数理モデルとの出会い

人生において強烈な出会い・体験をするときによく、「稲妻が走る」と言う表現をすることがありますが、自分の場合は大学院での研究中に遭遇しました。

DIY程度の設計の太陽熱温水器を、本やネットを読んで調べ、コーナンで材料を集め、真夏の研究室、廊下でせっせと組み立てた。それは正に夏休みの自由研究のよう。

その模型でまずはどのくらいの温水が取得できるか実測をする。貯水槽はポリバケツに断熱材で覆っただけのもの、たしか30Lくらいの容量。温水器は黒色のスプレー塗料を塗布したフツーのホースをトグロ巻きにして、断熱材の上におき、さらにアクリル板で覆ったもの。両者をつなげるホースも簡単に断熱材を巻き、住宅地の庭にあるような池の水を汲み上げるようなポンプ、と誰でも簡単に手に入る材料だけで作った「簡易型温水器」である。

真夏の日中5〜6時間、水道水を循環させて温めると50°前後の温水が簡単に得られる。

そしてその装置の実測データを元に数理モデルを組み立て、実測した夏のひと時以外の年間で使用するとどのくらいの効率で温水が得られるのか、を求めることにした。

私は文系で所属大学を受験したため、また高校では物理Ⅰ・B、数学はⅡ・A留まり、難解な数式たちを前に学ぶことが嫌になって学年の早々の時期に文系を選択した。なんのためにこんな複雑な計算式をみて、解かねばならないのだろう?人生でいったいどれだけ役立つのだろうか?

数理モデル、ということで数学のⅢ・C分野、特に微分積分を扱う必要がわかったときには脳が汗をかく感覚を存分に味わった。

実測で得られた数値とグラフと、そして苦労して設計した数値モデルが履き出した結果がが描いたグラフと一致した時、「稲妻」が心と身体を轟かせた。

「数学や物理は、自然の仕組みを見つめるためにあったのだと」

こういった記述はたぶん当時の教科書のまえがきに載っていたのかもしれない。でもテストの点数でその実力を比較し、競争し、大学入学のための手段でしかないと悟った当時の私にとっては、なんてもったいない時期を過ごしてしまったのだろう、と感動と同時に激しい後悔も味わった。

この想いをもっと広げるにはどうしたらよいのだろう?当時の教授からは、まあまずは就職先の仕事にフォーカスしてじっくり考えなさい、といった趣旨の言葉をいただいて、その情熱が水面化で静かに種火として燃え続けていて、ある時に急浮上して燃え盛り、すぐにまたの火の勢いに戻り、気づいたら18年近くが過ぎてしまった。

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