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小説を書けなくなったことはない

今まで小説が書けなくなったことはありません。いつでも書きたい小説があり、書き出せば止まることはありません。
もちろん、途中でこの後の展開をどうしようかなと迷うことはありますが、ラストが決まっているので、心を寄せていれば登場人物が勝手に動き出し、物語は滞りなく進んでいきます。
ですから、書くネタがないと悩んだことは多分一度もないはずです。Evernoteのノートブックにストックしている書きたいネタは、常時30作品以上あります。

ただ、書きたいネタがあれば問題がなく傑作がバンバン生まれる、ということではないです。大事なのは作品のクオリティです。ネタが思いつくと、冒頭からラストまでの流れも一緒に頭に浮かぶのですが、そこからより良い物語に発展させるのが難しいのです。
本来は、原石みたいなネタを丁寧に研磨してより良い物語に昇華させないといけないのですが、頭に浮かんだネタに執着してしまい、過去にないすばらす物語に飛躍させられないことがあります。
最初に思い浮かんだアイディアのとおりに書いてしまうと、凡百の物語しかなりません。
書いている途中で、新たなアイディアが浮かび、物語の質が一段階ジャンプすることはありますが、それは偶然が作用している気がします。
偶然に頼らず、論理的に物語を昇華させる方法がまだ確立できていません。

ひとつ突破口が見えてきているのは、編集者さんの存在です。原稿やプロットに編集者さんが客観的なアドバイスをくれます。以前は、自分ひとりで考えて、自分ひとりで書くことしかできませんでしたが、商業デビュー後は、プロットや初稿を編集者の方が読んで助言してくれます。
編集者の方からは、自分だけでは気づかなかった物語の欠陥やもっと良くするためのヒントがもらえます。
そのアドバイスをもとに修正することで、最初の原石から物語が大きく昇華することができます。
編集者さんから修正のヒントがいただけるのは商業デビューした大きなメリットのひとつです。

今後、さらに執筆を続けていくためには、他人に頼らず、最初のネタを磨き、物語を発展させる論理的な方法を自分の中に培う必要があると思います。プロである以上、ある程度の水準の作品を自ら創作できないといけません。
まだ、その方法論が確立できていないので、今は試行錯誤をして足掻く時期なのだと思います。

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