映画「凶悪」
草彅剛主演の時代劇、「碁盤切り」でも監督を務めた白石和彌の監督作品。
ある死刑囚の余罪の告発から物語が始まる。
白石和彌監督作品
『彼女がその名を知らない鳥たち』、『孤狼の血』、『死刑にいたる病』などを監督されていたのを、恥ずかしながら知らず・・・。
2024年前半、個人的気になる映画ベスト1の『碁盤切り』でお名前をきちんと認識した監督さんだったので、自分が心に残っている作品を撮ってらっしゃる方だったとわかった時の勝手なこじつけの感動ったら・・・。
役者さんたちの静かな凶悪性
リリー・フランキー、ピエール瀧といった主要人物の、静かな残虐性と凶悪性。
まっっっじですごい。怖い。
日常で体に対する残虐性ってほとんどの人が目にすることがないはずなんです。それを演技でやってのけ、映像で撮る、監督と役者のセッションのすごさよ・・・。ある老人を監禁しているシーンはドキュメンタリーにも感じたほど。
多面性のある人物像
映画タイトルの通り、登場人物それぞれが凶悪性を持っていることが描かれているのだが、そこに他の人間性がきちんと描かれているから、各々の人物が立体的に浮かび上がる。
ピエール瀧演じる須藤はどうしようもない奴だけど、自分の舎弟や仲良くなった人間は大事に大切にする一面もあるし、リリー・フランキー演じる木村はもう、凶悪を体現するような奴だけども家族がいて、自分の娘から守ってもらえる存在であったりする。
山田孝之演じる須藤は、ぱっと見は普通という立ち位置から凶悪性の対比として存在しているのに、自分の親の介護問題を妻に任せっぱなしたりと、暴力ではない面でじわじわともともとある凶悪を露呈させていく。(須藤の妻役が池脇千鶴だったのも良かったなぁ)
まとめ
カラダの痛みを感じる映画は苦手なので、個人的に怖かった。笑
しかし映画というフィクションと線引きをするのではなく、私たちだっていつ、どこでこの凶悪に飲み込まれるかわからない。
そういった人間のもともともっている悪を常にそっと突きつけられているような、冷たいナイフの感触を忘れられないような、そんな感覚でいさせてくれる映画。