Grapefruit head man

あのグレープフルーツ・ヘッドマンは
結構陽気にやっていたのに

なんでなんだろうね
ある日、満月の夜に
観覧車のてっぺんで
逆立ちして泣いた後
自分の頭を搾りきったらしい


わお、やるね。
で、それでどうなったのさ?

どうもこうもないよ、
わかるだろう?
拗くれて搾りきってお終いさ。
この話もこれでおしまい。
さあ、もう寝なさい。

そんな馬鹿な話があるかいな!!

馬鹿な話も何もよくある話さ。
グレープフルーツ・ヘッドマンの
行方は未だわからず仕舞なのさ

ねえ、あんた!
子供に変な話を吹き込まないでおくれよ!
分かるだろう?
グレープフルーツ・ヘッドマンなんて
居やしないし、観覧車のてっぺんで
逆立ちなんかも出来やしないんだから
馬鹿な子たち…!!
お願いだから、はやく宿題を済まして歯を磨いておいで!!


そうはいかない
馬鹿な子供たちは部屋を抜け出して
探しはじめた
グレープフルーツ・ヘッドマンを
どこかで泣いているに違いない
グレープフルーツ・ヘッドマンを

夜の遊園地
から
映画館
グレープフルーツ・ヘッドマンの
いそうなところを隅々と

母さんは何も分かっちゃいないから
グレープフルーツ・ヘッドマンなんかいないだって。笑っちゃうよね

僕らは知っていた
グレープフルーツ・ヘッドマンは
最高にいかしていて
最高にいい匂いがした

どこに居ても
グレープフルーツ・ヘッドマンは
グレープフルーツ・ヘッドマンで
混じりけのないイエローは
誰の目にも新鮮だった

子供たちは丘の上にのぼって
マイクをセットして叫びはじめた

ハロー!!
ハロー!!
ハロウ!!?

こちらここです!!
ハロー!!??
グレープフルーツ・ヘッドマン!!
あなたが恋しい!!
戻ってきて!!
ハロウ??

こちら、僕たちです!!
応答せよ!!!!
ハーーローウ??
グレーーーーーーエエエプフルウウウーーーーツ・ヘッッッッエエエドマアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン?!!

無事にしてますか??

聞こえたらお返事ください!!
ハロー!!こちら僕たち!!

ハロー!!
グレープフルーツ・ヘッドマン!!!!

マイクの前で絶叫していた子供たちはそれぞれの親に首根っこを掴まれて家に引き摺られて帰っていった。引き摺られながら睨み付けた夜空には星が瞬いていた

ヘイ、最悪な夜だよ
グレープフルーツ・ヘッドマンが
頭を搾りきったっていうのに
最悪だよ
それでも星は輝くなんて
最悪な夜だよ

ああ、せめて
アイラブユーまでは言わせて欲しかった…!!



それで、グレープフルーツ・ヘッドマンは本当に居たみたいだった。
翌朝、母親が、父親がガレージを開けるとそこにはグレープフルーツのイエローに輝く楽器が一揃い魔法のように置かれていて……

親たちは悪夢のはじまりを予感して身を震わせた

思った通り、子供たちは楽器を掴むと
やりまくった
親達の心臓を跳ね上げて歯を浮かせるくらいやりまくった

もちろん、その音はちいさな町を飛び出してグレープフルーツ・ヘッドマンの耳にも届いていた

何故なら、彼等の“Somewhere in the darkness, I'm sitting in front of the brightest microphone” という長たらしいバンド名の初めてのライブにグレープフルーツが千個届けられたから

そのグレープフルーツ全てにグレープフルーツ・ヘッドマンの直筆のサインがしてあって、それに、i lov u と付け加えられていた

I LOVE YOU,TOOと。

ね?
グレープフルーツ・ヘッドマンは
最高ったらない

グレープフルーツ・ヘッドマンは
メロン頭野郎じゃない
俺達は
グレープフルーツ・ヘッドマン・キッズ

正真正銘のグレープフルーツ・ヘッドマン・キッズ!!



子供たちは全開で歌って
親たちも笑っていた



グレープフルーツ・ヘッドマンも笑っていたに違いない

頭を搾ったなんて只の噂だった
全くもう。
彼は今日も内側から輝きまくっていた
それでもサンキューと思っていた
あの夜に、聞こえてきたあの声に
























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