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ワルシャワ冬日記 エンドレス埃 2025年1月8日
給湯器問題はまだ未解決だが蛇口の修理が完了したので、満を持して風呂場の大掃除に取り掛かった。
日本の風呂場とはやはり造作が違って、右手にバスタブ、真ん中に洗面台、左手に便器、入口すぐ左手に洗濯機、というような配置である。バスタブはあるもののほとんど湯をためることはなく、真上に固定されたシャワーを浴びるスタイル(雨垂れ、という商品名の通り水圧弱弱ですすぐのには全く向かない。もう少しましな水圧のホース付きシャワーもあるが短くて使いづらい)で、洗面台の方へ水が散らないように可動のアクリル壁が備えられている。バスタブの中で全てを完結させる想定なので排水溝はもちろんバスタブの中にあるもののみだ。しかしバスタブの外側は細かなタイル張りで汚れも目立つため、丸洗いした方が手っ取り早く済むのになぁ、床にも排水溝があればなぁ、と何度も思いながら洗剤をつけたブラシでこすってはタオルで拭うという作業を強いられる。
厄介なのはアクリル壁で、こちらの水は硬水であるため放置するとミネラル分が白く固まり、なかなか取れない厄介な水垢と化す。義両親は掃除の頻度が高くないのでちょっとやそっとでは取れない水垢が、毎度来るたび生産されており、かつこれも排水溝問題で考えなしにバーっと水で流せないため大きなアクリル壁をバスタブ内に収まるようになんとか畳んで動かして両面を外に水が散らないように短いホースシャワーを使って流す。。ぐあー床にも排水溝をくれ。全部流させてくれ。
部屋全体丸洗いできたらなあと願うのにはもう一つ理由があって、ホコリが凄まじいのだ。ただでさえ乾燥する冬のポーランド、部屋の中はセントラルヒーティングでもちろん乾燥気味、風呂場は加えて床暖房つきなので、シャワー浴びた直後以外はカラッカラの部屋なのだ。風呂場内には大量のタオル、義母のバスローブ、洗濯物、猫のトイレもあるので抜け毛、そして一番の問題は経年劣化の凄まじい毛足の長いタイプの足拭きマット、細かな繊維という繊維が壁にも床にもタイルの隙間にもあらゆる場所にこびりついている。この足拭きマットがまた真っ赤なので繊維が目立つ目立つ。赤い埃の山が爆誕した。
まず全体の埃を払ってから掃除をしようと壁の上の方や照明から拭いていくのだが、乾燥しているため拭いても拭いても静電気で拭き残りが汚く残る。掃除機で壁をなぞり不織布で取り残しを拭う、を何回か繰り返してようやく見えなくなった。カビ問題はあれど全部水で流せる日本の風呂場が恋しくなる。なんて掃除しやすかったんだ我が家の風呂。ここの風呂カビはゼロだけど他が色々めんどくせえ。
大量の化粧品が入った棚も全て取り出し同じ作業をする。化粧品の容器にも立派な埃が付いているので一つずつ拭う。私は別に潔癖症ではないと思うのだが、この家の人たち毎日顔につけるものや体拭くタオルにこんなに埃ついてて気にならんのか、とはいつもふんわり思う。義実家だけでなく友達たちの家に行っても割とかなり埃だらけなので、掃除苦手な人は海外で暮らすと気負いがなくなっていいと思います。日本で求められている衛生基準が異常なのかもしれない、多少埃が溜まっていてもそれは世界スタンダード、と思ってみなさん罪悪感から解放されましょう。
(帰宅後義母に相談したところ件の足拭きマットは廃棄が決定されたので心の中でガッツポーズをとった。)
初めてこの家で大掃除をした後、それまで続いていた謎のくしゃみがぴたりと止まったので、あ、自分ハウスダストアレルギーだったんだ、と気づくきっかけになったが、本当にみんな汚れをあんまり気にしない。私がゴム手袋で絨毯の埃や猫ベットの埃を絡め取って集める様を見て、私の行動そのものと可視化された塵埃の山と両方に義母義父はドン引きしていた。感謝とドン引きと困惑(この家こんな汚れてたの?あとそんなに掃除する必要ある?)が入り混じった二人の表情は面白かったので印象に残っている。
以来、私の気管支を守る意味でも夫と二人で滞在時には大掃除をする習慣ができた。
しかしなにぶん古い布物が多い家、半年に一度の大掃除でも塵埃は取りきれない。掃除中に感じるネバーエンディング埃、エンドレス埃に、正直キェーとはなる。夫が、両親の掃除頻度は高くないので、ルンバでもプレゼントして自分たちの大掃除の負担をちょっと減らさないか、と提案してきた。日本の家にもルンバ欲しいんだけど、うん、そうだね優先順位は義実家が上だねいいと思う、と賛成中。前回の滞在時にも同じ提案が出たが義両親がいらないというので頓挫していた。が、今回こそはもう導入しちゃってもいいのではないかと思う。