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スマブラステージ【AD.1908.蜻蛉とんぼ】

トンボは極めて高い飛行能力を持った昆虫です。

 空を飛ぶ動物や飛行機は、風が翼に当たるときに上向きに発生する力「揚力」によって落下せず空中に浮かぶことができます。揚力を発生させるには強い風が必要で、鳥が飛び立つときは羽ばたくことで、飛行機は滑走路を走ることで加速して、翼に風を当てて揚力を得ています。

 飛行物はある程度の飛行速度を維持していなければ、翼に風を当てることができず揚力を失い墜落することになります。一度失速した後で急激に加速することは難しいので、鳥や飛行機は最高速度は速いものの飛行速度を急に変えることはできないのが一般的です。

 トンボの薄い翅(はね)には細かい凹凸があり、この凹凸が小さな空気の渦を作ることによって翅に風が流れやすくなるので、微量な風でも充分な揚力を得ることができます。
 トンボはこの4枚の翅を巧みに動かすことで、急激な加速、飛行中の急停止、急激な方向転換、宙返り飛行(とんぼ返り) 、空中で体の位置を変えずに飛び続ける(ホバリング)などの器用な動きを墜落せずに行うことができます。

とんぼ返り!
急旋回!

トンボのなかでも速度の速いギンヤンマは時速60〜70kmと自動車並の速度で飛行可能で、高速飛行と柔軟な速度調整、旋回性能を両立しています。

・トンボの生態
 トンボは幼虫(ヤゴ)の時は水中で生活し、脱皮を繰り返して成虫になります。ヤゴの時から一貫して肉食性で、成虫は1万以上の目で構成された視野角270度の複眼(人間の視野角は約120度)で獲物の位置を捉えて、獲物を空中で追いかけて捕食します。
 トンボは空気抵抗を減少させるために脚を折りたたむことが可能で、獲物を捕まえる時にトゲが無数に生えた脚を広げて獲物を引っかけて捕まえます。獲物を捕まえることに特化された脚なので歩く能力は低くなっています。

 トンボのオスは縄張り意識が強く、縄張りに侵入した他のオスを激しく攻撃します。
 このスマブラステージでは、縄張り争いをするトンボを描いたもので、羽ばたきの風圧で水面の葉っぱが揺れるギミックを持っています。


・余談 トンボと文化
 日本においてトンボは害虫を食べる益虫として親しまれていて、肉食動物としての勇壮さと、前だけに進んで後退しないと考えられていたことから武士にとって縁起のいい勝ち虫として好まれていました(実際のトンボはバックしながら飛行できる)。
(武士の成り立ちはこちらをご覧ください↓)

 産業革命以降の19世紀のヨーロッパでは、機械による大量生産で商品を安価に販売できるようになったものの粗悪な品が多く、これに反発して自然界の動植物をモチーフにして有機的な曲線を多用したアール・ヌーヴォー(新しい芸術)と呼ばれる美術運動が、19世紀末から20世紀初頭に流行しました。
(産業革命についてはこちらをご覧ください↓)

 19世紀後半のヨーロッパでは、輸入された日本の着物や美術品が流行していて、アール・ヌーヴォーは日本美術に触発された美術運動でもありました。
 先述のようにトンボは日本では縁起のいい虫だったので、トンボ柄の衣類や工芸も多く輸出されており、アール・ヌーヴォーの時期にトンボはヨーロッパでかつてないほど人気のモチーフになり、トンボを描いた絵画、陶芸品、ガラス細工、宝飾品などが多数製作されました。



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