My Funny Valentine,Stay〈リライト版〉｜＃ショートショート
#ことばの断片の創作題 、「バレンタイン」より、ショートショートを描いてみました。
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🖼️ #創作題
— 𝙍𝙄𝙐𝙈（毎日お題） (@R__l__U__M) February 13, 2025
「バレンタイン」
[画像は自由に加工してください]
お題から自由に創作してください
詩、短歌、自由律、短編の物語、大喜利、絵、音楽など形式は自由#ことばの断片 #創作バレンタイン pic.twitter.com/MqEuXVwsBJ
My Funny Valentine,Stay
「―――さあ、やってくれ」
丸テーブルの向こう、赤い天鵞絨張りのチェアに座ったオーナーが、声をかけてきた。
退屈な欠伸を噛み殺す顔。聴く気がほとんどないのは、一目瞭然。
あたしは、使い込まれたピアノの黒鍵と白鍵の弦が、光沢のある蓋の下で小さなハンマーに叩かれてゆくのを、横顔で聴いた。・・・始めは控えめに、そして緩やかに。
何度も、何度も繰り返し馴染んだメロディー。ブルースのピアノは、幼い頃のおとぎ話みたいだ。彼はよれたハンチング帽を被り、やや日に焼けた顔で、身体を揺らしながら演奏する。
ライトの中に立ってる、とあたしは想像した。
伸びた前髪をくしゃっとかき上げ、スタンドマイクを引き寄せ、唇をひらいた。
My funny valentine
Sweet comic valentine
You make me smile with my heart・・・
声はするすると喉の奥から―――旗を出す手品のように―――自分の意識を離れて、自然に流れた。声はうねり、その場の大気は動き出し、震えていた。
あたしの歌はいつだってそう、ブルースと初めてセッションしたとき、彼は目を丸くして言ったっけ。
「お嬢ちゃん・・・今までどこに隠れてたんだい？」って。
あたしの声は誰とも似てないらしい・・・確かに、そうかもしれない。何故ってあたしは、子どもの頃からずっと家で長唄を聴いていたから。
三味線なんかの和楽器のリードをもとに、長唄は呼吸を合わせて、または丁々発止の勢いで、リズムを刻む。
ーーー「歌う」ではなく、浄瑠璃のような「語り」。
そんな上方長唄を親が教えていたせいで、あたしの身体の芯まで、音のイメージが染み付いてしまった。
はたちのとき、エラ・フィッツジェラルドを聴いて、初めて【自分が】歌いたい音楽を見付けたと思った。
彼女は、歌に感情を乗せて「語って」いた。ファルセットのような高音と低音を織り交ぜて、楽器みたいなボーカルで、心を掻きむしるように歌った・・・
あれから、何年になるだろう？ブルースと組んで、あちこちのライブハウスやレストランを回って歌ってきた。
「もう、俺みたいな見栄えのしないヨボヨボと組むのは辞めて、若くてイキのいいヤツを選びな。
お前なら、どんな大きいステージでも立てるだろう」
ブルースは言うけど、あたしはそんなつもりはさらさらない。鼻がつん、とするような、ブルースの懐かしいピアノの音だから、あたしは安心して歌えるんだ。
そう、今の歌のように・・・
おどけた私の バレンタイン
優しくて愉快な人、バレンタイン
あなたはいつも、心から笑わせてくれるわ
見た目は、写真向きに格好良くないけれど
でも、お気に入りの芸術作品なの
ギリシャ彫刻のような体つきではないし
少し口ごもるときもあって
もっとお洒落に出来ないかしら、と
思っちゃう
でも、髪の毛一筋も変えないで
私を想ってくれるなら、
そのままでいて、そのまま・・・
大好きなバレンタイン
あなたがいてくれれば、
毎日がバレンタインデーだから
〜BRILLIANT_S意訳
・・・・・
オーナーは、曲が終わると、あたしたちを真っ直ぐ見つめた。高価そうな、誂えみたいなスーツを着た背筋が、心なしか伸びているようだった。彼は慣れた感じで拍手をした。
「―――いいね。来週から来てくれ。契約書にサインしよう」
あたしは緩いオフタートルニットの腰あたりを整えて、ブルースにこっそりウインクした。
細かいチェックのネルシャツにジーンズをはいたブルースは、ピアノの前で巫山戯る顔をし、肩をちょっとすくめてみせた。
▶Que Song
My Funny Valentine／Chet Baker
#創作題 ＃ことばの断片＃創作バレンタイン
拙作ですが、ご査収よろしくお願いいたします。
【ｆiｎ】
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🌟Ｉam a little noter.🌟
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