ソープ嬢 彼の本音
「ソープ嬢 彼の本音」
いつかはこの日が来ると思っていた。
「もうお店には行きたくない」
そう彼が言った。
彼との関係がただのお客様と嬢の関係からいつかは脱することがわかっていた。
むしろ彼のほうからそう言ってくれてすごくホッとしたのも事実。
なぜなら、永遠にお客様として居続けて欲しいと私が思っていたのなら
「お客様」としての対応を、どこにいてもどこまでもしたと思うし
それを私自身も望まなくなっていることを実感していたから。
収入面、成績面でいえば毎週確実にあった本指名をひとつ、失うことになる。
意地悪い言い方だけど、そこを天秤にかけたときに私の本心はこうだった。
本指名ひとつくらい、他で挽回すれば良い。
本指名ひとつ失っても、彼を失う選択肢はない。
お店で逢う時間はどこかせわしなく、いつも誰かに見張られているようで。
彼をお客様としてお見送りした後の、絶望的な気持ちはぬぐえずにいた。
お互い、そこで逢う時間に違和感しか感じなくなっていた。
「もうお店には行きたくない」
彼のその一言の裏には、私に言わずにいてくれる言葉や思いの数々があり
大人としての配慮ある彼の言動が痛いほどわかっているからこそ
私は彼の思いを、受け入れた。
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