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青い太陽〜たったひとりの観客〈リライト版〉|#創作題ショートショート
XのRIUM創作題より、【太陽】でショートショートを綴ってみました。
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🖼️ #創作題
— 創作題 (@sosakudai) February 13, 2025
「太陽」
お題から自由に創作してください
詩、短歌、自由律、短編の物語、大喜利、絵、音楽など形式は自由 [画像加工OK]#ことばの断片 #創作太陽 pic.twitter.com/lXGb2eMska
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青い太陽
〜たったひとりの観客
太陽は季節を先取りして、春の明るさですべてを照らす。
まだ居残っている冬の冷気は、時折頁をめくり、暖気を気まぐれにのぞかせる。
・・・そんな中、私は片想いの久里山くんに、一生懸命念を送っていた。
(こっち向け―――こっち向け、こっち向け!)
勿論そんなことでテレパシーが届く訳もない。
久里山くんは窓辺に腰かけて、その周りをぐるっと人が囲んでいた。彼の定位置だった。彼は決まって逆光に包まれて、ちょっと際立つくらい歯並びの良い白い歯で、友だちと爽やかに笑っていた。
誰にでも気さくで、人気者の久里山くん。でも多分久里山くんは、私のことを意識してない。彼の脳は「男友だち」と「部活動」、「授業」だけで埋め尽くされているに違いない。
(久里山くんに声をかけられたい。
ちょっとでいいから、私だけを見て欲しい)
そんなふうに願うのも、もうすぐ卒業式が迫っているからだ。彼はアーチェリーの全国大会で良い成績を残し、学校推薦をもらっていた。東京の大学に行く、と人伝てに聞いた。
一方私は何とか進路が決まったものの、膨らんだ想いを片付けきれずにいた。部屋のカレンダーにバツを付けるたび、その日何も出来なかった事実に溜息をつくのだった。
このところ、放課後の友だちとの付き合いも放りっぱなしだ。いつも何人かと、ショッピングモールやデパコスを冷やかしては、スターバックスで最新作のフラペチーノやラテを楽しんでいたのに。
「ゆりえ、スタバで桜とわらびもちのメニューが始まってるらしいよ。
帰り行かない?」
すずが言うけど、気乗りがせず、
「やめとくわ。ちょっと疲れてるし」
「最近どうしたの?
もしや〜、ダイエットしてるとか?」
「え、別に・・・そんな訳じゃないよ。金欠とか、色々あるんだよ」
ぱたぱたと帰り支度をし、他の子たちと目配せをするすずを振り切って、教室を後にした。きっとあの子たちは私が【病んでる】と思ってる。
・・・たしかに私はそのとき、ちょっと恋に病んでいたかも知れない。
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そうこうしているうち、卒業式当日になってしまった。
体育館にはパイプ椅子が、2年生により前もって並べられていた。式次第の流れに沿って、滞りなく段取りが進められていった。
階段状になった台に乗って、私たち卒業生は、涙を流したり嗚咽したり、顔を紅潮させたりした。
―――私は、泣けなかった。久里山くんに告白するまでは、高校生活に区切りをつけられない気がしていた。
卒業式のあと。何人かグループで固まって、写真を撮る人たちがいた。花束を持った先生に、声をかける人たちもいた。その他、親と一緒にいる人たちに紛れて、久里山くんが集団から離れていくのが見えた。
(久里山くん・・・誰かと待ち合わせているのかな?)
私は慌てて側にいる友だちに断り、彼の後を追いかけた。
(今しかない。告白、するんだったら・・・)
彼は、第2グラウンドの一角にある、アーチェリー場へ向かっていた。
(何を・・・)
場内にはさすがに入れず、外から目立たぬように、彼の様子をうかがった。フェンスが張られているから、持ち物や制服を引っ掛けないように注意した。
射的スペースに現れた彼は、鋭い目つきに変わった。教室では見せない表情だった。
そして、的に向かって【エア アーチェリー】のポーズをとった。
―――ターン・・・
音が聴こえてきそうだった。架空で射ち終わってから、次に構えなおす動きを、一つひとつ丁寧に再現していた。
(本当に、競技が好きなんだな・・・)
3月の太陽は、午後になり、早くも少し傾き始めていた。
(笑っている顔しか知らなかった。
久里山くんが何を大切にしているかも・・・)
制服の背中にじんわりと熱を感じながら、私はたったひとりの観客、
ーーー【久里山くんの青春】、という短篇映画の、観客になっていた。
【fin】
▶Que Song
制服/上白石萌音
#ことばの断片 #創作太陽
RIUM様、拙作ですがご査収よろしくお願いいたします。
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🌟Iam a little noter.🌟
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