ナルシズム宣言  鬼りんご


ナルシズム宣言

  或ひは「悪かったな 詩ぢゃなくて」


つひに世は我が脳髄の惑ひゑがける幻像に過ぎざるか
まこと世は幻ゆゑにかくさはがしく
あをぞらを鳴り響かせて無音むいん水底みなそこへ我をいざなふか
一切価値/一切無価値 両明察の光届かぬ森の泉に
をのれを恋ふとはつゆ知らず ひたに水面みなもの相に酔ふ
そしる者いざこれを誹れ 我が名はナルシス
影とふ影を迷ひ尽くさん

たまを狂はすおもざしの数数は 竟に我が影像に過ぎざるか
げに面影全て我ゆゑにかくは涼しく
うるむ瞳に花かをらせて吐息も熱く乱れつつ我をたらしこむか
色不異空/空不異色 明知みなぎる真昼の都市に
己を恋ふとはつゆ知らず うつろふ影にただ惑ふ
こゑ高くひといざこれを嗤へ 我が名はナルシス
人とふ人を愛し尽くさん



(「こどもだま詩宣言」対応 原文縦書き)

作者付言:ルビの幾つかはつっかえずに読めるようにとの余計な配慮ですが、複数の訓みがありうる語のルビは、音韻上の要請から訓みを確定するためのものです。詩でないものでお目を汚す罪をお詫び致します。

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