえも霧散してしまう。人形たちは何のために作られたのかもわからないまま、廃材の山で日々を過ごしていた。

そんな中、街に迷い込んだ新しい人形、ティオは他の人形たちと違い、記憶を失っていなかった。彼は幼い頃の持ち主と遊んだ日々、捨てられた瞬間の悲しみ、そのすべてを覚えていた。街の住人である古びた老人形グランは、ティオに「ここでは記憶を失うことが救いだ」と諭すが、ティオは納得できない。「記憶がなくなるなんて、自分が自分でなくなることと同じだ」と反発する。

街の中心には巨大なごみ山がそびえ立ち、その頂上には不思議な光を放つ結晶が埋もれているという。グランは「その結晶が街の呪いの源だ」と語り、ティオはそれを確かめるべくごみ山の頂上を目指す決意をする。道中、ティオはさまざまな人形と出会う。記憶を失ったことで穏やかな日々を送る者もいれば、記憶を失ったことに苦しむ者もいた。

ティオは途中でリリーという美しいドールと出会う。リリーはかつて貴族の娘に大切にされていたが、捨てられた記憶だけが薄ぼんやりと残っており、失われた過去を取り戻したいと願っていた。ティオとリリーは協力してごみ山を登り始める。途中、時計の部品や壊れた機械に襲われる危険もあったが、二人は助け合いながら頂上を目指す。

ごみ山の頂上にたどり着いた二人は、そこに結晶が埋まっているのを見つける。結晶に触れると、街が生まれた理由とその真実が明らかになる。この街は、持ち主に捨てられた人形たちの悲しみを和らげるために作られた「避難所」だった。しかしその代償として、持ち主と過ごした大切な記憶まで消えてしまう呪いがかけられていた。

ティオは結晶の力を使えば呪いを解くことができると知るが、それは人形たちが捨てられた痛みをすべて思い出すことを意味していた。リリーは「それでも記憶を取り戻したい」と願い、ティオも彼女の決意に賛同する。二人は結晶を解放し、街全体を包む光を放つ。

記憶を取り戻した人形たちは、再び持ち主と遊んだ幸せな日々を思い出し、涙を流す者もいれば、静かに感謝の言葉をつぶやく者もいた。そして彼らは、それぞれの道を選ぶことになる。ティオとリリーは、ごみ山を出て人間にもう一度遊んでもらう旅に出ることを決意。一方、グランは持ち主との記憶を心にしまい、静かに意識を閉じることを選んだ。

街は「忘却の街」ではなくなり、人形たちがそれぞれの未来に向かう新たな場所へと生まれ変わったのだった。

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