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気難しい作家先生〜前々日譚・クリスマスプレゼント|#短篇小説
これまでの【気難しい作家先生】シリーズは、すべて以下のnoteに収録されております。
よろしければご高覧下さい!!
↓ ↓ ↓
深谷浩介…作家志望の高校生。
飯田李里佳…浩介の同級生。
《前回のお話》
当時、授業が終わると、李里佳に誘われ、帰路を共にする習慣が出来た。
浩介も李里佳も、帰宅部だった。
浩介は部活動に一切興味は無かったのだが、彼女は
「店を手伝わないといけないから・・・」
帰宅部を選んだと言っていた。
「―――うちね、小料理店をしてるの。
飲むときの、アテを出す感じね」
「・・・・・」
李里佳は自分のことをよく話したが、浩介はほとんど口をきかなかった。黙って、学校では言わないような彼女の色々な話を聞いていた。
「ママは、お客さんと再婚したの。
・・・びっくりしたわ。いつそんな話になったかと思って。
お店でふたりを見てたけど、全然分からなかった」
結婚しても変わらず(その客は初婚だったらしい)、勤め帰りに店で飲み食いして過ごしているから、客のままで義理の父親になった気がしない、と李里佳は言った。
浩介は何と返して良いか、分からなかった。
・希望の井戸」
![](https://assets.st-note.com/img/1735023620-HJ1ao7TP0nhgrtXDWujqeKsE.png)
気難しい作家先生〜前々日譚
・クリスマスプレゼント
終礼後。
李里佳は浩介に、
「プレゼントを探すのに付き合って」
と頼んできた。
母親と、義理の父になった男に、結婚祝いも兼ねてクリスマスプレゼントを渡すというのだ。
「深谷くん、センス良さそうだから・・・」
李里佳は浩介の机の横に立って言う。
机の中から教科書やノートを引っ張り出しながら、浩介は李里佳を見上げた。
「あ、何か忙しいかな?塾とか・・・」
「塾へは、行ってないよ」
ボストンバッグに教科書などをてきぱきと仕舞っていく。バッグの収納の仕方にも、彼なりの法則があった。
李里佳は、ぱっと明るい顔になって、
「―――じゃあ、週末も空いてるよね?
一緒に行ってくれる?」
手のひらを、顔の前で拝むように言った。
「・・・いいよ」
内心、李里佳とふたりで会うのを嬉しく思いながら、つとめて平静な声で浩介は言った。
![](https://assets.st-note.com/img/1735026419-E0S9cvtAnCuhjgHzL8mPIpWb.jpg?width=1200)
その週末。浩介と李里佳はデパートであれこれ品物を見ていた。
「お母さんのは何となく思いつくんだけど、義理のお父さんのは、浮かばないんだよね・・・
ふたりで一つが良いのか、
別々に選んだら良いのか・・・」
日用品・インテリアのフロアを行きつ戻りつして物色していた李里佳は、ほとほと悩んでいる様子だった。
「お花だと、残らないしね・・・」
浩介は、デパートで初めて口をきいた。
「・・・その、義理のお父さんは、どんな仕事をしているの?」
李里佳はきょとんとした面持ちで浩介を見る。
「ん・・・よく分からない。
何かの営業をしてるって」
「・・・・・」
あまり、義理の父親とはコミュニケーションを取っていない李里佳の口ぶりだった。李里佳は浩介から目線を外した。
「別々が良いか!
結婚祝いだと大げさだから、普通のクリスマスプレゼントにするわ。
マフラーとか、どうかな?」
ね、と肯定してもらいたげに、浩介に首を傾げる。
(・・・来た意味は、ほとんど無さそうだな・・・)
いつも、李里佳に振り回される浩介だったが、それは珍しく嫌ではなかった。
✼ ✼ ✼
結局、李里佳は母親にスカーフ、義理の父親にマフラーを選んだ。
包装されたプレゼントをデパートの紙袋に入れて、クリスマスウィークの街並みをふたりで歩いた。
皆、グレーや黒のコートを着ていて、カラフルなウィンドウと対照的な色彩だった。
「ねぇ、深谷くん!
私、あれに乗ってみたいの」
李里佳の指差した先は、ビルの屋上の真赤な観覧車だった。
「・・・今なら、夕方になって灯りがつき始めて、綺麗じゃない?」
浩介は、観覧車のみならず、遊園地自体体験した記憶がなかった。両親の指向性からして、嬌声を上げて遊ぶようなものとは無縁だった。
「観覧車・・・」
「そう。ひとりで乗るのも、つまらないでしょう?せっかくだから、乗りたいな」
李里佳はそう言ってにっこり微笑んだ。彼女の微笑みには、逆らうことが出来ない。
その真赤な観覧車が、ファースト・キスの場所になるとは・・・浩介にはまだ、思いも寄らぬことだった―――。
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▶Que Song
愛について/スガシカオ
【continue】
![](https://assets.st-note.com/img/1735025988-QT0wfsldmNSLVvZqGU2jMubB.png)
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