ライカを使って得たもの(ただし35年前の話)
なにかと話題に登ることの多いライカ。
わたしもひとつ話しをしてみようと思う。
35年くらい前の話になるが、ライカ M4-P にズミクロンの35mmを付けて使っていた時期がある。
M型ライカは今も昔もデザインがほぼ変わっていなくて、現行機種のM11とそんなに違っていなかったように記憶している。
一般的なカメラは背面が開くようになっていてフィルムはそこから入れるわけだが、M4-Pは底面を外して装填するようになっていた。
当時はコンテンポラリーフォトグラフィー(コンポラ写真)やストリートフォトが主流で、ニューカラーやニュートポグラフィックスが出始めた頃。
M4-Pはスナップ(キャンディット)を撮るには良いカメラだった。
一眼レフのような威圧感がない。すっと出してすっと撮れる。シャッター音も殆ど聞こえないくらい小さい。
スナップを撮っている時の満足感は大きかった。
ただ、それ以外で使い勝手が良かったかというと、そうでもなかった。
結構不便なカメラだった。
左目で被写体を見ながら右目でファインダーを覗く練習をした。
目が疲れて痛くなった。
ブツ撮りをすると、レンジファインダー特有の中心のズレが起こるし、そもそもきっちりとしたフレーミングができない。
こういうことにはまったく向いていなかった。
さらに不便に感じたのは、露出計がついていないことだった。
最初に買ったフルマニュアルの一眼レフ、Nikon FM でさえTTLの露出計は付いていたから、露出があってるかどうかはファインダー内で確認できた。
そういうものが、ない。
つまり、自分の眼(というか感覚)で露出を決めないといけない。
首からセコニックのスタジオデラックスを下げて、街中の露出を計って歩くことになった。
1週間位はやった記憶がある。
後で考えれば、これが財産になった。
ライカを使って不便な思いをしなければ、晴天順光なら ISO400 1/250 f16 が適正露出になるなんてのを見つけることはできなかったと思う。
35mmのレンズを使って距離を5mくらいに合わせておけばf16でパンフォーカスになる。これも今にして思えば発見だった。
人間、楽な方法があればそっちへ流れる。気を遣わなくなる。
TTL露出計の内蔵された一眼レフでは見つけられなかったものだと思う。
もちろん、完全な適正露出というわけじゃないし、確実にピントがくるというものでもない。状況次第という面はある。
でもこれが35年経った今でも、わたしが写真を撮る時の露出のベースになっている。
光というか光量を気にするクセがついた ー ライカ M4-P を使って得たもので一番大きかったのはこれだったと思う。