見出し画像

3つのお題 即興小説⑤


 こんにちは。そろそろ即興小説トレーニングの分を公開しようと思います。目標は1か月ですが、まあ息切れしない程度にがんばっていきたいです。よろしくお願いします。一次短編集もAmazonさんで販売していますのでそちらもよかったらどうぞ。
『もしも僕がリンゴの木を植えなくても』


メンバーシップに加入すると、有料の小説が全部読めるのでそちらもよかったらご覧くださいませ。

内容は全部同じです。それでは、即興小説始まります。


 私はある展覧会に来ていた。そこはとある外国の、昔の遺跡から発掘されたものを展示していた。平日の昼間がたまたま空いたので、終了日間際に駆け込んだ。
 そこにはいろんなものが置いてあった。毛皮で作ったお面、何かの鉱石、祈祷に使った青銅の剣など様々なものがあった。人の少ない会場で、ゆっくり見て回った。
 私はふと足を止めた。何かの台座に細かい彫刻がされていて、目を奪われる。それは儀式の時に使う宝石を載せるもので、所々欠けてはいるが、曲線を組み合わせた美しい紋様が描かれており、作者の繊細さやセンスに思いを馳せながら観察した。

 ふと気づくと、隣に女の人がいる。さっきまで誰もいなかったような気がするけれど…少し不審に思いながらも、彼女もそれをじっと見ていたので気にかけずにいた。しばらくして何か音がするので横を向くと、彼女が泣いている。

「どうしたんですか?」と思わず聞いた。
「ええ、なんだかこみ上げてくるものがあって…」
 そう言ってぽろぽろと涙を流す。
「私の実家にこれと似たような壺があったんです」
「壺?」
「ええ。床の間に飾ってあったんですが、同じような模様が描かれていて。それを思い出したら、なんだか…」
と、ハンカチを出して顔を拭いた。
「それは今どうなったんですか?」
「多分、もう家にはありません。割れてしまったか、誰かにあげたのかも。何せ、とても小さかった頃の話ですから」

 そうなんですかとつぶやいた。泣いているという事は、昔は幸せだったけれど、今はそうではなく、その頃の事を思い出して感傷的になったのだろうか、それとも──などと心の内で考える。
 しばらく台座を見ていたら、いつの間にか彼女はいなくなっていた。誰かがいた気配もない。
 白昼夢でも見たんだろうか。もしかしたら台座が見せてくれた幻……? 狐につままれたような気分だったが、なぜだかほんのり暖かい気持ちになって家路についた。

 了

 以下の三つで即興小説を書く
「鉱石」
「台座」
「涙」
 ジャンルは不問orミステリーです。

いいなと思ったら応援しよう!

時雨
この記事が気に入ったらよかったら応援をお願いします♪ 創作を続けるモチベになります。