オレンヂねこ 鬼りんご
(行を明示するため、空白行以外の全ての行末にスラッシュを施します)
オレンヂねこ
或ひはありふれた話者のゐる風景
すこし寒くないかな/
ひさびさに 雲でも眺めに出ようとしてゐるのか/
涼しの風に耳を吹かれてみようとするのか おれは/
いやそんなはずはないと思ひさうで思つたりはしない/
ここははじめての野ゆゑのつそりと/
おもむろに左右など見回しながら/
おれか おれは/
オレンヂ黒まだらの耳 オレンヂのひたひ/
そしてオレンヂの頭/
黒を散らしたオレンヂの首と胴体/
そんなおれの姿を自分では見たことのないおれである/
ほお 昼の細い月が霞んでゐるか/
だれもゐないか/
さうだらう さうだらうと思つてゐた/
さうか/
ゐないか さうか/
もう片足踏み出してみても/
さうか ゐないか/
何をしに おれはこの野に出て来たのだ/
何をしに おれはこの世に出て来たのだ/
さうか/
何も無いか/
無いとわかつてはゐたと思ふが/
かうしてゐてもしかたないか/
もどるとするか/
(「こどもだま詩宣言」対応 原文縦書き・行末スラッシュ無し)