我は冬  鬼りんご

(改行箇所を明示するため、全行末にスラッシュを施しています。)

我は冬

或ひは非古今和歌集の根拠


約束の群青の朝は遠のき/
無音を鎮めて降りて来る牡丹の雪の思ひ出の/
積もり重なる時の層から滴滴と汗を滴らす蟹族の五叉路/
恒に既に暮れゆく鋪道に迷彩肢体らは群がり散らひ/
ろれつちやらつくまやかしは浦々にさらには津津に谺して/
期限切れの街街は曇天に呆然と汚されてゐる/

無帰属名詞群の氾濫に風光はや傷だらけの山野を/
疼きに弾かれて駈け抜ける少年の海の滴はちぎれ飛ぶが/
その儚さ迅さを誰も知らないことを誰も知らない/
捨象される負傷語らの陸続とまろび墜ちる寂寥の峡に/
闇を咲くのは匂ひも白い君のむらさき/

微睡めるいづくの里に しんと佇つらん無想の薊/

忘れられてゐる文机よ/
訣れの情を短く遺し 支度しづかに旅立つとするか/
たとへばみづからを 柊独歩 などと名乗つて(笑)/


(「こどもだま詩宣言」対応 原文は縦書き・スラッシュ無し)
*「(笑)」を、詩と称するものの本文の一部として、とりわけ引用ではなく作品の話者自身の発語として置いた作品は稀ではないかと思ひます。この最後によつて、絶対に音読不可能な作品になつたかと思つてゐますが笑。

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