時空を超えて‥‥小説(三日月3/7)
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「やっぱり行きなさるか、鎌斬村に」
作田は驚いた。先ほど東京駅で見かけた老婆がまたもや足元に座り込んでいた。
いつの間に――? 田舎がこっちなのか?
老婆の風貌は、お世辞にも身なりがいいとは言い難いが、不思議と厭な臭いはしない。ただ何となく薄気味悪く、作田は相手にしないでいた。
間もなくして村営バスが金属を擦るような音を立て近づいて来た。その時にはすでに老婆の姿はどこにも無かった。
バスに乗り込んだ作田は、少ない乗客の会話から村が日照り続きだということを知った。3ヶ月以上雨が降らず、村ではかなり深刻な様子だった。死者が出るかも知れないという言葉も微かに耳に届いた。
後部座席で20分ばかり揺られ、車内案内により関矢下(かやもと)バス停で下車した。
都会では感じることのできない風を感じ、360度自然に包まれ、風景画の中に迷い込んだ気分になった。足元に葡萄の実が幾つか潰れて落ちていた。これも都会では見ない光景だ。
遠くに視線を伸ばすと、今にも風で飛ばされそうな矢印の貼紙が見えた。それは手招きするように震えていた。近くまで歩み寄って、曲がり角から覗くと目的の宿はすぐそこだった。
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