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水槽の彼女〜カバー小説【6】|#しめじ様

しめじ様のnoteからインスパイアさせて頂いたカバー小説です。

↓ ↓ ↓



🌿これまでの話🌿



《登場人物》

・僕…34歳。ひとり暮らし

・彼女…ハイティーン。崩壊星collapserの瞳をしている。異国のpapaから離れたがっている。

・異国のpapa…世界的な画家。

・りら…彼女の齢の離れた妹。「彼女」を母親だと思っている。


―――

《5話 ハイライトシーン》


裸に白いシーツを巻き付けながら、脚を組んで椅子に座っていたとき、mamaが病院から帰ってきた。


mamaはりらを抱いたまま、悲鳴を上げた。


そして、狂ったような奇声で何か叫びながら、りらを置いて家から飛び出した。


―――待って、これは、と言いたかったけれど、自分の姿も裸だったし、すぐに追いついて行けなかった。


mamaは・・・飛び出したときに、通りかかった車に衝突して即死した。



「だから・・・私は、疫病神なの。」


「水槽の彼女〜カバー小説【5】」




【6】


僕の家に着いた。何ということはない、マンションの4階。

玄関のカギをがちゃがちゃと開ける。
1LDKにしては広いかもしれない。あまり、散らかしてはいない積もりだった。


彼女は、グレイのスリッパを履いておずおずと中に入り、部屋をあちこち物珍しそうに見回していた。


「―――買った服とかは、このあたりに置いておく?」
クローゼットの前のスペースを指差した。


彼女はそちらを見ず、壁一面にある本棚を、背伸びするように上の段から眺めていた。


「本が・・・沢山あるのね。DVDも」

それは、コンクリート打ちっ放しの壁面に、僕が設置したものだった。


「まあね・・・大抵は、仕事の資料だよ」

「何の仕事してるの?」

「インテリア・コーディネーター」

「ふうん・・・だから、ライトなんかも凝ってるのね」

彼女は、吊るされているランプの方を振り返って見上げた。



「・・・ま、お茶でも淹れるよ。君は、珈琲は飲める?紅茶が無いんだ。
飲めなきゃ何か買ってくる」

「飲むわ。ミルクを入れれば」

「牛乳なら、多分ある・・・消費期限、いけるかな?」

冷蔵庫を開ける。殆ど飲み物ばかりだ。缶ビール、牛乳、つまみが何品か、バター。あとは、実家から送られてきたタッパーウエア。

T-falティファールでお湯を沸かし、牛乳と、食器棚にしまっていたドリップコーヒーの袋をふたつ出して、奥にあるマグカップも出した。

(―――このマグカップをふたつ出すのも、久し振りだな)

前の彼女にプレゼントされたものだ。


シンプルなものが好きでしょ、と言われ、インクブルーの地に細いペンで引いたような文字で、
balance, “と描いてあるのをもらったのだった。




黒い麻の布張りのソファで、並んで座り、珈琲を飲む。


沈黙の時間。彼女はあまり会話をしたがるタイプではなさそうだ。


ウッドテーブルに、マグカップを置いた。


「・・・君さ。携帯って、持って来てないよね?」

「ええ・・・。元々、持ってないの」

「持ってない?」不審そうに訊くと、

「papaとりあしか、連絡する相手が無いから。papaは家に居るし」

「・・学校は?高校の連絡とか、有るんじゃないの」

その時、彼女の唇は一瞬、演奏の終わりのように静かに引き結ばれた。

「―――私、中退したの。いじめに遭って・・・」



いじめか・・・。

彼女の瞳の闇が段々とあらわになってくる。深く聞いてあげたい気持ちはあったが、一旦この話を切って、珈琲を飲み終えた。そして、家にある葉書を探し始めた。

本棚のファイルケースに、何枚かあった筈だ。


探しながら、

「―――取り敢えずさ。飛び出して来たわけだから、このままじゃまずいよ。

携帯が無いならGPSで割り出されはしないだろうけど、捜索願いを出される前に、安否について伝えたほうが・・・有った」

絵葉書数枚と、無地の葉書が1枚出てきた。無地のほうを彼女に渡す。

「これでpapaにまず謝って、君が無事なことを書いておこう。

そうだな・・・

住み込みバイトを見つけた、とか、そんな感じでいいんじゃないかな?

君の妹の世話は誰がするの?」

「りらは、日中は保育園に行っているわ」

「そうか。・・・じゃ、書いてみて。

これ、ボールペン。

書き終わったら、出来るだけ遠くの大きな街へ出て、投函しよう。

そうしたら、此処まで中々たどり着けない筈だから・・・」


彼女の目が緊張で少し見開かれた。
黒い瞳の中の崩壊星は、もう何処かへ消え、光が宿り始めていた。


【continue】




▶Que Song

Virtual Castle/Dios



今日は此処まで。お付き合い頂き、誠に有難うございます。



しめじ様、ご査収よろしくお願いいたします😌🥀



🌟Iam a little noter.🌟



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