涙とともに思い出を連れてきてくれたスピッツを語りたい。
しばらく時間があるので、私が好きな「スピッツ」について書いてみたい。犬の名前ではなく、バンドの方です。
もうかれこれ20年も前から、彼らの存在自体は知っていた。私の親がドンピシャのスピッツ世代で、幼い頃に家族で遠出した時に、車の中で親がかけていたCDがスピッツだった。特に「CYCLE HIT 1991-1997」を、車で2~3時間移動する間に何周もしたので、ここに入っている曲は飽きるほど耳にしている。
中でも印象に残っているのは「青い車」で、親も一番好きな曲がこれだ。お気に入り過ぎて、私が通っていた保育園でも流してもらった。(!?)
クラスのみんなで、「君の青い車で海へ行こう~」という歌詞を聴きながら、とんだりはねたり、今考えてみたら、全く意味の分からないダンスを踊っていたのである。傍から見れば奇妙な集団に思えるかもしれないが、これが何だか、幼い頃の記憶として強烈に残っている。
あとは「君が思い出になる前に」とか、「チェリー」とか、「スカーレット」とか。歌詞の内容は全く理解出来なかったけれど、何となく不思議だなあ、でもどこかノスタルジックでいいなあという気持ちになった。
旅の帰り道。車の中で夕焼けが少しずつ暗闇に消えていく様を眺めながら、何だかよく分かんない音楽に身を委ねる私。もうすぐ非日常の時間が終わってしまう、一抹の淋しさに耽っていた。
そんな瞬間がたまらなく心地良かったなあ。
なーんて記憶を思い返すようになったのは、最近何十年かぶりに、スピッツの音楽をちゃんと聴く機会があったからだ。
私が以前に働いていたデイサービスでは、利用者さんを自宅から施設まで(あるいは施設から自宅まで)送り迎えする仕事があるのだが、その送迎に向かう途中に車の中で流れていたラジオで、何度かスピッツの曲がかかったことがある。
ある日、「シロクマ」という曲がかかっていた。まだ誰も車に乗せておらず、朝早い時間帯だった。
そう。これがとことん泣ける曲だった。本当は仕事をしている時に聴くべき曲じゃない。歌詞の内容が殺伐とした日常からあまりにもかけ離れていて、そして曲調とも相まって、不覚にも私の涙腺を刺激してしまうのだ。
その時はじっくりと「シロクマ」を聴いてしまって、やっぱりちょっと泣いたのだが、ドライバーの人や乗り合わせた利用者さんにバレないように涙を誤魔化しながら、何とか送迎の仕事を成し遂げた。
ただ、
「あわただしい毎日 ここはどこだ? すごく疲れたシロクマです」
「今すぐ抜け出して 君と笑いたい」
って、仕事中にこんな曲を聴いたら、泣かずにいられる人って一体どれくらいいるんだろう??って真面目に考えてしまう私も居ます。
大人になってから、スピッツの良さを改めて思い返している。何だろう。過去の淡い思い出に浸れるってことなのか。
不思議な曲調と歌詞によって紡ぎ出されるスピッツワールドに浸れば、現実に打ちのめされそうで余裕のない心に、少しだけ心地良い風が吹いたような感覚になる。
どこか人間らしい温かさを、優しい音楽が分け与えてくれる。
上手く表現出来ないのがもどかしいですが、彼らの魅力って、そういうところにあるのかもしれません。
実はまだ一度もライブを見に行ったことがないので、機会があったら絶対に行きたい。崎山さん、テツヤさん、田村さんの生音や、草野さんの魂の歌声に触れてみたい。
久々に訪れたスピッツブームが消えないうちに。