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火と華の国

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戦国風小説全八話
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2024年10月の記事一覧

五、御楽子団子

関西の忍びである中蔵は首を納めた箱を手に西国に残る最後の横八華、坂ノ家当主信康公のいる大坂の地へと向かっている。
背に受けた傷が痛み足取りは重いが首にかけた六文銭がより重い。

中蔵は初めて信康公の前に膝をついた。
信康が配下である石川が首箱を開け中身を改めた。
「間違いござりませぬ」石川が信康に耳打ちすると信康はにやりと笑った。
「中蔵、面を上げい」
そう言われ中蔵は更に深く頭を下げた。
「許す

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六、外道の剣

半蔵は茶碗を手に怒り震える様の陽下将軍を見てかけがえのないものを失ったことを知った。
「巴様・・・いや、陽下将軍」
「将軍の位衣はそないに温いものですか」
「無礼な!!」陽下将軍は茶碗を半蔵に投げつけた。
儂と団子の串を皿に並べた巴様はもうおらんのや。ここにおるんは将軍様か。

大殿、半蔵は今、四つの蔵を満たしましたわ。
四つの蔵を満たした半蔵は今ここに人に成り得た。

大殿が遂にはこの国の戦火を

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七、蜥蜴の尻尾と双頭の封魔

関を西に越えた京の都。
京を南に坂ノ国も越えたところに若山と言う国があり、そこの黒山に一匹の獣がいた。
名を中蔵と言う。
中蔵は流れの一匹獣でどこからか来たのかを知る者はいない。
そもそも流れ獣に興味を持つ者などいない。若山の黒山の頭目はもちろん中蔵などと言う獣を信頼することは無かったがそれは全ての獣同士がそうだ。
何れにせよ中蔵は若山の黒山に居つくことになった。

銭と飯以外に繋がりなどなく信頼

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終、忍の半蔵

封魔の双頭、小太郎は不敵な笑みを浮かべる蜥蜴と睨み合う。
どう逃げるつもりだ。弟の大子郎も異変を察知し構えた。
蜥蜴は不敵な笑みを浮かべたまま立っている。
蜥蜴の盗みの技がどういった物なのか小太郎はそれを見たことはない、だがそれがいかなる技であろうと封魔の双頭を前にしているのだ、逃げ果せるわけがない。
だが蜥蜴は逃げるどころか一歩踏み進めた。
小太郎は蜥蜴が立ち向かってくるとは思っていない。
蜥蜴

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