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その痛み、本当に敵?

第1章:痛い身体なんて嫌だ

リオは毎日、身体のどこかが痛くて辛い日々を過ごしていました。朝、目を覚ますたびに痛みを感じ、学校では友達が元気に遊ぶのを遠くから見ているだけ。自分は何もできないと感じていました。

「どうして私だけこんなに痛いの?」
リオは心の中でつぶやきました。「この身体なんて、全然役に立たない。こんな身体なら、いらないよ……。」

夜になると、リオは枕に顔を押し付けて泣きました。「私なんてダメだ。何もできないし、みんなみたいに楽しいことも感じられない……」

そのとき、部屋の中に小さな光がふわりと現れました。それは心の灯でした。

「リオ、君の身体はただの壊れた道具なんかじゃないよ。」心の灯は優しく語りかけました。「実は、とても特別なマシンなんだ。」

「マシン?」リオは涙を拭きながら聞き返しました。

「そう。身体は車のようなもの。そして君の心はそのドライバーなんだ。でもね、どんな車でも故障することがある。そのとき、警告ランプが点くよね?痛みはその警告ランプなんだよ。」

「じゃあ、痛みってただの警告なの?」リオは驚きました。

心の灯はうなずきました。「そうだよ、リオ。痛みは身体が『ここを直して』『休ませて』と君に教えてくれているサインなんだ。でもね、痛みを感じられるということは、君が生きている証なんだよ。」

その言葉にリオはハッとしました。「生きている証……?」

「そう。君の身体は毎日、君が楽しく過ごせるように頑張っているんだ。ドライバーである君が身体の声を聞いてあげれば、もっと楽しいことを感じられるようになるよ。」

第2章:感じない時間の公園

リオは心の灯の言葉を胸に刻み、少しずつ身体の声を聞くようになりました。しかし、ある日、公園で不思議な体験をします。

青い空、風に揺れる木々、友達の笑い声が響く中、リオは何も感じることができませんでした。

風の冷たさも、太陽の暖かさも、友達の声も、まるで遠い世界の出来事のように感じられました。

「どうして……?」リオは不安に襲われました。「私はここにいるのに、何も感じない……。」

その夜、心の灯が再び現れました。

「リオ、今日は『感じない時間』を経験したね。」心の灯は優しく語りかけました。

「感じない時間……?」リオは震える声で言いました。「何も感じられなくて、本当に怖かった。こんな時間なら、また痛みがあった方がマシだって思ったよ……」

心の灯はそっとリオを包みました。「感じない時間は、心と身体が少し休むための時間。そして、感じることがどれだけ大切かを教えてくれる時間なんだよ。」

「痛みも、喜びも、すべてを感じることが『生きている』ということ。その大切さに気づくために、感じない時間は訪れるんだ。」

リオは静かにうなずきました。「感じない時間も、大切な意味があるんだね……」

心の灯は少し間をおいて問いかけました。

「リオ、もし5年後、今の痛みや悩みがなくなっていたら、どんな自分になっていたいと思う?」

リオは目を見開き、考え込みました。
「5年後……痛みや悩みがなくなってたら?」

初めてそんな未来を想像しました。
「私は……友達と一緒にもっと遊びたい。学校でたくさん笑って、走り回れるようになりたい。そして、自分の身体を好きになりたいな。」

心の灯はそっと微笑みました。「その未来はきっと君の手の中にあるよ。小さな一歩を積み重ねていけば、必ずその夢に近づける。心と身体が君を支えてくれるからね。」

第3章:心が作り出す痛み

リオは心の灯の言葉を理解し始めましたが、ふと別の疑問が浮かびました。

「でもね、心の灯……私、時々思うの。痛みがもっとひどくなるときがある。それって、身体からだけじゃなくて、心が作り出していることもあるんじゃないかな?」

心の灯は優しく微笑みました。「その通りだよ、リオ。心はときどき君を守るために痛みを作り出すことがあるんだ。」

「守るために……?」リオは驚きました。

「例えば、君が大きな不安やストレスを感じたとき、心はそのまま受け止めるのが辛いと感じて、痛みに注意を向けさせることがある。そうすることで、君がもっと大きな心の傷を負わないようにしているんだよ。」

リオの目からまた涙がこぼれました。「じゃあ、心も身体も、私を守るために一生懸命頑張ってくれているんだね……」

心の灯はそっとリオの手に触れました。「そうだよ、リオ。心と身体は君の一番の仲間なんだ。君がその二人と協力すれば、どんな困難も乗り越えられるよ。」

第4章:小さな挑戦と成功体験

それからリオは少しずつ、小さな挑戦を始めました。

最初は短い距離を歩くことから。そして少しずつ、公園を一周したり、友達と一緒に遊んだり。やがてリオは、長い間避けていたジャングルジムにも挑戦するようになりました。

ある日、リオはついにジャングルジムの一番上まで登ることができました。

「やった……!」リオは両手を挙げ、笑顔で空を見上げました。その瞬間、自分が少しずつ強くなっているのを実感しました。

「私にもできるんだ……」リオは胸の中が温かくなるのを感じました。

リオは挑戦を続けるたびに、小さな成功体験を積み重ねていきました。それはまるで、心と身体が力を合わせて成長しているかのようでした。

第5章:身体への感謝

夜、リオはベッドに横たわりながら、そっと自分の身体に語りかけるのが日課になりました。

「今日も頑張ってくれたね。すごいね、ありがとう。」

痛みがあった日も、感じない時間を経験した日も、リオは必ず身体に感謝の言葉をつぶやくようになりました。

「これからも一緒に頑張ろうね。」そう呟くと、リオは安心して眠りにつくことができました。

最終章:心と身体、最高の仲間

リオは少しずつ、自分の心と身体を信じられるようになりました。痛みも、感じない時間も、すべてが自分を守るための大切なメッセージ。心と身体が協力すれば、リオはどんな困難も乗り越えられると確信しました。

「心と身体は、私の一番の仲間。これからも仲良く一緒に歩いていこう。」
リオのその言葉に、心の灯は優しく輝きました。

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