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めじろ観光バスツアー #1

バスガイド「はいそろそろ出発しますよー、みなさん乗車してくださいー」

客A「ねえねえ、ガイドさん。見て!これね、ずっと行きたかったところのおみやげなの」
ガイド「うわあ、素敵ですね。よかったですね」

客B「私も見てみて!」
言いながら、スマホの画像を差し出す。
客B「撮りたかった場所で、撮りたかった人と、撮影できたの!」
ガイド「ほんとですか!よかった。いい写真ですね」

どの客も、頬を紅潮させてそれぞれに思い出を語り合うから、車内はにぎやかだ。

そんな中、バスの外でなかなか乗り込もうとしない、客Z。
ガイド「どうしたんです?早く乗ってください」
客Z「あの、あのね、ガイドさん」
少し言い淀んでから、話し出す。
客Z「ここに行きたかったの」
手に持っているパンフレットを指差す。
「そしたら、もう集合時間だって言われて‥」
「だから、少し待っていてほしいんだけど‥」
ガイド「え?ダメですよ。出発時間は決まっているんですから」
客Z「でも、ここに行くのは危険だって聞いてたし、道も険しいみたいだし」

その会話を聞いていた客Cが口を挟む。
客C「あら!その場所なら私行ったわよ。大丈夫、世間で言われているほど危険でもなかったわよ。えいやっ、て行けばなんでもなかったわ」
客Z「え!そうなんですか?じゃあ、やっぱり今から‥」
ガイド「ダメです」
きっぱりと言う。

華やぐ思い出話をするたくさんの客と、不完全燃焼で不服そうな客を乗せたまま、バスはゆっくり空へ向かって走り出す。

やりたいこと、行きたい場所は、時間のあるうちに。


#めじろ観光バスツアー
#創作小説
#眠れない夜に

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