うつ転と創作

私は気圧のせいで度々、うつ転する。今も絶賛うつ転中。流石に30年も双極症を患っていれば急なうつ転にも慣れたもので……とはいかず。

 実は、私がこのように頻繁にうつ転してしまうようになったのは近年の事なのだ。噂に聞くラピッドサイクラーにシフトしたか!? と疑ったものの、どうもそうでは無いようで。 私のうつ転は大体、1週間から10日で寛解近くに戻るのだ。

 今回の主題はそこではなく、急なうつ転に襲われると、ライフサイクルの創作活動に支障が出るので非常に難儀だという事だ。

 指一本動かせない急性期に突然落ちると、折角筆が乗ってきた作品の執筆を中断しなければならない。この歯痒さたるや筆舌し難し!!

 泣いても笑っても寛解するまで何もできない。

 

 今回はそのうつ転中の私なりの過ごし方を書きたいと思う。


 まず、『思考、選択、決断の放棄、或いは一時停止』……不安にかられて扁桃体が興奮するとそれだけで寛解が遠のく。先ずは脳みそだけでも安静に。


 次に、『寝転がる』……時間的余裕が有ろうが無かろうが、寝転がれる状況で有ろうが無かろうが、寝転がる。無駄な体力は使わないために。それに急性期に転じると殆どの場合、動く気力すら無くなる。


 そして、『ぼーっとする』……イメージ的には天井のシミを数えているような感じで。何もしないことで、デフォルトモードネットワークに切り替えて、寝ながらにして、脳みそを働かせずして、脳内の整理を計るのだ。


 で、『リラックスを意識する』……できる限り脱力で。実際に「心も体も力を抜いて」「自分は今リラックスしている」と心のなかでマントラのように唱えている。


 私の急性期の応急処置はこれだけ。

 勿論、服薬はするし、診察の機会に主治医に報告もする。

 恐らく皆様も実際に聞いて実践している事ばかりだと思う。

 双極症自体、今の医学では寛解に近づけて維持するのが限度なので、自分の心掛けで軽減できる方法はなんでも実行し、その中で実際に効果が有ったものを幾つもストックして実行する。

 

 急性期が過ぎた辺りに創作に関する事柄が観念奔逸のごとく溢れ出るが、それらは手元のメモ帳に殴り書きして、一旦、脳内から外部へと保存する。

 渡しの場合、急性期〜回復期に思いつく創作関連の諸々は、脳内に有る内は一貫性が有るように見えるが、実際にプロットやネタ帳に纏めると支離滅裂で、とてもじゃないが正視できない。


 要するに、うつ転して急性期になると潔く創作の事は忘れて、嵐のような苦しみが過ぎるのを待つ。

 その嵐の中で、少しでも被害を軽減する為にも、少し検索すれば山のようにヒットする、異口同音の『急性期の過ごし方』を愚直に実行する。

 今の医学ではこれ以上の最適解は見つかっていない。もしも有るのなら、とっくの昔に公開されているし、主治医が教えてくれる。


 焦りは禁物。焦るとコルチゾールというストレスホルモンが分泌し、扁桃体を刺激してノルアドレナリンという不安を増大させる脳内物質を分泌させてしまい、急性期が長引いてしまう。


 私のように気圧が関係するうつ転ならば、ある程度の予測は可能だが、全く法則性のない方の方が多いと思う。

 どうか焦らないでほしい。

 無理を押して執筆しても納得の行く作品は書けないと思う。それならば、と思い切って一時休養だと切り替えてほしい。……勿論、難しいと思う。概ねして、急性期の時は扁桃体が兎に角興奮しているし、自律神経を司るセロトニンという脳内物質が不足しているので、思考や気分の切り替えができずに、反芻思考に陥っていると思う。

 そして理不尽なうつ転で書けなくなった作品の事ばかりが脳内でグルグルと反芻し、辛さに拍車が掛かる……。

 その時点で既に、「今直ぐに休養を取らなければならない事態だ」と自分で自分を説得するのは辛いし難しい。

 特に筆が乗っている最中にうつ転して急に執筆できなくなると自責に喘ぐ人も多いと思う。イベント向けだと尚更……。


 どうかパニックにならないでほしい。

 悪いのは病気であって、あなたの人間性や気質ではない。

 だからこそ、上手く自分の症状や病状をコントロールするために、自分に適した『やり過ごし方』を見つけて、メモ帳に書いて、自分だけに通用する心の救急箱だと思ってほしい。

 私も手帳に、急性期の過ごし方や自分を宥める言葉を付箋に書いて貼り付けている。


 精神論や根性ではどうにもならないことなので、私は徹底した休養を選択した。

 気圧が原因のうつ転でなくとも、同じ方法で休養している。

 無理に書こうとしても、脳内には「本当に自分は創作家か?」と自分で自分を殴り飛ばしたくなるくらいに何も思い浮かばない。推しやうちの子のエッなシーンすら思い浮かばない。


 そんな状態で作品を世に送り出して酷く凹むのは自分自身だから。  

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