なんぞかへらざる  鬼りんご



なんぞかへらざる

 或ひは不用意な呟きの露頭例(抄)


ありがと
さよなら
かへります
  (どこかへ)(どこへ)

寂しさは小さくここに  (恥はどうにも剥がれなかつた)
すべすべの茹で卵はこの棚に
皺くしゃの思想は畳んでそおつと抽斗にでも
(かへりなんいざ 乾坤まさに涸れんとす)

貪つてはあとをかへりみず 追ひかけては野を踏み荒らす
せつなく援け愛ほしむ そのたふとさに耐へては来たが
(還りなんいざ 混沌まさに絶えんとす)

滴る青葉の点綴された光と影との街角 を 曲がる後ろ姿に
白い帽子を被りなさい と 陽は細かくも散り跳ねて
(帰りなんいざ 天丼まさに冷めんとす)

さよなら さやうなら 願ひの水車の廻るうちに
(かへりの道 そんなものあるものなのか 見つかるのか)
ありがと ありがたう ありがたうね


(「こどもだま詩宣言」対応  原文縦書き)



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