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終を選んだ君へ

 俺達は、そんなにも、頼りなかったか?
 
 俺達は、そんなにも、心許せる相手ではなかったか?
 
 俺達は、そんなにも、君の心の荷物を分け合うには、不足だったか?

 俺達は、そんなにも………

 一緒に酒を酌み交わしたばかりだったじゃないか。
 その日だって、いつも通りの朝を迎え、「おはよう」と、挨拶を交わしたじゃないか。
 
 俺達はいつだって、君の弱音も、ぶつけてくれる度、親身になって受け止めていたんだ。
 仲間だと思っていたから、手厳しいことを言ったこともある。
 いつだって、心配していたんだ。
 でも、君はいつからか、覚悟を決めていたんだな。
 いつからか、俺達の声は、届くことがなくなったんだ。

 君の変わり果てた姿なんて、見つけたくなかったよ。
 迷惑ばかり掛けるから、生きてて良いのわからなくなった、自分がここには向いていない、弱い人間だ、なんて、自分を責めていたんだな。
 強い、弱い、なんて、そんな言葉で、誰も君を評価なんてしないのに。
 頑張っている君を、君自身も、そんな言葉で評価なんてしないで欲しかった。
 
 終を選んだ君は。
 本当に、自由になったか?
 楽に、なったのか?
 穏やかに、なれたのか?
 本当に、これは、君が望んでいた結末だったか?

 君は優しいから。
 責任感があるから。
 辛いことから立ち去ることを選ぶのは、逃げることと思っていたのか。
 逃げることは、恥だと思い、決断できなかったのか。
 自分を守るためならば、誰も逃げだなんて思わなかったよ。
 誰もそんなこと、思う人は、いなかったよ。
 違う職業の選択肢も、君にとっては、逃げだと思って、悩んだのだろう。
 逃げたって、良かったんだ。
 どんな形であれ、逃げて逃げて、自分を守るほうを、選んで欲しかった。
 
 どんな形でも、生きていて欲しかった。
 
 そうしたらまた、いつでも会えたのに。
 他愛ない話や、いつもみたいに馬鹿な話をして、笑いあえただろう。
 
 時間が巻き戻れば、未来を少しでも変えられるだろうか。
 いま流行りの、異世界転生とかで、本当は別人になってでも、君はどこかで生きているのかもしれない。

 そんなありもしない事を考えてしまうほど、俺達もこの現実は、受け止め切れないんだ。
 
 それでも、生きていかなければいけないんだ。
 痛みに耐えながら。
 現実と、向き合いながら。
 
 君が居なくなっても、変わらずに朝が来る。
 段々と、月日を追う毎に、少しずつ、君を思い出すことが少なくなってもーー

 忘れないよ。

 俺達が、いずれそっちに逝くことになったなら。
 
 君は、待っていてくれるか?
 早かったとしても。
 遅かったとしても。
 
 また、酒を飲もう。 

 
 

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