二十億光年の記憶冷凍|#たらはかに様
たらはかに様のnoteを拝読。
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このお題「記憶冷凍」から考え始めたのですが、またもやショートショートに成りませんでした。
インスパイアされたものとして、投稿させて頂きます🙇
二十億光年の記憶冷凍
沙良は20年振りに、高校の同窓会に出席することにした。
それまでにも、卒業後5年、10年と大きな学年単位の同窓会はあったし、クラス単位ではもっと頻繁に開かれていたように思う。
何故、今回まで級友たちと縁遠くしていたかと言うと、娘が生まれて子育て真っ最中だったのと、離婚するために正直同窓会どころではなかったからなのだった。
時は遡って、4年前。
離婚の正式決定に向けての調停中は、もう心身ともにぼろぼろだった。離婚調停というのは、相手方と顔を合わせることは無いが、自分の知らない場で調停委員にどんな要求を出されているか分からない。
沙良にとって最も恐れるのは、未だ幼い娘の親権を主張されることだった。相手方(離婚が成立していないので、そう呼ぶしかなかった)の自分本位な性質上、その可能性は少なかったが、0ではなかった。
逆に親権を振りかざして、有利な条件を引き出そうとすることは考えられた・・・過去、幾度、そのような相手方の「はったり」に悩まされてきたことか。
(―――これは、相手の行状を洗いざらい調停で判ってもらうしかない)
沙良は追い詰められた気持ちで、一冊の本に出来るほど、どんな酷い仕打ちを受けたかパソコンで打ちに打ち続けた。仕上がった書面の束を2部、調停委員に配布するべく用意した。
結果、それが功を奏したのか、相手方の要求が収まってきて、3回ほど調停を開いたあと結審し、無事離婚届に判を捺くところまでに至った。
(―――これで、ようやくまたスタートが切れる・・・)
家庭裁判所を出て仰いだ空は、青く澄み渡っていた。
両親とともに自分を待っている娘の顔を、早く見たいと思った。
それから、実家で沙良と娘とが生活を固める日々は本格的になった。
まず、単発で入りやすいパートの仕事で数年働き、娘の生活リズムが落ち着いたのを見計らって、土日に休めるフルタイムの仕事を探した。
フルタイムの仕事を探す時は、「もし一生再婚しなくても、キャリアアップして娘を養える職務」であることに重点を置いていた。
幸い、求人が出ていた会社にいくつか面接に赴いたあと、その希望に近い職場に巡りあって採用された。
(運が向いてきたのかも・・・)
沙良は、心密かに喜んだ。
およそ15年振りの同窓会の連絡がLINEで届いたのは、娘の保育園へお迎えに向かっているバスの中だった。
仲が良かった級友たちの顔が何人か浮かんだ。
とりわけ鮮やかに甦ってきたのは、沙良が初めて交際した斎藤俊彦の顔だった。
(行ってみようかな・・・)
こんな気持ちのゆとりが出来るのは何年ぶりだろう。
(今なら、やつれていない顔や姿で、皆と再会出来る・・・)
沙良は、出欠の連絡をするリンク先のアドレスが示されているLINEの箇所を、そっと指で押した。
【continue】
▶Que Song
Darkest Before Dawn/三浦大知
・・・一旦締めようと考えましたが、やはり続きを書くことにします。
短篇ばかり増やしておりますが、何とかすべて回収出来るように頑張ります!!
🌟I am a little noter.🌟
🤍