巡り巡る時代と流行
僕のお母さんはみんなのお母さんよりも少し歳をとっている。
でも、僕のことをとても大切にしてくれたんだ。雨の日も風の日もずっと一緒だった。僕が怪我をした時、お母さんは暖炉の前で「すぐに治してあげる」と言うと、ほんの少しの時間で何事もなかったみたいに治しちゃうんだ。魔法みたいにね。
でもお母さんは死んじゃった。
僕は袋に詰められて、違うところに連れて行かれた。そこにいたのは、僕と同じくらいの歳の子だった。その子は僕を部屋の隅に追いやって全然遊んでくれないんだ。
その子は長年僕を放置した後、また僕を袋にいれてどこかへ連れ出した。
次に目を覚ました時には、たくさんの子供達がいたんだ。でも僕を暖かく迎えてくれる雰囲気なんてなかった。たくさん嫌なことをされて色々なところを怪我したんだ。痛くてたまらなかったよ。
お母さんに会いたくなったんだ。
すごくすごく、会いたくなった。
どうして僕を産んだの?
こんな思いするならお母さんと一緒に
いきたかったよ。
でも150人目に出会ったんだ。
その人はすごく美人なお姉さんで、僕のこと可愛い可愛いって、僕の不細工な傷跡も愛してくれたんだ。多分僕はお姉さんよりも年上だけどお姉さんにはたくさん甘えちゃうんだ。
何年も一緒にいてくれるんだ。
今はお姉さんの大きなお腹を一緒に温めてるんだ。
僕の名前は、
セーター。
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