《連載ファンタジーノベル》ブロークン・コンソート:魂の歌声
前回
1.長く困難な旅ー(4)
コンクリート剥き出しの支柱にもたれ掛かりながら待った。
15、6分たった頃、大柄なラッパーのような黒人男性がジミーの目の前に立っていた。
「お待たせしました。本日のステージへお連れいたします」
「驚かすなよ。君、どこから来た?」
コイツもスザンナと同じで、俺の質問には答えないのかと、ジミーは忍び笑いをした。
「こちらです」
ラッパー風の大男は、ジミーを支柱の裏へ導いた。
「おいおい、エレベーターで行かないのか?」
ジミーがいた支柱の裏には、人が一人入るのがやっとという感じの隠し扉があった。
「先に、お入りください」
ラッパー風の大男が扉を開け、ジミーを奥にいくように促す。
「何、これエレベーターなのか。狭いな」
ジミーが文句を言うと、ラッパー風の大男は鋭い眼光を投げてきた。
「どうぞ、もう少し奥へお入りください」
「君も乗るんだよね、もちろん。そうだよね」
ラッパー風の大男はジミーをエレベーターの奥へ押しやると、その大きな体を縮めて入り込んだ。
「これ、安全?」
返事はない。
ジミーとラッパー風の大男が乗ったエレベーターは、深い炭鉱へ向かうかのような、無機質な岩盤の中をどんどんと降りていった。
エレベーターに乗っていたのは時間にして数分だったのだろうが、狭い箱の中を体のデカい男二人で入っているのは、実に耐え難いものだ。監房っていうところは、きっと、こんな感じなのだろうとジミーは思いながらエレベーターの鉄格子から目に入る岩盤を見ていた。
エレベーターの扉が開いてラッパー風の大男が降りると、蛍光灯のような白く明るい光が目に飛び込んできた。
狭い監房のようなエレベーターから降り立つと、目の前にはヒーローが隠れているのではないかと思わせる秘密基地のような光景が広がっていた。